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第208話

午後の部は皆さんお待ちかねの大試食会。商業ギルドの厨房が俄に賑やかになる。冒険者ギルドの飲食コーナーや学園や職校の食堂を使いたいところだが、情報漏洩防止の関係上仕方なく商業ギルドの厨房で調理してもらい大会議室に運ぶことになった。尤も、実演もあるので小さな竃を持ち込み大会議室内に設置されてたが。こんな時、卓上コンロが有ると便利だよなぁ…って迂闊な事を口走ったらまた登録案件が増えるだけだよ。


「それでは、大試食会を始めます。本日の試食にはエールも登場します。では『ネオ=ラグーン領』内・『ネオラグーン』学園・名誉学長ガルシア=ウィンカー氏、乾杯の音頭をお願い致します」


「ドワーフと全ての神々に乾杯!!」


「乾杯!!」



とりあえず(温い)エールで乾杯なのね。挨拶が短いとは、流石は名誉学長、わかっていらっしゃる。



最初に出されるのは芋から派生シリーズ。芋麺、水飴、【鉱夫飴】、唐揚げ、すりおろし芋パンケーキが順番に並べられる。後、見本のデンプンも置かれた。そして冷やしエールも添えられたぞ。竃の上に油の入った鍋が見えます。つまり……あれはガルシア麺の準備ってこと?


「今回、料理の申請案件はほぼ一人のドワーフが関わっておりまして、当人は秘密にしておきたいと言っておりましたが、説明が欲しいという意見が多数ありましたので已む無く解説をお願いした次第です。匿名性という観点から当人は姿を隠しておりますのでその点はご了承下さい」


そう、俺の居る場所は大会議室の隅のVIP席。つまりはボックスシート。小窓のガラスには特殊な魔導加工が施されていて、会議室側からVIP席の中は見えないとのこと。…って、マジックミラー号かよ。音声も変声の魔道具を使って声質を変える事が出来るので、極力身バレは防げるとか何とか。でも、今までの経緯からすると個人情報ダダ漏れなので今更感は否めないんですけど……。まぁ、無いよりはマシだな。後は口調を気を付けなきゃダメだな。一人称を “ 私 ” にでもしておくか。


「えー、特別室の……、そうですね便宜上ナナシーさんとお呼びしましょう。ナナシーさん、準備はよろしいでしょうか?」


「はい、私、ナナシーの準備は整っております」


うわっ、前世のTVの警察二十四時間番組の職質された民間人の加工音声みたいなドスの聞いた低いオッサン声になってる!! どう聞いてもナナシーって声じゃないだろ。


「ではナナシーさん、芋料理の解説をお願いします」


「まず最初に芋麺なのですが、そもそも私が最初に作ろうと思い至ったのは水飴でして………」



水飴を作るためのデンプンから派生する諸々を解説する。絞り粕をパンケーキにする事も出来るとか、今出ている料理には使っていないがトロミを付ける事が出来るとか、そんな話をしていく。


そして冷やしエールだ。試食なので一人に一つしか渡っていない唐揚げに冷やしエールはよく合う。そして騒然となる会場。午前中は口頭説明だけだったから今一つアピール力が弱かったんじゃないのか? そして「なるほど、冷やしの魔道具…」「確かに魔石問題が起きる」「暴力的な革命だ」等々の意見があちらこちらから聞こえてくる。


「では、このシリーズ最後の料理はパフォーマンスで締めたいと思います」


司会者の指示と共に調理スタッフが熱せられた油に芋麺を投入。バチバチという音と共に膨らんでいく芋麺。みるみるうちに揚げ芋麺の完成だ。


「この芋麺を油で揚げた料理なのですが…」



「ガルシア翁か?」「ガルシア麺?」「名誉学長の髭そっくりだぞ」 ヒソヒソ… ザワザワ……



ヤバい、予想以上に皆にウケまくってるし。爆発白髭=ガルシア=ウィンカー名誉学長ってのはドワーフ界隈では鉄板ネタかよ。



「【茄子花芋】の臨機応変さがガルシア=ウィンカー名誉学長の叡智の深さに通じるのではないかということで、ガルシア麺と献名をしたいと思いますが…」



「異議無し!!」「どう見てもガルシア麺だろ」


「新規登録される料理に私の名前を付けて貰えるとは感動的ですな」



まさかの満場一致なのか……。ガルシア=ウィンカーさんって懐が深いや。()()ってどう考えてもネタ枠料理なのに。



冷やしエール繋がりで【血祭りブラッディー・フェスタ】【血の海ブラッディー・オーシャン】【血の雨(ブラッディー・レイン)】が供される。結局、エール+『生命之水(蒸留酒)』+【(あか)茄子】ジュースは【血の雨(ブラッディー・レイン)】って名前になったんだな。


「これは、【(あか)茄子】ジュースにエール、または『生命之水(蒸留酒)』を使ったカクテル類でして………」



「確かに追熟は必要だな」「作付け面積は明らかに足りないぞ」「【茄子花芋】の増産もあるから開墾が必要不可欠か」等々、先程の芋麺以上に会場はざわつく。



その後、【渓流(いわし)】のヒレ酒、複数の【鉱滓(スラグ)包み】が登場し、【細辛〜油(ほそから〜ゆ)】、【粗相豆】の使い道、酢豚じゃなくて【猪肉と揚げ野菜の甘酢餡掛け】が出てくる。登録とは関係ないけど【(から)茄子】の肉詰めや猪まんも出るし、この辺りの料理はもはや複合技なので “ 考えるな、感じろ ” してもらうしかないんだけど……。


何度も会場がざわつく。 


トドメとばかりに出されたのは餌シリーズこと【紫萌肥しアルファー・アルファー】、髭無し【穂先()(きび)】、【鶏餌草】。【目出度(メンデルス)(・ビーンズ)】、拭き草の茎料理、拭き草の茎の水煮瓶詰めも並べられた。少しだけどメイプルシロップも出来たんだ。ドワーフ、仕事早すぎ!!

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