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第184話

今回もギルド支部長達の回です


【番コカトリス】というのは弱体化されたコカトリスだ。羊の群れを管理する牧羊犬がいるように飼育されている鶏、厳密には鶏卵を管理する為に品種改良されたのが【番コカトリス】。魔獣品種名ではコカコッコと呼ばれている。


コカトリスは雌雄問わず鶏の卵を見かけると嘴でチョンと啄き、その啄いた卵を孵化不能にする習性がある。コカトリスにとって下位種族である鶏を排除する為の習性だ。そして有名な能力が石化能力。嘴で触れた鶏卵以外の生命体を石化する厄介な能力である。その習性と能力とを最大限に生かす為に品種改良されたのがコカコッコ。啄いた卵の孵化を不能にする能力はそのままに、石化能力を極限まで弱めた品種だ。その石化対象は菌やカビ等の微生物や寄生虫。『汎用魔法』の『浄化』・『殺菌』に相当する。ただ、既に発生してしまった毒素は石化能力では排除出来ないので光魔法の『解毒』を掛ける必要があるが。


そう、このコカコッコ処理卵は生食可なのだ。ヒト族の王侯貴族は念のため光魔法『解毒』まで掛けるが、コカコッコは鶏が卵を産むと即啄きに行くため菌が毒素を出す暇もないのだ。


コカコッコは異世界転生者であったと言われている『鶏の勇者』と呼ばれていたヒト族の男性、ケン=タツキが “ どうしても生玉子が食べたかったから ” という理由だけで作り出され固定された品種である。ちなみにケン=タツキは()()と呼ばれているが職業(ジョブ)はテイマーだったという。




「ミーシャ=ニイトラックバーグに【番コカトリス】の前で【鶏餌草】を食べてもらえばよいのではないか?」


錬金術ギルド支部長はそう提案し、その場にいたギルド支部長達は満場一致で賛成した。





―― 時は少し前に遡る ――



「校長先生、これがボクのスキルオーブ【簡易・二視】です」

 

「ミーシャ=ニイトラッバーグ。スキルオーブを確かに受け取った。明日から正式に職校生だ。職人魂に恥じることの無い生活を心掛けなさい」


「はい、分かりました」


「明日は、入校式と『キーボックス』に関する講義とカリキュラム説明がある。その他の時間は在校生の作業の見学をするなり、やりたい作業をするなり自由だ。職校では基本、座学や全員参加の授業以外は好きに修行や作業をして構わないので、上手く時間を使うように。外の仕事を請けても問題ない。年に数回ある認定試験にだけは参加するように」


「分かりました」


「それとだ、ミーシャ=ニイトラックバーグは “ ドワーフの為のギルド ” から招集がかかっている。明日は午後一時になったら商業ギルドに行くように」



― ― ― ― ― ― ―



「まだ会議中だったか。遅くなって申し訳ない。何とか間に合った様だ」


慌てて会議室に姿を現したのは職業訓練校校長。



「なに、錬金術ギルド支部長も学長も先程到着したばかりだ」


「私と校長は呼ばれない予定ではなかったのかね?」


「いやはや学長、申し訳ない。先程ミーシャ=ニイトラックバーグのスキルオーブを受け取ったものでね。今なら全員でスキルオーブを検視できるという事で商業ギルド支部長に宛てて【遠隔伝達回覧板(メッセージボード)】を発動させてしまったのだよ」


「それで商業ギルド支部長から私に【遠隔伝達回覧板(メッセージボード)】が回ってきた訳か」




遠隔伝達回覧板(メッセージボード)】という魔道具は決められた仲間の間で簡単な文章を伝達出来る便利な魔道具だ。発動すると指定相手にだけ見える形で伝達したい文章がスキルオーブの表示の様に空中に現れる。読んだら閲覧済みにチェックを入れれば次のメンバーにメッセージが回される。一斉送信出来ない代わりに一筆入れたりも出来る。ただ、一方通行で一巡させなければならない使い勝手の悪さと、消費魔力量が多い為にコスパの悪さから現状あまり利用されていない。

製作と管理に携わっている錬金術ギルドの保有する記録によると、エルフが持ち込んできた魔道具で、異世界転生者由来()()()ということだ。




「という訳で、噂のミーシャ=ニイトラックバーグのスキルオーブを持ってきた。髭が生え揃ったばかりにしてはなかなか過激だ」


「どれ、拝見しようではないか…」


「戦闘スキルや魔法は何一つとして目新しさは感じられないが、生産系スキルの『料理研究(レミレシピ)』と、その他スキル『念話(運魔(ウマ)) 』というのは一体……」


「加護の『見守る者・ヤーデの加護』とは!?」


「『料理研究(レミレシピ)』のレミとは、まさか地母神レミか!? つまりミーシャ=ニイトラックバーグは神様の加護を二つ保持しているという事か???」


「校長、これは確かに過激なスキルだ」


「『念話(運魔(ウマ))』は【運魔(ウマ)】の餌事件由来だろうか?」


「錬金術ギルド支部長、それでもミーシャ=ニイトラックバーグにコカコッコの前で【鶏餌草】を食べさせるつもりか?」


「いや、私もコカコッコの前でミーシャ=ニイトラックバーグが【鶏餌草】を食べるところを見てみたい」


「おや、学長もか。奇遇だね」



新しい研究対象(イケニエ)を見つけてしまった錬金術ギルド支部長と学長は嬉しそうに髭を震わせながら笑みをこぼす。



「農業ギルドとしても、とても興味がありますよ。それこそプラント・オークの餌もドワーフとの間に共通点が有って欲しいと思っているくらいですから…」




腹黒い大人(オッサン)達の思惑により振り回される未来が迫っていることをミーシャはまだ知らないのだった……。

(作者より)


鶏の勇者・ケン=タツキ、前世名は『立樹 健』。虎獣人の手により川に投げ込まれてはいないと思いたい… (注:川に投げ込む=歓迎の儀式)


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