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第183話

今回は各ギルド『スワロー』支部長達の回です 


ヒト族のそれと区別する為に “ ドワーフの為のギルド ” と表現されるギルドがある。商業ギルド、錬金術ギルド、冒険者ギルド、農業ギルド、馬車ギルドの五大ギルドがそれだ。五つが揃っていない町には “ 互助会 ” というシステムがあり、不足ギルドの代行サービスをしてくれる。そこに街や町村の首長が加わり行政が回されている。例外的に魔導学園と職業訓練校のある都市はその学長と校長がダブル首長を務める事になっている。



「商業ギルド支部長、今年は満場一致で学園の卒業生で錬金術ギルド所属のブレイズ=ストーンが発案した、馬車車輪用の【履筒(タイヤ)】が登録と優先開発案件になるかと思われていたが…」


「まさか、伏兵が現れるとは思わなかった。しかも有益案件を大量提出だ」


「馬車ギルドとしても、【履筒(タイヤ)】の実用化は多大に期待しているのだが、まさか【運魔(ウマ)】の餌が伏兵として登場しようとは……。しかも二種類だぞ、二種類」



学園の会議室で商業ギルド、冒険者ギルド、馬車ギルドの『スワロー』支部長が意見を述べる。ドワーフ領内の各ギルド長や主要都市にある “ ドワーフの為のギルド ” 支部長が集まる “ 大会議 ” の開催を前に『スワロー』のギルド支部長達が会議を開くことにしたからだ。本来ならば『ネオ=ラグーン領』領都『ネオラグーン』で “ 大会議 ” を開催するのが筋なのだが、今回は『ビレッジアップ』経由でここ『スワロー』で登録されてしまった()()()()のせいで異例の地方都市『スワロー』開催の運びとなった訳だ。


“ 大会議 ” に出席するのは『ウェルス=マウンテン領』の各ギルド長、『マウンテン=ペアー領』の各ギルド長、多種族が住む地域からは『ストーン=リバー領』より『ゴールデンストリーム』の各ギルド支部長、ヒト族の多く住む『イースト=キャピタル領』より各ギルド支部長、…等々。


かなりの広域に招集を掛けている為、各ギルド長・ギルド支部長が問題なく出席するには猫獣人族の協力が必要不可欠である。猫獣人族の現トップで異世界転生者の三毛皇(みけおう)が整備した【黒猫印の配送便】システムを利用させてもらうからだ。【黒猫印の配送便】は迅速な配送の為に主要都市に転送魔法陣を設置している。基本、配送便スタッフしか転送魔法陣は利用出来ないのだが、配送便スタッフ同伴ならば他種族も利用出来る。それを最大限に利用して猫獣人族以外の種族は遠距離移動を可能にしている。尤も、配送便スタッフが拒否したら安全装置が発動し転送魔法陣は起動しないので、無理やり配送スタッフを猫獣人質(ひとじち)にして侵攻に利用することは出来ない。




「その餌の件なのだが…追加案件がある。昨日、『地底()』のメンバーから【鶏餌草】が食用になると報告があった」


「まさかその発生源の人物(ドワーフ)は……」


「その()()()だよ」


二度の()事件を体験している馬車ギルド支部長が苦笑いしながら()()()由来だと告げてくる。


「まさか、養鶏場の鶏の前で口にしたとか!?」


「いや、『地底()』が確認しただけだそうだ。昨日、鶏の前で口にすることは止めさせたから大丈夫だろう」


「流石、冒険者ギルド支部長」


「そろそろ農業ギルド支部長が来るころだな」


「錬金術ギルド支部長は?」


「魔石滓の件のせいで遅れて来ると連絡があった」


「それは仕方ないな」


「ブレイズ=ストーンの発案したワーム素材を使った車輪用【履筒(タイヤ)】、それと同じ製法で管虫(チューブワーム)で作る伸縮性のある輪も凄いと思うぞ」


「これだろ、これ。最近流行りの髭エクステの取り付け側の伸びる輪」


馬車ギルド支部長がポケットから赤色の髭エクステを取り出す。


「何で馬車ギルド支部長が髭エクステを持ってるんだ? 嫁さん居るのに色気づいたか?」


「愛娘に渡されたんだよ」


「そいつは仕方ないな」


「この伸びる輪の名称は【管虫輪(ワムリング)(仮)】だったかな」



「葉物野菜を束ねるのに便利だと思うぞ」


そう言いながら農業ギルド支部長が会議に加わる。


「遅かったな」


「酒臭いぞ」


「試飲続きでな」


「【(あか)茄子】か? 試飲(あれ)は中々ハードであったな」



ドワーフをもってしてハードと言わしめる試飲!! 流石【血祭り(ブラッディ・フェスタ)】としか言いようがない。



「実は【(あか)茄子】には何種類かの品種があってだ、品種ごとの違いを試飲していた。推奨品種を量産する必要があるからな」


「農業ギルドも大変だな」


「拭き草の件もあるし、シロップ研究も発生してしまった故にな。それでも品種改良が楽しめると思えば苦労も相殺されると言うものだ」



酒臭い息を吐きながらニコニコとした笑顔を浮かべる農業ギルド支部長。その幸せそうな顔を一瞬で歪ませる爆弾発言を冒険者ギルド支部長が発した。



「ところで農業ギルド支部長、【鶏餌草】の報告は届いていたかね?」


「何のことだ?」


あっ……、これから起こり得ることを察した商業ギルド支部長と馬車ギルド支部長の表情がサッと曇る。


()()追加案件だ。【鶏餌草】は(ドワーフ)が食べることが出来る」


「……、それは鶏の前で試食させろということなのかね?」


「させるしかなかろう…」



「遅くなった。どうせなら【番コカトリス】の前で試させればよいのではないかね?」



錬金術ギルド支部長が扉を開くや否や、【鶏餌草】試食相手を指定してきた。

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