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第235話

今日は蒲焼きパーティーの日。刺し子の運針と野菜刻みを済ませ、職校に居るスライムの世話をしてきた。スライムはメインで処理をさせている個体と、交代要員の個体と、分割してから使えるようになるまで育てている個体と大まかに分けられている。スライムの世話はとても大事なことなのだ。特に赤スライムの管理が。個体の分割とか核の入れ替えとかには知識だけでなく技術も必要。なのでスライム管理資格を持った専属のスライム管理人が雇われている。絶対食いっぱぐれない職業・四天王の一つね。他の三つは鍛冶師と回復術師、そして水脈や鉱脈、龍脈など大地の中を走る様々な『脈』を検知する検脈師だ。


焼き鳥に使う鶏肉と【緑白(りょくはく)葱】を購入。【緑白(りょくはく)葱】というのは前世の長葱。通常の栽培種の葱は【緑葱】ね。だってネギマの焼き鳥食べたいじゃん。串焼き用の鉄串はリンド=バーグさん達に用意してもらうことにした。多分、商業ギルドにもあると思うから鉄串が足りなくなることはないと思う。


早めに行って待機していようと思っていたら、パイク=ラックさんがもう来ていた。



「パイク=ラックさん、こんにちは。ボクより早く来てる(ドワーフ)がいました」


「フォッフォッフォッ、年寄りの集合は早いんじゃよ。そうじゃ、三毛皇(みけおう)閣下から返事が来ておったのじゃ。そして献上した試作品の【魔多々媚(マタタビ)】飾りを大層気に入られたみたいでのぅ、来月末までにとりあえず百個ずつ納品することになったのじゃよ」


「そうなんですね。百個ずつって、二種類ですか?」


「普通の【魔多々媚(マタタビ)】蔓で作った三つ編み飾りはその年を締め括る【締め飾り】で、新芽も一緒に組み込んだ輪の飾りは【新芽猫輪(しめにゃわ)】と呼ぶ事にすると書かれておったのじゃよ。各百個ずつの依頼じゃな。【魔多々媚(マタタビ)】蔓の工面より【渓流(いわし)】の頭を用意する方が大変じゃ」


「両方採用なんですね」


「【締め飾り】は見習いに作らせ、【新芽猫輪(しめにゃわ)】は熟練工の仕事じゃな」



ニコニコ顔のパイク=ラックさんを横目に手渡された手紙の中身をそっと確認する。その内容は、



「 現役で活動している代官は我のみ。御用商人は越後屋のみ。 

  新作の黄金色の菓子を期待しておるぞ。      by.代官」



と日本語で書かれていた。三毛皇(みけおう)さんの言葉を信用するのなら、三毛皇(みけおう)さんの知る限りでは他に現役の転生者はいないということになる。ちょっとだけホッとした気分になった。まぁ、油断はできないけれども。そして露骨にお菓子を要求してくるんだけど……。小判とかではなくてガチで甘いものが食べたいんだろうなぁ。しかも異世界由来の甘味だな。



「何か面白いことでも書いてあったかのぅ?」


「あ、三毛皇(みけおう)様はお菓子が食べたいそうです。ボクが最初にお手紙を書いた時に【鉱夫飴】を献上したじゃないですか。なのでその流れだと思われます」


「そうかそうか。何か候補があるのかのぅ?」


「そうですね……考えてみます」



焼き鳥とか蒲焼きは日本食だけどお菓子じゃないもんなぁ。ん…焼き鳥のタレってみたらし団子のタレに似てないか? 団子はないから………あ、わらび餅だ。デンプンを使えばわらび餅が作れるハズだ。献上云々よりも、わらび餅は俺が食べたいです。今日の蒲焼き&焼き鳥パーティーのタレの流れで『みたらしわらび餅』の話を出せば説得力がありそう。


ちょっと待てよ、みたらし団子の “ みたらし ” ってドワーフ語の翻訳が存在してないんじゃ? ちょっとスキル先生に仕事してもらうか…。『異世界言語(X−リンガル)』の自動翻訳機能だと………



みたらし団子 → 御手洗団子 → 聖水盤(エヴィールポタリー) 団子(ダンプリング)



はぁぁっっ!? なんじゃこりゃ!? 


う〜ん、やはり直訳は無理なのか。そして聖水盤って何??? こうなったら()惑の甘いタレを()()()た、もしくは()()()()たで『みたらし』と呼ぶことにするしかないのか……? それと無理矢理みたらし団子を作るなら米が見つかるまでは小麦粉を練った団子になっちゃうな。麦粉団子だな。あ、オロール先生から蕎麦を分けてもらえたら蕎麦粉に挽いて蕎麦がきが作れるぞ。みたらし表記は多分タワシとかコンロと同じノリってことで誤魔化せるとは思う。三毛皇(みけおう)さんが元日本人転生者なら説明は不要だろうし。



「ようやくあそこから連れてきた【蛇魚】も胃袋に収まるのじゃな」


「そうですね。やっと美味しく頂けます」


「まさか、【蛇魚】供養だけではないのじゃろう?」


「パイク=ラックさんにはすっかりお見通しされてます。ちゃんと鶏肉の串焼きもしますよ。お肉買ってきました。ボクの見立てだと【蛇魚】を焼いた時に塗るタレが鶏肉の串焼きにも合うハズなんです」


「それは楽しみじゃ。冷やしエールも捗りそうじゃ」


「はい」


「今日も孫のアッシュが付いてきたさそうにしておってたのじゃよ。今度儂の家に遊びに来てくれんかの?」


「はい。ボク、喜んでお邪魔しに行きます」


「まぁ儂は【魔多々媚(マタタビ)】細工に埋もれてそうじゃが……」


「婆さんも息子一家も孫も皆がミーシャに会ってみたいそうなのじゃ」




パイク=ラックさんとおしゃべりしてたら焼き鳥の鶏皮串が食べたくなった。パリパリに焼けた鶏皮の塩串だよ。そこに焼き銀杏とキンキンに冷えたドライのビール。そうだ、異世界で銀杏を探そう。

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