表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

218/465

第213話

鑑定結果は、


【一号】

『簡易』: 研磨済み()入り琥珀。封印獣 = 飛行系。

『鑑定』: 研磨済み()入り琥珀。状態(E) 封印獣 = 猛禽、通常種。


【二号】

『簡易』: 研磨済み琥珀。

『鑑定』: 研磨済み琥珀。状態(D)


【三号】

『簡易』: 研磨済み琥珀。蛍光反応有り。

『鑑定』: 研磨済み青琥珀。状態(C) 蛍光反応有り(弱)



あ、ちゃんと出てる。研磨前の鑑定結果が分からないのが悔やまれる。



「ラルフロ=レーンさん、結果が出ました。ノートに書き写します」


「ショップ購入品でよくやるミスだな。次からは忘れなきゃいい」



やっぱりやらかす人って多いんだな。そりゃー、信頼できる場所で買ったら鑑定スルーしちゃうよね。いや、ちょっとまて。俺、前に簡易鑑定した物って今なら見える情報が増えてるんじゃないか?



「で、追加情報を見せてみな……。あ、ミーシャは鑑定系がダブル持ちか…。もしかして記入法で困ってないか?」


「はい、悩みます」


「下手に詳細に書くと鑑定能力のグレードがバレるからな。普通に売るなら今の簡易鑑定〜鑑定程度の内容記入で十分だ。それ以上の鑑定が生えたら気を付ければいい。鑑定の振れ幅は慣れたら調整出来る」


「鑑定調整に何か意味が有るんですか?」


「ある」 「あるぞ」 「あるのぅ」



ジャンル違いの三人の職人に揃って「ある」と言われてしまった。



「まだ職校で習ってないんだろうから先に教えておくけどな、仕事のグレードってのがあるだろ? そうだな、鏡を作るとして、何となく己の姿が見える仕上がりの鏡と十メートル後方までハッキリ写る仕上がりの鏡の二種類があるとする。顧客が何となく見える鏡を欲しているのにハッキリ写る鏡を作って渡す必要は無い。それは分かるな?」


「はい」


「で、手持ちの素材がめちゃくちゃ研磨したらハッキリ写る素材だとする。でも顧客の依頼が何となく見える鏡ならめちゃくちゃ研磨する必要は無い。力半分で研磨して何となく見える鏡を作って渡せばいい。これも分かるな?」


「はい」


「その鏡の鑑定書に、 “ これはめちゃくちゃ研磨したらハッキリ見える素材を使っています。今回は何となく見える仕様にしてあります ” とは書かないよな。せいぜい “ 素材は鏡用です。何となく見える鏡です。 ” としか書かないだろ?」


「そうですね」


「で、顧客が「この素材、めっちゃ磨いたらよく見える鏡にならんの?」と発注前に聞いてきたとする。で、出来ると答えた後にどうするかは顧客次第だよな。それでも依頼以上の仕事はしなくていい」


「はい」


「俺の説明と、この例えだと分かり辛いかもしれんが、必要以上の情報開示も必要以上の仕事も不要なんだよ。あくまでも “ 仕事 ” としてだがな。自己研鑽なら青天井で作業しても構わないが、手を抜くやり方も覚えておかないと職人としては失格なんだよ」


「確かにそうです」



うん、仕事として考えたらそうだ。そうなんだよなぁ…。 “ 至りませんでした ” は依頼主を怒らせるだけだけど、 “ 色を付けておきました ” が依頼主に喜ばれるとは限らないもんなぁ。過ぎたるは猶及ばざるが如し、って事だよ。



「で、話は戻るが、鑑定が二重に掛かる時の対処法な。基本は別々の紙に鑑定結果を一つずつ書く。そして詳細な方を魔法で見えない様に隠す」


「隠すんですか?」


「魔法で隠蔽してるだけだから、看破できる奴は隠蔽を突破して内容を確認出来るし、依頼主やお役人が上位結果を聞いてきたら開示すればいいだけだ。鑑定結果に嘘を書いていたら罰せられるが、鑑定結果を見せない分には罰せられない」


「その辺りの法律関係の話は、職校名物・寸劇芝居で習うやつだからな。前にミーシャに関所の集落で詐欺の劇を見せただろ?」


()()ってまだやってるのか?」


「やってるぞ。入校してから五年目辺りの生徒が寸劇担当だな」



それ、何ていう罰ゲームなの!? って、どう考えても罰ゲームなんでしょ???



「話が脱線したな。雇われ職人なら上からの指示通りに作業すればいいから然程困らないんだけどな、ソロで食ってくんならキッチリ収めないとダメなんだ。そういやリンド=バーグもやり過ぎの気があるよな」


「そうだな」


「儂もじゃな。ついつい興が乗って悪乗りしてしまうんじゃ」


「そこの二人、ダメじゃねぇか!!」


「そうじゃな。儂とリンド=バーグとミーシャ、悪乗り義親子(おやこ)じゃ」


「おや………こ!?」


「ほれ、ニイトラックバーグのラックとバーグじゃよ。儂ら二人は庇護養親。ミーシャは庇護養子じゃ」


「あ?……、あ〜ぁ〜、おじいちゃんって…そういう事か。じゃあ()()か? リンド=バーグがパイク=ラックをパパ呼ばわりするのか」


「いや、許しとらんぞ。ミーシャは可愛いから許すんじゃが、リンド=バーグは可愛いくないからダメじゃ」


「意外と厳しいんだな」


「厳しいついでじゃがな、ミーシャに()()()が着いたら困るんじゃよ」


()()()ねぇ…。いるのか?」


「いるだろ」


「いるのか…」


「そこにいるだろ」


「俺は悪い虫じゃねぇぞ。大体、専属契約を仄めかしただけだろ…」



まさか、パイク=ラックさんが付いてきた理由って忠告(それ)だったの!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ