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第228話

皆が魚卵と蒸留酒を楽しんでいる間に【サモントーヴァ】を取り出す。蒸留酒に炙った皮はよく合う。浸しても噛じってもいい。


(共)「おっ、【サモントーヴァ】か」


(共)「それでは私も【酒盗練(シュトウレン)】を出そうかね」


(共)「よいですな」


(共)「では、あれこれ取り分けお酒の神様チャン=ポーン様にお供えしましょう」


(共)「竈の神様キャシー様と地母神レミ様へのお供えは調理が進んでからじゃな」



もりあがっている隙にちゃんちゃん焼きモドキをセッティングしてあるフライパンを保冷庫から取り出し火に掛ける。



(共)「それは何かね?」


(共)「【生サモン】の切り身と玉葱、【玉菜(キャベツ)】をフライパンに乗せ、バターを置いて蒸し焼きにしています。食べる時に好みで塩と【長胡椒(ヒハー)】を振ったり【粗相豆/つゆ豆】汁を掛けて下さい」

 


皆がちゃんちゃん焼きモドキを食べ始めるのを見て下茹でしておいた【茄子花芋】と【穂先()(キビ)】を焼き始める。焼きトウモロコシには何度か醤油タレを塗り、芋は切れ目を入れてバターを乗せてじゃがバターにし、そこに醤油を数滴垂らす。そして生パスタを茹でる為のお湯を沸かす。



(共)「この【生サモン】と野菜のバター蒸し焼きは単純な組み合わせ、単純な調理方法なのに美味いのだな」


(共)「サッパリとした中にもバターのコクが。エールが進む」


(共)「しかも冷やしエールがよく合う」



そう、パイク=ラックさんがいるからエールは冷やし放題です。しかも商業ギルド内なので隠匿する必要も無し。



(共)「エールは冷やした方が美味いんだね。職校の食堂でも出してくれればいいのに」



冷やしエール初体験のオロール先生がエールのジョッキを一気に煽る。そして即座におかわり。



(共)「昨日、一昨日に認可されたばかりなので。ドワーフ界隈にも直ぐに広まるでしょう。職校や学園の食堂には優先的に出しますよ。これを潤沢に飲みたかったら早々に提供システムを構築しろという意味でですが」


(共)「それはそうじゃ」


(共)「むしろ古代エルフ界隈に冷やした酒を嗜む文化がなかったことの方が驚きですが」


(共)「そりゃあ、ね、寒い場所で冷たい酒を飲んで更に身体を冷やす趣味はないからね」


(共)「確かにそうですな」


(共)「そして、更に食欲をそそる香ばしい匂いが」


(共)「【穂先()(キビ)】は予め茹でてあるので焦げ目が着いたら齧りついてください。熱いので気を付けて。【茄子花芋】の方も頃合いを見てどうぞ。追いバターもよし、【粗相豆/つゆ豆】汁を垂らしてよし、挽いた【長胡椒(ヒハー)】を振ってよし、ドライハーブミックスを振ってよしです。」


(共)「美味い…熱っっ!!」


(共)「焼き【穂先()(キビ)】の甘さと【粗相豆】の塩気が絶妙じゃ」


(共)「口の中が…」


(共)「ムグッ…い  芋が喉 熱……ムッ」


(共)「エール、冷えたエールを流し込め!!」


(共)「俺はこれと同じような光景をあの関所代わりのの集落で見た記憶があるんだがな」


(共)「【鉱滓(スラグ)包み】の時じゃな」


(共)「芋に【酒盗練(シュトウレン)】もあうね」



それ、前世で見たTV番組で、北海道でジャガイモにイカの塩辛を乗せるとか言ってたのと同じ感じ? で、そこに更に醤油掛けるのか……恐るべし塩分大好き民族。



(共)「これは【穂先()(キビ)】の生産量も増やさせねば。【運魔(ウマ)】と【穂先()(キビ)】を奪い合ってしまうぞ」


(共)「アリサ、口の中の火傷を治した方がいいと思う。ほら回復ポーションだ」


(共)「ありがとう。オロールさんも飲みます?」


(共)「気持ちだけ頂いておくよ」


(共)「オロール女史、気を使わなくても俺もガルフ=トングも火傷に効く回復ポーションは常に一定量持ち歩いているんだ」


(共)「いや、そういう事ではなくて…、今下手に回復ポーションを飲んでしまって折角の酔いが抜けてしまうと残念じゃないか」



そっちかよ!! 間違ってもホーク=エーツさんの口からは飛び出さないセリフだ。



(共)「支部長はん、これは火傷だけ治すポーションの開発が必要ですわ」


(共)「それだけの価値はある…か。【巾着包み/鉱滓(スラグ)包み】等も広まれば需要は高まる訳だしな」


(共)「 “ 風船(パフ)(うお)を食べて毒消しを飲む” じゃな」


(共)「懐かしい!! 過去にあった寸劇芝居の演目ですな」



それはフグを食べて毒消しを飲むって事かな?



(共)「しかし、【穂先()(キビ)】が凄いのか【粗相豆】か凄いのか…」


(共)「いや、【粗相豆/つゆ豆】とバターの相性が凄いのだと…」


(共)「農業ギルド支部長を呼ばなかったのが痛いな」



屋台じゃなくても焼きトウモロコシとじゃがバターは正義なのですよ。俺も久々に食べた焼きトウモロコシに満足です。



(共)「そろそろ【(あか)茄子】ジュースをお願いします」


(共)「来たな」


(共)「血塗れの時間じゃな」


(共)「身体に良いからな」



そこから先はオロール先生が大はしゃぎ。「これはエルフの奴らに “ 野菜をふんだんに使った()()()()()()()()を飲んでいる ” と自慢できるよ」と大層ご満悦だ。その間に塩引き鮭を焼いておく。後は皆のタイミングを見計らって生パスタを茹でるだけだ。



(共)「古代エルフが酒に強いのは知っていたが、皆酒豪なのか?」


(共)「たまに弱いのもいるよ。まぁ、『サーティーンレイク』や『リトルリバーベッド』の湖で採れる二枚貝の煮汁を飲めば復活するけどね。あれは下手な状態異常回復ポーションより効く」



ガタッ… 「それ、詳しく聞きたい」



オロール先生の言葉にホーク=エーツさんが反応し立ち上がった。やっぱり体質を気にしてたんだな。



(共)「古代エルフが【虫見貝(カンス)】と呼んでいる二枚貝だよ。肝の病にも効く」


(共)「という事は【縮み貝】ですか」


(共)「それ【不眩剤(くらむちゃうでー)】の原料だ。原液を飲むのが古代エルフ流なのか…」



流石、ホーク=エーツさん、二日酔いに効くポーションの原料を覚えてるんだな。そして本気で取り寄せそうな勢いなんだけど。

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