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第169話

「ミーシャちゃん、おまたせー!!」


「ミーシャおはよう」


「アリサお姉ちゃん、チーウさん、おはようございます」


「クララとイルマとマヤもすぐ来るって」



ものの五分もしたらはじめましての挨拶合戦が始まる。



「初めまして、うちはクララ=サザーランドや」


「ちーっす。自分はイルマ=ニアーっす」


「私はマヤ=リーク、宜しくなのです」


「ボクはミーシャ=ニイトラックバーグです。皆さん宜しくお願いします」



クララさんは商人の家系のサザーランド氏族、イルマさんは元漁師の家系で今は農業ドワーフに転向したニアー氏族、マヤさんは衣類を取り扱うリーク氏族だった。三人とも特に氏族の職業に縛られている訳でもないとのことで、アリサお姉ちゃんとチーウさんに誘われて冒険者をしているのだとのこと。ちなみに既婚者はアリサお姉ちゃんのみだ。



「クララさんってやっぱり、もうかりまっか? って挨拶するんですか」


「当たり前やでー。ボチボチでんなぁ」


「今日は あきまへんなぁ じゃないのか」


「イルマ、採集にもいかんで、あきまへんなぁ は言うたらアカンのよ」


「ミーシャは職校に入るんですよね?」


「学園の入学許可も出たんだって」


「マジかー、うちらとはちゃうんやな」


「でも今日から『地底()』の六人目のメンバーになるんだ」


「幻の六人目(シックス・メンバー)やな」


「でも、両方に通うなら素材がバンバン必要になるのですよ」


「学園に行くなら新しい野菜の品種改良をして欲しいっす」


「売れるモンなら何でもええよー」


「オシャレ作業着(ツナギ)なら私の家のお店にもあるのです。学園指定の白衣もバッチリ取り扱ってるのです」



うん、レディが五人もいたら騒々しい。



「では作戦会議だ。探索方向はどうする?」


「近場でいいよね? それこそトイレ二つくらいの範囲でよくない?」


「ちょっと受付に確認してくるっすね」



街道や山道沿いに設置されているトイレの赤スライムの安否確認も冒険者の重要な仕事だった。赤スライムが死亡もしくは脱走していた時の為の補充用の個体を専用のスライム(かめ)に入れて持ち歩く。この赤スライムを入れた(かめ)は持ち歩きトイレとしても使えるので冒険者の必須装備になっている。赤スライムは意外にも綺麗好きなので “ 食事 ” の後は自身や便槽や(かめ)に、『汎用魔法』の『浄化』をかけている事が確認されている。


そして、赤スライム用の乾燥餌という物も存在する。トイレの利用率が悪くて赤スライムが痩せている時や、甕に入れて持ち歩いている赤スライムに与える乾燥餌で、その素材は牛糞。十分に乾燥させた牛糞は臭くないし焚き付けの燃料としても使える。前世でも燃料や建材として使う地域があったよね。



「西街道か北西の林道のトイレチェックが希望だってよ」


「街道は皆使うから林道にしようか」


「りょ」


「では地図の確認なのです」



テーブルに『スワロー』近郊の地図が広げられる。



「で、ミーシャちゃんはこの東街道を通ってきた訳ね。トイレは問題なかったでしょ?」



あー、成程、地図で見たらこんな感じなのか。



「こんな位置関係だったんですね。ボクの通ってきた街道のトイレは問題なしでした」


「まぁ、トイレのトラブルは滅多にないんだけどね」


「近場の林道やし、今の時期だと野生動物も出てこんのとちゃう?」


「熊もまだ冬眠しないしね。比較的獲物が獲れない時期だよね」


「蛇、トカゲ、カエルを穫るんなら今っしょ」


蟾蜍(ブフォ)さん獲りますか?」


「今の時期なら青胡桃が拾えるな。マヤの店は間に合ってた?」


「大丈夫なのです。クララさんに譲るのです」


「おおきにー」



ヤバい、付いていけない。でもちゃんと探索予定エリアは赤色ペンで印付けしているし、移動ルートもキッチリ決めているので、単なる女子会をしていないことは一目瞭然だ。



「じゃあ、この計画で受付に提出してくる」



草採集作戦という名の林道散策とトイレチェック任務が成立したところで俺の装備チェックに移行する。



「大丈夫じゃない?」


「討伐しないし」


「強いていったらブーツ周りかなぁ。巻いた方がいいよね」


「せやな」


「夏秋用の胴鎧用の鎧下もしくは布鎧(クロース・アーマー)が有れば安心なのです」


「マヤの店に置いてたっけ? それともアリサの旦那さんの工房?」


「それはここのギルドでも取り扱ってるよ」



どうやら、鎧の中に着る布鎧(クロース・アーマー)と呼ばれる装備が増やされる模様。うーん、丈夫な作務衣なのか? 魔綿布で作られていてガーゼの様に何枚も重ねられており、重なった布が動かないように刺し子ではないけどビッシリと並縫いが施されている。所々に硬化処理された布片が取り付けられており、軽くて柔らかいけど所々が丈夫な作りだ。硬化処理された布片の場所にはオプションで革パーツや魔物素材も付けることができる。アリサお姉ちゃん曰く、ゴブリンの二〜三体ならこの布鎧でもなんとかなるとのこと。同素材の下半身用はプレートアーマーを始めとしたフルアーマーの鎧下になっちゃうので、普通は革パンツを合わせる。野営時の夜着にする為に下半身用の鎧下を持ち歩く冒険者もいるそうだけど。


そして脛に巻き付けるゲートル布も購入。こっちは魔麻布製。魔麻布は止血帯にも使えるので少し多目に購入するのがベスト。脛に巻くのはうっ血防止もあるけど、メインの目的はヒル対策でした。商品名が【ヒルと寄るの間に】っていうのはどうにかならなかったの? 確かにヒルが寄ってこない様に脛に巻くけどさぁ…。ちなみに【ヒルと寄るの間に】はメッチャ濃い塩水に浸した後、魔力を浸透させる処理がされているのだとか。

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