第191話
卵料理のお店に行くのは二日後になった。久し振りにパイク=ラックさんに会えるよ。パイク=ラックさんに会ったらトマホークの柄に使う銘木の処理の仕方を質問しないと。あと、大豆の原種の豆の情報を何か知らないか…とかとか。
寮の部屋に戻ったらコカコッコの蹴爪をノートに写しておこう。結構ゴツいんだよなぁ。直径一センチ✕長さが十センチって感じ。短いアスパラガスみたいだ。使い方を確認してからアクセサリー化かな。ざっとスケッチしたら簡単に彩色もしてみないと。絵の具や色鉛筆の使い勝手の確認、確認。
そして、リンド=バーグさんから『エアポケット』は止めておけと忠告が入ったので取得するのは一旦保留した。下手に収納関係と繋がると入れた物が回収不能になるだけでなく、その気になれば犯罪の証拠隠滅にも使えたりするので下手に持たない方が良いスキルだった。意図せず取得してしまった場合は封印もしくはスキル改造をして対処出来るので、そこまで悲観しなくてもよいけれど、まぁ…面倒ではあるな。
スキル改造は別のスキルと合体とか上書きとかを駆使して別スキルにしてしまう…のだとのこと。『エアポケット』のケースだと空いた穴の先に回収エリアを足すとかで対処出来るので、それこそ『エアポケット』の先に『コインポケット』を合体させて穴の先を封印するとか、『エアポケット』の先に『リントキャッチャー』というゴミ取りネットみたいなスキルを展開させて入れたものを回収するとか、そんな魔改造をして事なきを得る…と。
ちなみに『リントキャッチャー』はカバンの中がゴチャゴチャになって大事なものが行方不明にならない様にキープしておく為のスキルでした。もしかしたらシンクのゴミ受けにも使えるかもしれない。
という訳で、『キーボックス』、『エアポケット』、『コインポケット』はある意味三兄弟的なスキルである事が判明した。それはそうとジョーブ君は『エアポケット』をどう始末するんだろう?
翌日、朝イチでオロール先生の刺し子の授業に受講希望を提出しておいた。受講希望の生徒が来ないからって講師が授業をサボ…いや休講されても困るし。初回の講義が始まるまではあちこち見学かな。鍛冶師の作業場は月ごとに大鍛冶師と小鍛冶師との間で炉の使用権利がチェンジするそうで、偶数月は小鍛冶師が炉の使用権利のある月だ。挨拶がてら作業風景を見学してたら、「おーい新入生、刺し子をやるなら自前の刺し子針を打てる様になれよ」と声を掛けられた。そうか、機械で縫い針を量産してる訳じゃないから縫い針も手打ちしなきゃいけないのか!!
「情報提供ありがとうございます。今度、針の打ち方を教えて下さい」
「刺し子の針と、裁縫…つまり服を縫う用の針とは違うからな。ついでに言ったら革を縫う針も違うし、ノートを縫う針も違う。後で針の講義日程をボードに貼り出しておくからチェックしといてくれ」
「ありがとうございます」
そう言えば、前世でも畳縁を縫う針とかぬいぐるみを縫う針とか特殊な針があったよ。
季節限定の講義と言えば、炭焼きの授業の実地が十一の月〜三の月にあって、十の月後半に炭焼きに利用する木に関する授業があり、そのまま伐採〜乾燥〜使いやすいサイズに整形にして炭焼き窯に入れる…と作業に時間を取られ続けるので受講選択の際には気を付ける様に、とカリキュラム表に書いてあったな。時間がなければ窯入れ前までの授業を聞くだけでも良いとのことなので、聞きに行こうと思っている。研磨道具として炭も使ったりするしね。
ちなみに鍛冶師を目指す場合は炭焼き講座は卒業までに必修科目なので、最初の数年間は強制参加させられる模様。その間、作業場に籠もる学生が減るから鍛冶師を目指さないけど鍛冶を学びに来る生徒に作業場を貸しやすくなるという訳だ。
そして炭焼き講義の窯開けの時期にはスライム研究講座、通称『スラ研』の必修授業が入ってくる。炭粉を食べさせて育てるスライムが居るので、窯の掃除=餌を与える …と。炭粉を食べさせて育てた黒スライムは、炭の成分食べたさで鉛筆の線を消してくれる前世の消しゴム的な仕事をしてくれる。鍋底に付着した焦げや煤も食べてくれる便利屋な反面、管理が悪いとノートの文字を全部食べられてしまう欠点が何とも…。
俺は木賊栽培の関係上スライムの死核が関わってくるからこの『スラ研』の講義も必修かな…。出来るものなら赤スライムを甕で飼いたい。
俺の職校最初の半年は、刺し子を習いながら炭焼きの知識を学び、針の打ち方を習い、スライムの飼育法を学ぶ…事は確定だな。そこに関わりそうな項目を学園に行って学んで来るべきか…。
それよりも、最優先で学ばなければいけない事が分かっているのは、オロール先生とパイク=ラックさんから学べる事は二人が元気なうちに学び切るって事だよね。




