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第168話

その後は、【酒盗練シュトウレン】をツマミに一升瓶っぽい瓶の中に入っている酒を少しだけ飲んだ。古代エルフが好きな【白肌樺(キシリ)】の炭で濾過した『生命之水(蒸留酒)』だ。



(共)「【白肌樺(キシリ)】の樹は有り難いけど恐ろしい。吹雪の中で【白肌樺(キシリ)】林に迷い込んだら死を覚悟しなきゃならないんだよ」


(共)「でもその樹でお酒は濾過するんですよね」


(共)「吹雪でなければ有り難い樹だからね。火口に使えて薪にもなる、樹液も採れる。樹液を抜ききった樹を炭にしておけば暖も取れるしお酒も濾過出来る」


(共)「実は便利な樹なんですね」


(共)「樹液から砂糖も作れる。ただ粉にするのがかなり手間だねぇ。煮詰めてシロップ状態で使うのが楽だよ。古代エルフは【白肌樺(キシリ)(とう)】と呼んでいるよ」


(共)「えっ!? 【蛙手(カエデ)】や【鶏足(モミジ)】の樹以外でもシロップって採れるんですか!?」


(共)「【篠懸(スズカケ)】と【胡桃(ノワ)】からも採れるよ。多分他にも有るんだろうけどねぇ…。続きはミーシャが突き止めておくれ」



意外とあったぞシロップ情報。



オロール先生は冬季は講師として滞在する(居座る?)ということだ。時々遊び(飲み)においでと誘われたので有り難く受諾した。明日の草採集作戦ブリーフィングもあるのでこの辺りで退散することにした。オロール先生は俺が帰ったら煙草を吸いながら続きを飲むんだろう。



(共)「悪いけど、八時頃に迎えにきてくれないか? ほら、【角麦】の粥を食べに行くだろ?」


(共)「わかりました。ではおやすみなさい」



もしかしたらオロール先生は朝が弱いのかな?


ーーーーーー



蕎麦米粥はシンプルながら懐かしい蕎麦の風味が楽しめた。元日本人としてはお粥を食べると反射的に梅干しが欲しくなった。醤油が潤沢に手に入る様になったらかけ蕎麦を食べてやるんだ…とか思ったけど出汁問題があるな。


オロール先生は朝風呂をしてから部屋で寝直すって言ってた。俺は部屋に戻ると身仕度を整える。先日の化石の件もあって今は鉱石研磨がしたくてたまらないんだけど、同じ素材でも利用法の選択や研磨方法の違いで差異が発生することが分かってしまったので、情けなくも安い素材でも勢いで研磨するのに気持ち躊躇してしまってるのだ。


だって、前世じゃ考えられない事だし。宝飾用と蒐集用の他に、装備用と魔道具用が発生したよ。もしかしたら魔法触媒用なーんてのも有るかもしれない。



でも、一つくらいはいいよね…、という研磨衝動に抗えなかったので前世でも結構お世話になった蛇紋岩(サーペ)を研磨することにした。サイズは若干歪んでいるものの長さ4cm✕幅3cm✕厚み1cm程度、前世で言うと海苔の付いたおかき、若しくは大き目の消しゴムサイズ、メラミンスポンジひと千切り分といったところかな。先ずは全体図をラフスケッチから。


うん、彩色したい…。絵の具でも色鉛筆でも何でもいいんだ。


これは蛇紋岩(サーペ)でも白い部分が少ない種類か……。蛇紋岩って確か白い部分にアスベストを含んでたよな。なので常に濡らしながらの研磨で削りカスを飛散させない事を念頭に置かないと。まぁ、どんな鉱石であれ危険・有害な成分を含むものは多々あるので気を付けなきゃいけないけどね。


これ、研磨前に俺のスキルで出来る限り鑑定してから作業してみよう。風化具合で作業が無駄になるかもしれないしな。


それと、明日の草採集作戦中に何かしら拾えるかもしれない。



そんなこんなで一時間はあっという間に過ぎる。石類とノートを戸棚に仕舞い、それからツインテと髭のチェックを。ブリーフィングって言ってるけど女子会になるかもしれないし。




特にすることもないので二十分程前に冒険者ギルドに入った。内部は所謂ファンタジー設定の、アニメやマンガやゲームに出てくるような感じ。前世の市役所の市民課のフロアやハローワークに似てるかもしれない。受け付けカウンターがあって、壁に依頼が貼ってあって、査定の場所もあるし…。うーん、市民課&ハロワに買い取りショップも出しておこうか…。あ、フードコートもあるわ。


ここはドワーフの街の冒険者ギルドなので、当然だけど職員も滞在する冒険者も全員ドワーフ。しかも館内にいる人数は少ない。まぁ、冒険者ギルドに活気がないのはここ『スワロー』が職人の街だからなんだけど。余談になるが隣の商業ギルドはメッチャ活気付いている。


のんびり館内を眺めていると、フードコートこと軽食も取れる休憩スペース側の壁に “ お酒は十五時になってから ” “ ギルド内は禁煙です ” と書かれた板が掲げられていた。


依頼伝票を見てみると、大半が採集依頼で若干の護衛依頼がある程度。そして本当に少ない魔物討伐依頼。よくよく見たら、ゴブリンの魔石は採集依頼扱いだった。なので、討伐証明定番のゴブリンの鼻とか、ゴブリンの左耳とかは持ち帰る必要は一切ない。そのせいか、ヒト族の冒険者ギルドで討伐依頼の提出忘れをするドワーフ冒険者が後を絶たないのだとか。


あれっ? 『スワロー』以外の冒険者ギルドの依頼伝票が貼られているぞ。『ロングヒル』とか『ビレッジアップ』、それこそ領都『ネオラグーン』の伝票もある。


ちなみに、俺の居るこのドワーフ領の『ネオ=ラグーン領』、領都の名前は『ネオラグーン』。間違い防止で呼び名は領都、表記では『 = 』を省く。

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