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第185話

入校式が始まった。後期の入校生は全部で三人。『ロングヒル』から来たパート=ラッシュと『ウェルス=マウンテン領』の『ブラックパート』から来たジョーブ=ヤーク。


名前を呼ばれて作業服と年間カリキュラムと学生証を渡されて終了。在校生は入校式に参加するより作業を選ぶので大講堂に生徒は新入生三人しか居なかった。生徒ばかりか講師も作業や指導があるので片手で数えるくらいしか出席していないし。


その後は校長先生に校内を案内してもらった。校内に作業場も有るけど大手の工房に実地作業をさせてもらったりもする。土木とか採掘とか建築とか林業とか農業とかがそう。冒険者ギルドの依頼じゃないけど、職校にも作業手伝いの依頼が来るので自身のスキルがマッチしたら作業に行って構わない。勿論、作業報酬も出るので広く浅くスキルを取って稼ぐ生徒も居るのだとか。一点特化になるか器用貧乏でいくか、ゲームではないけどキャラの育成を間違ってもリセット出来ないから気を付けないと…まぁ、十年単位にはなるけど修正できなくはないだろうから始めのうちは色々と手を出してみようか……いや堅実が一番なのか?


俺の場合、学園にも手を出しちゃってるから収拾がつかなくなりそう……。



「基本はどの訓練をしても構わないのだが、カリキュラム表をよく見て重要な実習や試験が重ならない様に気を付ける様に。よくあるミスが鍛冶や陶芸で炉に付きっきりになる間に必修講義がかち合うとか、遠征や遠くの現場に出向中に検定試験が行われるとかだな。最初のうちの一回二回は笑って済まされるが、頻繁になると納期や作業日程を組めない奴だというレッテルを貼られるので注意する様に」


「校長先生、あと気を付ける事はありますか?」


質問したのはパート=ラッシュさんか。


「それはだ…、飲み過ぎて仕事にならないという様なことにならない、だ」


「他には?」


「納期遵守!! もし間に合わなさそうなら早めに依頼主に報告することだ。上司や師匠がいるのなら恥を忍んで頼る事だ。後は資金が嵩んで始めに提示した仕事料を超えそうな時は分かった時点で依頼主に確認する様に。最高の仕上がりにならなくていいから資金内で済ませたい依頼主も居れば、追加料を支払ってでも最高の仕上がりを求める依頼主も居る。職人の勝手な自己満足で素材や作業に金を使えばいいってモンじゃない。素材を破損した時も独りでどうこうしようとするな。あと、仕事でチャレンジし過ぎないとかだな」



あ、当たり前だけどミスった時に誤魔化したくなる件あるあるだよ。


「はい、分かりました」×三


校内を巡る俺達四人の脇を円筒型の掃除ゴーレムがすり抜けてゆく。



「校長先生…あれは一体?」


「あれは自動掃除ゴーレムの『走婆(ランバ)』と言う。工房内は何かと埃っぽくなりがちだ。本来ならば職人自ら作業場を綺麗にするのが筋だが、何かと作業に明け暮れがちになるので時短と称して掃除ゴーレムを利用している訳だよ。入り口の案内ゴーレムもそうだが、この『走婆(ランバ)』も生徒が製作している。尤も、稼働に関わる魔法陣や魔導回路の作製や改良は学園の生徒が手掛けているがね。君たち職校生が学園の指定通りに魔法陣や魔導回路を書いても構わないから、好きな様に魔改造したまえ」



それから小会議室でカリキュラム確認と諸注意を受けた。最初の半年はやりたい職業を探しながら雑多な作業をとにかく熟す模様。それこそ鉱石運び、油の瓶詰め、拭き紙作り、芋掘り、エール醸造、解体に種子選別、ガラス作りに御者ゴーレムのメンテ等々、ドワーフが手掛けている殆どの作業を最低一回は体験する。体験とはいえ実際の作業はさせられるので、体験しただけ小銭が稼げる。どれくらい稼げるかというと、職校の食堂で夕飯時にエールを二杯飲んでも問題ない程度なのだが、それでも毎晩タダ酒が飲めると言うことで職校一年生は真面目に体験に出掛けて行くのだという。


俺はオロール先生の刺し子の授業をメインに取って、後は、研磨関係と調理関係を重点的に学ぼうかな…。



「何か質問は?」


「先生、出席確認はどうしてるんですか?」


「ん?伝えてなかったか。君達の学生証を使う。その学生証を出欠箱に差し込めば自動的に登校した事が箱の中の記憶媒体に記録される。帰りも同様に学生証を出欠箱に差し込めば下校が記録される。作業によっては入退室毎に記録を求められるから学生証は無くさないようにする事」


へー、前世で言うタイムカード機能が付いてるんだ。まぁ預金機能も付いてるし、異世界の魔道具は謎だらけだ。


「そして学生証等の貴重品を仕舞っておくためのスキルが『キーボックス』だ。この中で『キーボックス』を取得している者は?」


「持っていません」 ×三


良かった、俺だけ持ってなかったらどうしよう……だったからな。隣を見れば二人もホッとした表情を浮かべていた。みんな同じでみんな良い。



そして自己紹介の後『キーボックス』を覚える為に職校最初の授業が始まることとなった。

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