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第252話

養鶏場に来るのは久し振りだ。馬車組合から馬車ギルド経由で養鶏場に連絡が回っていたらしく、コカコッコに直接餌を与えられることになった。しっかり消毒してから鶏舎に入る。俺の気配を察知していたのがコカコッコ夫婦が出迎えてくれた。




コカコッコー コカコッコー




「コカコッコさん達こんにちは。ボク、今日は餌をプレゼントしにきたよ。はいどうぞ」





雄のコカコッコに【鶏餌(けいじ)草】を与えると前回同様、嘴で咥えて雌のコカコッコに与える。雌は一口食べると雄に渡す。すると雄が【鶏餌(けいじ)草】を咥えたまま俺に近付いて来た。




「これ、ボクにくれるの?」




勢いに押され【鶏餌(けいじ)草】を思わず受け取ると コカコッコー!! と雄が鳴く。これ、食べろって事か?




「ボク、これを食べていいのかな?」




コカコッコー  コカッコカッ




コカコッコ夫婦が頭を振りながら鳴いている。どう考えてもお前も食べろという事だろうな。まぁ『汎用魔法』JSS浄化清浄殺菌トリプルコンボは掛けてあるし、コカコッコが咥えてたんだから追加で解毒も殺菌もされてるんだろう。




「ありがとう。頂くね」




養鶏場の職員さんが俺の後ろで苦笑いしてるよ。





「今日は【紫萌肥しアルファー・アルファー】も有るよ」




コカッ コカッコカッ コカコッコー!! コカコッコー!! コカッコカッコカッ





二羽の会話内容が分からないけど喜んでるらしい。【鶏餌(けいじ)草】と同様に雄に渡すと一連の動作を繰り返す。そして俺にも渡しに来る。仕方ないのでこっちも食べる。そして再び職員さん達が苦笑いをするのだった。





コーッコカッ コカッコカッ コカッ コカコッコーーッッ





雄が一際大きく鳴くと俺の靴をコツコツと突く。そしてバサバサと羽ばたくとコカッコカッと鳴きながら平飼いの鶏舎の奥に歩いて行った。雌はその後を付いて行く。





「ミーシャ=ニイトラックバーグ、その餌を持ったままコカコッコについて行ってくれ」




「はっ、はいっ!!」




「今、コカコッコがミーシャ=ニイトラックバーグの靴を突いてから移動しただろう? あれは付いて来いのサインだ」





慌ててコカコッコの歩いていった方に向かうと地面の上に餌桶が置かれていた。




コカッコッコッ コカッコッコッ…  コカコッコは鳴きながら餌桶を突く。どうやらここにその草を入れろと言われている様な気がする。





「コカコッコさん、ここにこの餌の草を入れればいいの?」




コカコッコー!!




許可が出た様なので【鶏餌(けいじ)草】と【紫萌肥しアルファー・アルファー】を入れる。すると雄が鶏たちの方を向いて コカッコッコッ コカコッコー!! と鳴いた。それを合図に鶏達はコッコッコッと鳴きながら餌桶に殺到する。雌が餌桶から一掴み分の草を咥えて取り出すと鶏舎の隅に歩いていく。見たらそこにはヒヨコが何羽か居て、コカコッコの雌はヒヨコに餌を渡しに行っていた。





「あれは鶏のヒヨコなんですか?」




「はい。雌のコカコッコは鶏のヒヨコを気に掛けてくれるんです。どうしてもヒヨコは餌を食べそびれますので」




「優しいんですね」


 


「はい。コカコッコはドワーフにとっても鶏にとっても良き隣人なのです」





コカコッコー!!  その会話の意味が分かっているかの様に雄が鳴いた。





「今日の用事ははコカコッコ達の給餌だけでしたでしょうか?」




「はい。あ……生玉子が食べたかったんですが、ここでは売ってないですよね?」




「そうですね。今日の採卵分はもう出荷してしまいましたので。公認販売店に行っていただくのが一番かと」




「ありがとうございます」





コカッ コカッ




ん!? 雌のコカコッコが短く鳴きながら俺の靴を突いている。




コカーコッコッコッコッ… コココココ……




小さく小刻みに鳴き始めると雌がその場に蹲る。そして一分ほどしたら立ち上がった。そこにはホカホカと湯気の立つ産みたてコカコッコの卵が一つ。そして再び雌が俺の靴をコツコツと突いた。




「卵!?」




「まさか産卵するとは」




「それはコカコッコの有精卵ですぞ。どうやらコカコッコ達はその卵をミーシャ=ニイトラックバーグに渡したい様ですな」




「いやいやいやいやいやいや、ボク、暖められませんよ」




「普通はそうですな」




「ごめんね。コカコッコさん達の気持ちは嬉しいんだけど、ボク卵を暖められないよ。せっかく産んだ大事な卵が死んでしまったら可愛そうだから君たちが育ててあげて」




すると雌コカコッコが卵の上に乗り暖め始めた。良かった…と思ったらまた雌が立ち上がる。そしてツンツンと空中を突くと羽を軽く広げ ピコッ ピコッ と可愛らしく鳴き、再び卵を温め始めた。う〜ん、意味が分からないな。





「今の仕草は何を意味しているか分かります?」




「恐らく、暖めてやるから雛が産まれたら連れて行ってくれ…といった所でしょうか?」




「まさか…」




コカッ コカッ  コカコッコー!!  ピコッ ピコッ  コカコッコー!!




「本当に? ボクの為に卵を暖めてくれるの?」




コカコッコー!!





あーー、これ多分確定だわ。孵化するころにコカコッコ夫婦がその事を忘れてなければ…の話だけど。





「あの…ボクが雛を譲られるとして、孵化まで大体何日くらい掛かるんですか?」




「鶏の場合は二十日程ですが、コカコッコはキッチリ三十日です。来月の今頃来ていただければ」




「分かりました……」




「それまでに名前を考えていて下さい」




「分かりました。三十日後と言わず、また来ますね」




「お待ちしております」




「コカコッコさん、また来るね。今日はありがとう」





コカーーッッ コカーコッコッコ  コッコッピコッ





うん、養う家族が増えていくぞ………

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