表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

201/460

第196話

刺し子の基礎縫いの他は、調理の実技で包丁使いの練習が続く。【茄子花芋】や【食用マンドラゴラ】【玉菜(キャベツ)】【長細瓜】玉葱などを切りまくるだけの簡単なお仕事です。特に野菜を刻みたくもないんだけど、これを突破しないと次の講義に進ませてもらえないので仕方なく実習に参加。最低でも累計=十時間刻んだら許してもらえる。本気で調理人の道に進む生徒は毎日一時間野菜を刻むことになってるけど。ちなみにパート君も野菜を刻みに来ていた。


包丁は調理人自ら研がなくてよかった。そりゃ鍛冶師が其処此処に普通にいるもんなぁ…。切れ味の落ちた包丁は(しょう)鍛冶師の元に持ち込めばOK。ついでに言えば、鋏、(かんな)(のこぎり)、ノミなんかの刃物も鍛冶師や研ぎ師に持ち込めば研ぎ直してもらえる。



と言うわけで俺は刃物とは別な物を研磨しますよ。学園の購買の特売コーナーでゲットした未研磨の琥珀です。琥珀は水に濡らして構わないので俺としては比較的気楽に研磨できる。サイズは唐揚げ一つ分くらい。ノートにザッと初期状態をスケッチし、彩色したところで、どの順番で研磨するか考えよう。暫定的に一・二・三とナンバリングしておいた。


それと木賊(とくさ)の鉢植えを窓辺に寄せておく。暫くの間、肥料としてはスライムの死核を水で濡らしながら乾燥木賊(とくさ)で研磨した時に出る排水を与えればいいのか。根が落ち着いたら本格的に砥石でスライムの死核を研磨した時に出る排水を与えていく…と。木賊(とくさ)とは言え鉢植えの植物が部屋にあるだけで空気が綺麗になる気がするよね。出来ることなら醤油もとい【粗相豆】を植えたい。



琥珀を濡らして土汚れを取る。そこで光に翳して色味と透明度の確認をする。琥珀だと紫外線で青味に蛍光する種類があったハズ。まぁ太陽光で変化して見えるか分からないけど。



琥珀一号:ゴツゴツした卵型。色味は薄い琥珀色というか麦茶的な色味。罅割れ(クラック)多め。グレードはB級下?


琥珀二号:細長い。かりん糖的な形状。色味は濃い茶色、麺つゆ以上・醤油以下。一応光は透過する。グレードはB級中くらい?


琥珀三号:厚みが一センチ程の板状。切り餅風? 色味は黄色系。菜種油色? グレードはB級上かな?



琥珀は脱水するとひび割れするから直射日光の当たる場所や高温での使用及び保管はNGだったよな。高温も何も、そもそもが樹脂だから火を近付けたら燃えるし。どうせ全部研磨しちゃう予定だから軽く表面を木賊(とくさ)で整えちゃおう。それから磨きたいと思った順番で仕上げていこうと思う。今の段階だと、三号 → 一号 → 二号の順かなぁ…。一号のクラック次第では最後に回すかもしれないけど。


琥珀を濡らしながら荒砥扱いの木賊(とくさ)で表面を整える。うーん、拡大鏡(ルーペ)が欲しい。眼鏡があるんだから虫眼鏡というか拡大鏡だって有るはず。


流石に粗めの木賊(とくさ)でガシガシ削ってるから表面はザラザラで乾くと白っぽくなる。濡らしながら確認し、その都度メモる。一号は表面にクラックが多くて残念な感じ。濡らすと目立たなくなるから中心部分はまだマシかな? でもゴミというか内包物(インクルージョン)が見えるからグレードは低いな。二号は色が濃すぎて透明感を感じにくい。厚みを調整してキッチリ研磨して表面を整えたらいいのかな? 三号は素直な感じだけど面白みに欠けるんだよなぁ…。陰刻(インタリオ)風に模様を彫り込んだらいいのかもしれないけど俺にその技術は無いし。後で何かの素材になるかもしれないから、素直に綺麗に磨かれた切り餅状態にしとくか。ちなみに餅は認知されていないのでノートには “ 切り芋(カットいも) ” と表現しておくことにした。あ、麦茶、麺つゆ、かりん糖も表現は変えて書かなきゃ駄目じゃないか。



絵の具、顔料絵の具だから不透明彩色なんだよね。いわゆる岩絵の具。扱いが面倒です。魔法でどうにかして色素だけを抽出して透明水彩を開発してくれないかなぁ…。染色にも使えそうだから是非とも開発してもらいたい。……ん!? 髭エクステってカラフルだったよね。もしかして俺が知らないだけで染料があるのかもしれないぞ。



琥珀一号は下手に底面を出したりしない方がいいのかなぁ…全体的に満遍なく研磨していって、そのままの形状で小さくした方がカラット的に歩留まりが良い気がする。もしアクセサリーにするなら方穴を明けて金具を取り付けたら良いんじゃない? 琥珀二号はマーキース形、 () というか イラストで目を描いたときみたいな先の尖った楕円形ね、そんな形にしてもいいな。輪切りにして穴を開けてビーズ加工してもいいし。琥珀三号は綺麗に整えるだけだな。



取り敢えず、お風呂に入ってきて晩御飯を食べてこよう。『キーボックス』を覚えてからは貴重品管理がマジで楽だよ。俺の場合、小さいものなら『次元収納(インベントリ)』に仕舞っておいて『キーボックス』から取り出す振りが出来るのが有り難い。そして共同浴場に行ったら高確率でオロール先生に捕まる。そしてエールを集られるの巻。パイク=ラックさんから頼まれていた【ホヤッキー】と【大厄杉(おおやくすぎ)】の交換を伝えたら即答で快諾された。オロール先生、【ホヤッキー】をどれだけ持ち込んでるんだ?


(共)「【ホヤッキー】なんかで【大厄杉(おおやくすぎ)】を提供してもらえるなんて、なんて良いドワーフなんだい? 嬉しいからオマケで【魔海鞘(まボヤ)】の火屋(ほや)も付けようかねぇ…」



魔海鞘(まボヤ)】は海鞘(ホヤ)の魔物種で、外被を乾かして作った火屋(ほや)部分に魔石を入れるだけで魔導ランプになる優れものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ