第17.5話 (閑話)
生活道具に特化した小鍛冶師ガルフ= トングさんに日本式ピーラーの話をしたら、大鍛冶師のリンド= バーグさんにも当然ながらめっちゃ喰い付かれた。大鍛冶師、武器以外の刃物も打つんだ。どうもこちらの世界にはピーラーが存在してないらしい。
生前、北海道の婆ちゃん家にあったリンゴの芯抜きが実は海外のピーラーだった事を知ったのは、TVで外国人観光客が100均で興奮しながらピーラーを買い漁っているシーンが映っていた時に、画面脇に海外のピーラー画像を出して「ちなみにこれが彼女の母国のピーラー」ってナレーションが流れたのを見たからだ。あれで皮剝き、ムリゲーです。
よく考えたらピーラーだけでなく、日本の鉋も鋸も引き切りだったわ。
で、大小の鍛冶師にピーラーの刃を説明している時、「T字剃刀みたいに引いて使うんですが…」とつい言ってしまったら更に喰い付かれた。この世界には使い捨て剃刀や替え刃という観念がなかった。ドワーフに髭の手入れに関わる話はしちゃダメです。芸能人の不倫情報で盛り上がっちゃう井戸端会議より話が長くなります。
でも、ドワーフは髭を全剃りしないからT字剃刀は必要ないんじゃ?
俺が語ってしまった前世知識に興奮した両名に「ミーシャ、もっと道具のアイディアはないのか!!」と詰め寄られ、ついポロッと漏らしちゃったよ、『紐を引っ張って使うフードプロセッサー』。電気も魔力も必要ない、手動式微塵切り機の事を。
で、その紐を引っ張って使うフードプロセッサーは、大小鍛冶師の共同作業によって完成し、【バーサーカッター】と名付けられました。ブレードが容器の中身を容赦なく微塵切りにするあたりがバーサーカーを連想するからなんだとか。
結論︰ドワーフが刃物を見たら、大鍛冶師も小鍛冶師も関係なく暴走する




