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第226話

さて、手に入れた『仕立て用チョーク』を使って【魔海鞘(まボヤ)】にガイドラインを引いてしまおう。もしかしたら普通のチョークの方が消えなくていいかもしれないけど。研磨度合い見本は未研磨から透明までで八分割かな。そして【魔海鞘(まボヤ)】のランプは通常だと吊り下げ式で使うらしい。ランタンや提灯やシャンデリア形式だな。理由は簡単で、小さい魔石を直接放り込んで使うから。一般的なランプの様に使うと内側に魔石が接触しない事があるから、確実に光らせるために吊り下げ式が採用されているって事だ。


魔海鞘(まボヤ)】から中身を抜く時は、大胆に根元、つまり岩に着床している側をスパッと切り落とす。そこから中身を抜き取り、軽く水洗いをして乾燥させる。この時、切り口が縮まない様にコルクと特殊な処理をした海綿や水苔とで作られた栓をしておく。この時の栓の形で火屋(ほや)の形状をある程度なら左右できるのだとか。実はこの栓が大事で、輸送中や保管時に内側を保護する役目があるので外殻が乾いたからって捨てちゃダメなのだとオロール先生が言っていた。つまり、捨てる輩がいるって事だな。切り口から一センチくらいの箇所は魔石干渉を生じないらしく、そこに留め具加工を施す事が可能。その特性のお陰でランプとして使える訳か。


そんな面白素材なのにドワーフの間で加工が流行っていないのは、単に【魔海鞘(まボヤ)】に魅力が乏しいからなのか、食べる文化が無いからなのか? 古代エルフは中身を食べた後で便利に使っているみたいだけど、内陸住みのエルフには流通していない。やはり、スライムの死核と組み合わせて売り込むか。


昨日の【魔海鞘(まボヤ)】は仕上げ完了には程遠いので実験用に使おうと思う。この、ほんのり赤味がかった藤紫の外殻、アメジストっぽいよな。まぁ形状的なこともあるけど。限りなく透明になるまで研磨した外殻に小さい魔石を入れたら備え付けの魔導ランプより明るくなるかな? 明るくなればいいなぁ…。



午後から一時間だけ植物学というか樹木学の講義を聞いてきた。実技もいいけど座学も楽しい。図鑑は職校内の図書室にあるので時間を見つけて閲覧に行く事にした。実は、商業ギルド、農業ギルド、学園の図書館にも同じ図鑑が置いてあるので閲覧申請一つで読むことが可能。科目にもよるけど筆記試験前には勉強に使う資料不足に陥ることがあるから、どこに何の資料があるのかを知っておくのは大事なんだ。パート君とジョーブ君も座学を聞きに来ていたよ。



商業ギルドでエーツ兄弟と合流。その足で市場に買い出しに行く。特に変わった食材を仕入れる訳でもないので気楽かな。ただ、欲しい食材を売ってるお店がどこにあるかピンポイントで分かっているわけではないので、そこはカーン=エーツさんに案内してもらうけれど。取り敢えずお供えのブロッコリーは確保。玉葱、キャベツ、【茄子花芋】、バター、塩、大麦パンに黒パン。パンは白くて柔らかい物よりも固めで風味と噛みごたえがある方をチョイス。個人的な意見だけど、鮭は白ご飯には合うけど白パンには合わないと思う。あと、【長胡椒(ヒハー)】、ドライハーブミックスを購入。


「あっ、【穂先()(キビ)】だ。おじさん、五本下さい。【(あか)茄子】は二十個ほど下さい」



醤油があってトウモロコシがあるのなら、そこはやっぱり塗って焼かなきゃな。憧れの祭りの出店飯だ!! そうだ水飴もあるからフルーツ飴もいいかな…。時期的に柑橘類や梨類が売られている。後は葡萄。うん、葡萄と梨にしよう。



「フルーツと言えば、【四神獣果(ミスティ・フルーツ)】が有名やけど、ドワーフ領内やと【白虎果(タイガーマウス)】くらいしか出回らへんねん」



四神獣果(ミスティ・フルーツ)】はその名を四種の神獣になぞらえた果物で、それぞれ【青龍果(ドラゴンエッグ)】、【白虎果(タイガーマウス)】、【朱雀果(フェニックスアイ)】、【玄武果(バサルトヘッド)】と呼ばれている。


それぞれを前世の果物で例えると、【青龍果(ドラゴンエッグ)】はドラゴンフルーツ、【白虎果(タイガーマウス)】はスイカ、【朱雀果(フェニックスアイ)】はパイナップル、【玄武果(バサルトヘッド)】はライチって感じらしい。らしい…というのは俺も書物でしか見たことがないので現物を知らないからだ。もう少し南の暖かい地域、それこそリザードマンことトカゲの人や竜人族の住む『サイレント=ヒル領』内では採れるので出回る時期になったら是非とも食べてみないと。【朱雀果(フェニックスアイ)】のジュースを【魔海鞘(まボヤ)】水筒に入れる野望の為にも!!



買い出し終了。足りないものがあったらカーン=エーツさんにお使いを頼もう。商業ギルドに戻って調理開始だ。まぁ、俺一人で何とかなりそうかな。ちなみに脇にいるホーク=エーツさんは記録係なので気にしてはいけない。


イクラの醤油漬けの味見から。少し甘いかんじもするけどいい感じに浸かってる。白米が欲しい。神様、炊きたてご飯が欲しいです!! イクラをお供えするから白米を下さい!!

塩引き鮭は後から焼くとして、生鮭を使ったちゃんちゃん焼きモドキの準備だ。フライパンに刻んだ玉葱とキャベツを敷き、生鮭を乗せバターを置き刻みキャベツを被せておく。そのまま保冷庫に仕舞っておけばよし。ついでに洗ってヘタを取った【(あか)茄子】も冷蔵だ。


【茄子花芋】と【樹樹(じゅじゅ)菜】、【穂先()(キビ)】を茹でておく。じゃがバターに醤油を少々と、焼きトウモロコシの醤油味は正義!! 


ハーッハッハッハッ、ドワーフ共よ、バター醤油の沼に沈むがいい!! と、俺の脳内は中二病全開なのです。


そうだ、生パスタの『紐屋』さんから生麺を買ってきてもらおう。勿論、作るのはバター醤油パスタだ。シンプル・イズ・ベスト。そこに玉子の黄身を加えてもいい。追加のバターと生玉子も買ってきてもらおうかな。



そして、パンを薄くスライスしたものを軽く湿らせ、ココット型的な容器に詰めて竈で焼いておく。焼けたら軽くバターを塗り冷やしておく。そこにパンを擦り下ろしてパン粉にしたものと水飴を混ぜたものを流し込み竈で焼く。そう、前世で読んだファンタジー小説に出てきた糖蜜パイもどきだ。駅のホームから魔法学校に行くアレね。そう書いたら通学列車で定期券っぽいな。


取り敢えず下拵えは終わったので、ホーク=エーツさんにその旨を伝えて俺はお風呂にいってきます。その前に髭エクステを外してもらいに行くぞ。

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