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第200話

「ミーシャ、さっきのパラパラポンチ絵だけどさっ、マジで描いたら仕事にならないか?」


「なるかもしれないけど…うーん、どうだろうね?」



いや、それがアニメに繋がることはよ〜くしってるけど。でもそれをパート君の前で言うわけにはいかんのですよ。



「さっきのエールのやつだって、もう少しちゃんと描いて動かしたら酒場の看板に出来るだろ? それに、作物の栽培とか、魔物の解体の仕方とか、それこそ戦闘訓練の指南とか、そんな内容を描いて動かしたら凄いと思わないか?」


パート君、それがアニメと言うものです。アニメーションです。


「それ、いいかもしれない!!」


あくまでもパート君の指摘で気付きました…の体を取る。



「ただ、俺って絵を動かす魔道具をどうするかとか全然分かんないからさぁ、この後スライム学の講義が終わったら教員室に行かないか?」


「えっ!?」


「確か、思い付いた事や作業ミスやトラブルを申請報告する報告担当員が常駐してるから、その(ドワーフ)にネタ提供すりゃーいいんじゃね?」



あ〜〜〜、また申請報告………。俺、嫌な予感しかしないんだけど。



「そっ、そうなんだ。パートさんって詳しいんだね」


「まぁ…な」


「パート君はね、野菜刻みの初日にやらかしてるから…」



目を覚ましたジョーブ君が会話に混ざってくる。



「あっ、こらジョーブ、余計な事を言うんじゃねえって!!」


「パートさん、一体何をしたの?」


「うえ〜、言わなきゃダメかよ。言えばいいんだろ? 俺さぁ、野菜刻みの初日に包丁落とし………たら刃が欠けた」


「怪我はしなかったんだよね?」


「それはな」


「それでパート君は始末書を書いて、二日間野菜刻み禁止だったよね」


「うるせぇ、ジョーブ黙ってろ」


あ〜〜、それはアカンやつだよ。でも怪我をしなくて良かったよね。



「仕事道具は大切にしなきゃ。それ以上に怪我をしたら駄目だから。やりたいことが見つかる前に怪我をしたら何も作れなくなっちゃうよ…」


「ああ…。それは講師にも言われた」



「それはそうとミーシャ君って今年の下半期の専攻は決めたの?」


「うん、取り敢えずはね」


「俺は取れそうな講義は顔出ししまくりだぜ」


「僕はそこまでは…基本は農業と土木かな。勿論、炭焼き講義は絶対に参加するよ」


「ボクは刺し子と鉱石学を中心にして、研磨に関する講義を取る予定です。研磨繋がりで小鍛冶師の一部の講義も聞きます。調理も全部ではないけど取る予定だし…」


「ミーシャって刺し子の講義を取ったんだ。なぁ、エルフってやっぱミステリアス美人なのか?」



オロール先生……は、ミステリアスではなくてミスの多い古代エルフです。美形ではあるけど。残念な美形…(苦笑)



「ミステリアスかどうかは分かりませんが、()()()方ですよ。仲良くなりたかったら食堂で夕飯時にエールを二杯おごってあげれば直に “ けやぐ ” いや、お友達になれますよ。ただ、共通語が出来ないとお話し出来ませんが…」


「共通語? エルフ語でなくて?」


「オロール先生はエルフじゃなくて古代エルフなので……」


「良かったー!! エルフ語しか通じませんだったらどうしようかと思ったぜ。って、古代エルフってマジ!? マジでミステリアス美人じゃ……」



あまりパート君の夢を壊さないでおいてあげよう……って、直に真実に気付きそうだけどさっ。




「おーい、十分はとっくに過ぎたぞ!! 授業の続きだ、続き!!」


(「また後でな」)


(「了解」)



―――― (教科書再開) ――――


親株スライムから子株を採る方法が見つかったのはある意味偶然だったという。その日もハイミン=キングー=ボラクスはいつもの様に分割実験をしていた。分割には再生魔導ガラス (※8) にミスリル鍍金(めっき)を掛けたナイフで裁断すれば良い事を突き止めたものの、子株の生存率は相変わらずゼロであった。そしてハイミン=キングー=ボラクスが分割した子株が初めて生存したのである。だが、子株の生存成功に反して親株が死滅してしまったのだ。


それにより、スライムの生存に関係しているのは個体の大きさではなく、スライムが内包する何かしらの生命維持物質が関わっているのではないかという仮説が立てられ、ハイミン=キングー=ボラクスにより『スライム核 (仮称)』(※9) と名付けられた。


ただ、スライム核(仮称)は目に見えなかった為、数年間、分割研究は模索の時期が続いたのである。



(※8) 魔導ガラスを二回再生したものが適している。

(※9) 後にスライムに核は無く、スライム核だとされたものはスライム遺核であることが判明する。




☆☆☆ 読み物(コラム) ☆☆☆ 〜スライムを食す男〜


ハイミン=キングー=ボラクスは世界で初めてスライムを食べた人間である。


通常であればスライムを食べようなどとは考えないが、この男は違った。本人曰く「口に小さな子株が飛び込んだだけ」と言うことだが、実際その瞬間を目にした研究員によると()()()()()()()()()()()()()()()()との事である。


勿論、排泄物を与えて育てていたスライムより分割した子株を食べた訳ではなく、蜂蜜、食用花、食用昆虫など普段からハイミン=キングー=ボラクスも口にしていた物を与えていた個体より分割した子株だというが、それでもスライムを食べるのは相当の勇気が必要であったことは想像に難くない。


肝心の味の方であるが、 “ ほんのり甘く、口溶け良く、喉越しは爽やかであった ” とされている。これは飼育下の餌に左右されると思われるが、特殊な餌を与えた個体を分割した子株を食べて確認した者がいないので立証はされていない。(※10)



(※10) ハイミン=キングー=ボラクスでさえ廃棄植物や残飯を餌として育てたスライムから分割した子株を食べなかったという。

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