表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

212/482

第207話

「結局ミーシャも呼ばれてしまったか」


「久し振りだな。元気にしてたか?」


「ガッ、ガルフ=トングさん。お久し振りです。『スワロー』にはお仕事でですか?」



ハハハ…… リンド=バーグさんが俺を見て笑う。


「確かに仕事で来たな。午前中は開発品の説明をしていた」


「開発品の?」


「酷い話だ。人に【ピーラー】やら【バーサーカッター】やら【トング】やら【タワシ】やら散々作らせておいて、もう忘れたのか?」


それかーーー!!!!


「あ!! ごめんなさい!!」


「【タワシ】は実演してきたぞ。後、T字剃刀はまだ替刃システムが構築されていないのだが、登録だけはしておいた」


「T字剃刀も作りあげてたんですね」


「お偉方は、「剃髭刑(ていしけい)で試すか」 と言ってたな」


剃髭刑(ていしけい)?」


「投獄されて、髭を全剃りされる恐ろしい刑罰だ」



剃髭刑(ていしけい)は、成人したドワーフの髭は全部ツルツルに剃り上げた状態から元の長さまで伸びるのに一年ほどかかるのを利用した刑罰だ。脱走しても不自然に短い髭だとすぐバレるし。

剃髭刑(ていしけい)を宣告されたドワーフは、投獄されると最初に髭の長さを測定される。その上で髭を全剃り。ツルツルにされる。一年くらいかけて測定値にまで髭が伸びたら釈放される。……んだけど、刑期によって剃髭(ていし)◯回といった感じで初期値の長さまで復活した髭を剃る回数が増える。(ドワーフ)によって髭の伸びる速度は違うので、投獄された日は同じでも釈放される日は違うっていうのが何ともドワーフ流だ。

問題は、冤罪だったとしても一年間は棒に振るって事か? 尤も、獄中でも刑務作業は楽しいらしいけど。ただ、獄中で出てくるエールは度数が薄〜いそうで。


ちなみに、幼ドワーフは何年もかけて髭が伸びていくので剃髭刑(ていしけい)は適用されない。



「俺もパイク=ラックと一緒に【鉱夫飴】プロジェクトの説明をしてきた。拭き草の茎プロジェクトもお偉方、特に商業ギルドは食い付いてきた。【(あか)茄子】の追熟の説明は午前中は反応がイマイチだったが、午後の試飲でどう騒ぎ出すか楽しみだ。後、魔石滓の魔力再充填問題だがな、錬金術ギルドに丸投げになった。ある程度謎が解明するまで学園側もノータッチだ。俺とミーシャは錬金術ギルドに時々呼び出されるのを覚悟だな」


はは…、やっぱ魔石滓に再充填問題は最大マル秘案件だった。



「そういえば『関所の集落(仮)』の皆さんはエールを冷却出来るようになったんですか?」


「それなんだが……」



ガルフ=トングさんがマリイン=リッジさんの話を教えてくれた。何その “ 冷やして出して飲む ” ループ!! マリイン=リッジさん最高。確かに使いづらいけど、冷却の可能性というか多様性が確認された事は大きいな。それより、発動する魔法が『熱波(ロウリュ)』って、名前がサウナの関係の魔法みたいなんだけど…。冷やしエール屋の隣がサウナ屋さんって事になりそうな予感だ。


熱波(ロウリュ)』はカテゴリー的には攻撃魔法だったって言うことだけど、戦場でエール片手に『熱波(ロウリュ)』を撃ちまくってくるドワーフ部隊を想像してしまった……。無いとは言い切れないところが何とも。




〜〜 もわもわ (ミーシャ、妄想中) もわもわ 〜〜



「部隊長に報告!! 前方に敵影有り」

「どこの部隊だ?」

「北方ドワーフ部隊と推測」

「エルフや獣人の姿は?」

「エルフ、獣人無し。ドワーフ単独歩兵部隊と思われます」

「ならば先鋒隊であろう」

「はっ」

「うむ、ドワーフ歩兵部隊ならば恐るに足りん。正面から騎馬隊で蹴散らしてくれよう」


パーン!! パパパーン!! ブォッ…ドーン!!!!


「第一小隊、壊滅!!」

「なぜ!! あぁーーっ!!」

「歩兵が大砲……など!?」

「隊長殿、奴らは砲などは」

「何ィ!? 奴ら(ドワーフ)は魔法は得意ではないハズだ」


ドッカーーーン!!!!


「何がっ、やっ…奴ら、何かを手に」

「前方ドワーフ、何かを手に……ジョッキ、ジョッキ片手に進軍中!!」

「斥候、何を寝ぼけた事を」

「ジョッキ、ジョッキです。奴ら、ジョッキで何かを飲みながら」


「くそっ、ドワーフの奴らめ。歩兵のくせに生意気な…」

「第二部隊から狼煙……、解読します。エ…ール?」

「エール? エス・オー・エスではなくてか?」

「エールで間違いありません!!」



「部隊長に報告!! 第二部隊、自分以外は全滅。敵の装備が判明いたしましたので報告いたします!!」

「報告せよ」

「ドワーフ歩兵部隊の装備はエール樽とジョッキでありまふ!! (かっ、噛んだ…)」

「正気か?」

「ドワーフの奴ら、ジョッキ片手に謎の爆熱魔法を……」

「爆熱魔法だと!?」

「奴ら、奴ら…魔法を発動させたあとにエールを飲みやがって……、戦場でエール、第二部隊はエールに……エールに 」

「落ち着きたまえ!!」


「衛生兵ーー!! 衛生兵ーー!!」



〜〜 もわもわ (妄想終了) もわもわ 〜〜




「ん? ミーシャ、ニヤニヤして気持ち悪いな」


「あ、ちょっと考え事を…」


ドワーフ歩兵エール部隊の妄想してたとか言えんわ。



「あれ? パイク=ラックさんも来ているんですよね?」


「来ているが、パイク=ラックはエールの絶賛冷却中だぞ」


「【鉱夫飴】プロジェクトの後に独りで残って冷却係だ」



パイク=ラックさん、休憩時間を奪ってしまってごめんなさい!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ