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第211話

パイク=ラックさんと合流。特に【魔多々媚(マタタビ)】の新品種や細工に関する新技法は報告されていなかったけれど、新商品の開発に繋がるヒントは見つかった模様。新年を祝うドア飾りらしい。前世的に表現したら、クリスマスリースとか注連縄(しめなわ)って感じなのかな? 三つ編みした【魔多々媚(マタタビ)】に、干した【渓流(いわし)】の頭に胸鰭に見立てた柊の葉を付けたものが合わさった飾りだとか。絶対、それ、三毛皇(みけおう)さんの発案だと思う。それを玄関に飾ったり魔松(マツ)の木に飾るんだとか。


「頭を飾りに使って尾はヒレ酒に。身の部分を魚醤に回せばよいわけじゃな」


新年飾りに使う【魔多々媚(マタタビ)】は中〜低品質でも問題ないみたいで、特殊な蔓の組み方の練習をした後の物を流用してもいいから、見習い〜中級の職人の技術習得にも役立ちそうなんだって。俺も練習組に混ぜてもらおうかな。



場所は変わってラルフロ=レーンさんの工房。俺が変わった素材を質問の為に持ち込むと伝えて貰ってあったせいか、ドアを開けるなり捕食者の目付きで見つめられた。


「いいモン見つかったか?」


「あ、今日は質問なので…」


「そういうのはいいから見せてみな」


「急かす男はモテんのじゃ」


「いやいや、爺さんには負けねぇから」


「こう見えても儂はモテモテなのじゃよ。特にそこのミーシャには「おじいちゃん」などと呼ばれて懐かれておるくらいじゃしのぅ」


ホッホッホッと笑うパイク=ラックさん。そして突如始まる謎のマウント合戦よ…。



「ラルフロ=レーンさん、色々と素材を入手したので主な使い道を教えて下さい」


そう言いながら【ホヤッキー】三枚とコカコッコの蹴爪、そして琥珀を三個取り出す。【魔海鞘(まボヤ)】はまだ出さない。


「おっ、形の良い【ホヤッキー】じゃねぇか。しかもちゃんとワンセット分だ。何処から手に入れた?」


「職校の非常勤講師に来ている古代エルフさんから譲ってもらいました」


「古代エルフが直に持ち込んだ品か!! で、まだ手付かず…と」



何回見ても、ホタテビキニに食い付くドワーフ達にはドン引きしちゃうよ。それだけ人気素材なんだろうけど。


「防具に使う他に、何か使い道はありますか?」


「まぁ、普通は防具のパーツに使うな。それとは別に粉末にして、魔膠、魔導糊、魔漆みたいな接着剤と練り合わせた特殊顔料的なものを作り、それを魔絹なんかの魔導繊維に固着させて魔力と防御力を高めた繊維を作り、それを織ったり編んだりして鎧下用の生地を作るとか、その特殊顔料を魔導繊維の布に染み込ませてテントの布や帆布にするとか、そういった使い方もある」


あ、防刃ベストのケブラー繊維みたいな感じなのか。魔法耐性もあるなら防弾チョッキも兼用してるとか?


「後はあれだろ、コカコッコの餌とか畑の肥料だ。魔法薬の素材になる草を栽培する時に畑に少し混ぜてやるといいとか聞くぜ。陶器の釉薬に混ぜるって話も聞いた事がある。それと、怒りっぽいカミさんに食わせりゃいい…だとかな」


うん、カルシウムとか石灰って事ね。そりゃー【ホヤッキー】って単純な話、ホタテの貝殻だもんな。


「防具用に研磨整形する時に出る細かい欠片や研磨滓も集めておいた方が良いってことです?」


「肥料用に流用する程度だな。顔料用にするなら表面のガサガサした部分を綺麗に削り落とした状態、ぶっちゃけ防具用にする時と同じ程度に研磨したやつでないと効果が薄い」


まぁ、何でもかんでも削りカスが使える訳ないよなぁ。最悪、白スライムにあげよう。


「あ…、【ホヤッキー】の外縁、エッジ部分を鋭利に研いでやったら非鉄の暗器にならなかったか?」


「なるぞ。その状態の物に鍍金をすることも可能だ」




ーーー (ミーシャ妄想中) ーーー


今日未明、下級貴族街で殺人事件がありました。被害者はトキーン男爵で、死因は首を鋭利な刃物で切られたことによる失血死。使用された凶器はホヤッキー・ナイフとみられており、警備騎士団は犯人の特定を急ぐと共に凶器の発見に全力を尽くしています。


「クソッ、今回も切り裂きマックの仕業か!!」


ここ、『ブリテリーシティー』では数年前から通称=切り裂きマック、と呼ばれる正体不明の殺人鬼による猟奇殺人事件が発生する。街の平和を守るため犯人を捕らえんと警備騎士団や自警団が躍起になるも、その努力を嘲笑うかの如く事件は起こり続ける。



ーーー (ミーシャ妄想終了) ーーー



うん。こういう感じで使われたら、ちょっとどころでなく嫌だよなぁ……。




「次はコカコッコの蹴爪です。これはコカコッコの雄から直接貰いました」


「そうかそうか……っていうか、直接貰うってどういうシチュエーションなんだ!?」



ざっくりと鶏舎での出来事を説明する。


「何だか俄には信じがたいが、ミーシャ=ニイトラックバーグがそう言うんならそうなんだろうよ」


「信じてくれるんですか?」


「その蹴爪の状態から判断すると信じるしかないだろう? で、売ってくれんの?」


「いや、それは…」


「どうせなら、五ミリくらいの厚みに切り分けた物をボタン加工してから卸してくれたら嬉しいね」


「ボタンにですか?」


「ヒト族のお貴族様のスーツに合わせるシャツの喉元を留めるボタンに使うんだ。ビーズだとアクセサリーで使う時に複数個使わないとデザイン的にバランスが悪くなったりするが、ボタンなら一つあれば済むだろ?」


「そうですね。飾りボタンで使っても良さそうですし」


「コカコッコの蹴爪だとバレない様に使えるのが良いってことだ」


「加工のヒント、ありがとうございます。何個くらい作ればいいですか?」


「マジか? 言ってみるもんだな。二つ穴のボタンと四つ穴のボタン、最低一つずつ欲しい」


「分かりました。作ってみます」


「完成状態にもよるけど、代金はボタン一つにつき金貨二枚だ」


「えっ、そんなにするんですか?」


「俺がミーシャ=ニイトラックバーグからボタン一つに金貨二枚支払う。それを胡散臭い商人(カーン=エーツ)に金貨四枚で売る。胡散臭い商人(カーン=エーツ)はヒト族に金貨五枚で売り付け、それを貴族は金貨十枚以上で購入するんじゃないのか?」



どうやら俺には適正価格の勉強が必要らしいです。

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