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第240話

今回はカーン=エーツ視点の回です


「で、どないです?」



俺は今、兎の人の聖地こと『バード=テイク』領の『ホワイトラビット』海岸に来とります。ここはまだ『バード=テイク』領が『コーズフラッグ』と呼ばれていた時代(ころ)に、兎の人と鮫の人が争ったとされる海岸でな、『ハポン=ヤポン』ではここと『ワイド=アイランド』領の『ビッグエターナルフィールド』島とに兎の人が多く住んどるんですわ。そして兎の人のリーダー、メルクリウスはんが住んでいるのが『ホワイトラビット』神殿だったりしましてな。あ、神殿言うてもメルクリウスはんが神様やってるんとちゃいますで。鮫の人との戦で傷付いた兎の人達に回復魔法を掛けて助けてくれた神様をお祀りしとるんですわ。


尤もその神様は商売人やったとかで、何でも兎の人達に、ごっつぎょうさん治療費を請求したとかでしてな、兎の人達は借金で丸裸になったという話が伝わってるんですわ。ほんま怖いわー。神さん怒らせたらあきまへんな。その神さんな、今では何でか知らんけどマジックバッグの神様、ブラッキー神って呼ばれてますわ。ブラッキーの神さん、マジックバッグの神さんで回復魔法が得意なのに武器がごっついハンマーなんやて。何というか、ちょっとだけ親近感が湧きますわ。




「実に面白い。ヒト族に兎の扮装をさせるという訳ですか」


「ホーンラビットの余る部分で作りますねん。そもそもヒト族がホーンラビットで恋愛成就のゲン担ぎをしとるんですわ」


「ヒト族というのは面白い種族ですな」


「それでなんやけど、兎の耳を模したカチューシャを作ろうと思うとりまして。ホーンラビットの耳の毛皮を使うんですわ。男も女もパチモンの耳を付けて恋人探しのイベントですわ。で、わてがメルクリウスはんに許可取りに来たわけどす」


「わざわざご丁寧に」


「わてらドワーフがヒト族に売り込むのはええんですが、本家、兎の人に迷惑かけたらあきまへん。せやさかい、許可取り兼ねてアドバイスを貰いに来たってとこですわ。真似されたら何ぞ困ることって有りますん?」


「そうですな、ヒト族の付ける耳はあくまでも偽物の耳ということで、動かない様にしてもらいたいですな。我々はほら、この通り耳を動かしますから」



そう言うとメルクリウスはんが自慢の長い耳を左右別々にひょいひょいと動かしてみせてくれはります。



「パチモンとホンマモン、それは分かり易い差ですわ。せいぜい毛皮の中に針金入れて角度を付けれる程度にしときます」


「後は、耳をカチューシャに取り付けた時の角度をですね、偽耳は真正面向きにしてもらえれば。まぁ尤もヒト族は兎の耳の向きは正面向きだと思ってそうですがね」


「了解ですわ。それと内側は染めた毛皮にでもする話が出たんやけど、どないに思います?」


「それなら、あり得ない濃いピンクとかにしてもらえれば助かります」


「ほな、男兎は水色にして、女兎はピンクにしまひょか」


「実に分かりやすい。兎人の子供でも違いに気付きますな」



メルクリウスはんの耳がぴょこぴょこ動く。何ぞご機嫌って感じやね。



「そうそう、忘れたらアカンのは神殿でお祀りされてる神さんや。ウソでも兎になるなら神さんお祀りしないとあきまへんやろ?」


「そうですな」


「う〜ん、せやなぁ…、元が治療の神さんやし……恋の病を鎮めるクスリか御守りでも売って、それを賽銭として奉納するとか駄目なんやろか?」


「素晴らしい提案です。流石はドワーフの商人」


「誉めてもナンも出まへんで」


「いやいや、我々兎人ではとても思い付かない」


「後、余りがちな後ろ脚は『脱兎のお守り』ってチャームにしよかと思うてるんです。嫌なナンパ野郎からサッと逃げれる、若しくは恋のチャンスに猛ダッシュ出来るシンボル的なアイテムですわ。ほんで、獣や魔獣の兎は少しダッシュしたら立ち止まりますやろ? その習性を利用して、ガツガツしない男性、ホンマは嫌ってへん女性の心理を表現出来るんとちゃいますかー? ってね。メルクリウスはん的にはどないに思います?」


「ぷぷっ… し、失礼。確かに獣や魔獣はそうですな。兎人と違うからええじゃないですか? ……って商人言葉が伝染(うつ)ってしまいましたよ」


「コレ、伝染(うつ)るらしいですな」


「どうせなら踊り(ダンス)が上手くなるかもしれないという設定も付けてみませんか?」


「ええんですの?」


「我々兎人は踊り(ダンス)が得意ですので、そのアピールに是非」



互いに提案を出し合うて、兎耳カチューシャ『ホワイトラビット』の認定印(ライセンス)を付けることも確定ですわ。これで売り上げの一割が『ホワイトラビット』に入り、メルクリウスはん経由で兎の人の領地に分配されることになりますねん。ブラッキーの神さんのお守り関連はメルクリウスはんに作ってもらうことになったさかい、経費込みの兎の人側の取り分以外は全〜部お賽銭や。商品はバラ売り可やけどセット売りやと割引されることにしましょか。後ろ脚のチャームはドワーフ側が利益を貰う事にする代わりに、兎の人側からこの案件での荷出しに掛かる料金はドワーフ持ちで話が付きましたわ。後はサクッと試作品を確認してもろて、ダメ出し修正からの正式販売やね。



「う〜ん、兎の人側にキチンと取り分が渡るようにしたいんですわ。これ、兎耳カチューシャの売値を金貨一枚で固定にしましょ。余りモンとは言え原材料費はゼロちゃいますし、鞣しやら染めやら縫製やらで銀貨四枚はかかるやろ。で兎の人の取り分が銀貨一枚。輸送代に銀貨一枚、ドワーフ側の取り分が銀貨二枚で、ここまでで銀貨八枚や。これをヒト族の卸値にして、ヒト族には銀貨二枚の利益上乗せで金貨一枚で売ってもらいましょか」


「ヒト族が守りますかね?」


「守らん所には売らんとよろしい。神さんの息のかかった商品や、ボッタクったらバチが当るで、って脅せ……いや説明すればばええんとちゃいます?」


「ブラッキー神には申し訳ないことを」


「お守り、おクスリ、これは殆どがお賽銭になるんや。神さんも堪忍してくれますやろ」


「それでは兎人側も早々に準備せねば。神殿勤務の護符の担当係や薬師と相談しませんと」


「ほな、お守りとおクスリの値段、そちらで決めといてもらえれば」



簡易契約書を書き、お互い頑張りましょなー、と固い握手を交わした後は『スワロー』にトンボ返りや……。楽しいですけど、ミーシャはんにはようけ振り回されてますわ。

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