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第167話

(共)「これは『チュエレ山』由来のアイテムでね…、死霊術と降霊術を修めた古代エルフなら皆作れる腕輪(わっか)だよ」


(共)「装着していいですか?」


(共)「それを着けたら私でも転生者部分の魂見が出来なくなるよ」



左手に嵌めたら手首ピタッと貼り付くように収まる。ピタッと貼り付いたにしては動作を妨げるわけでもない。次第に透明になってゆき……ついには見えなくなった。


(共)「これは魂と密着するからね、腕輪(わっか)の存在はまず看破されない。腕輪(わっか)は重魂を抑えてくれるよ。もし外したくなったら『ブルー=フォレスト』の北の果てにある『チュエレ山』に行けば外してもらえるよ。壊れた時も『チュエレ山』で直せる。その時は私の名前を出しておくれ。ミーシャが生きてる限りは私が対応するよ」


(共)「オロール先生……寿命は大丈夫なんですか?」


(共)「いや、後四十年も持たないだろうね。その時は誰かに降霊(おり)るだけだよ。呼び出されたら出て来るさ。古代エルフもある意味ではエルフより長生きって事かねぇ…」



オロール先生はケラケラと笑っているけど、古代エルフってこんな感性なのか? 寿命は短いけど転生したり降霊したりで記憶や知識を繋ぐって事?



(共)「ボクにはよく分からない感覚です」


(共)「普通は分からないだろうね。古代エルフに生まれてこない限りは」


(共)「そう言えば、さっきオロール先生がボクの魂を見ていた時に、古代エルフを選ばなくて良かったな…って言ってましたけど、過去に古代エルフに転生した転生者っていたんですか?」


(共)「いたらしいよ。古代エルフって言葉の響きでエルフより長命だと勘違いしたらしくてね…。ミーシャも勘違いしてたんだろ?」



恥ずかしながら勘違いしてました。って言うか、前世のラノベ的知識とか設定だと古代エルフとか始祖エルフって長命種ってのがデフォじゃない? 下手したらヒト族より短命なエルフって、エルフエルフ詐欺でしょ。



(共)「おっ、見えなくなった見えなくなった。これで安心だ。ミーシャが自ら転生者だとバラすか、転生者同士で会話してバレでもしなければ気付かれないハズだよ」


(共)「ありがとうございます」


(共)「気を付けるのは、異世界の食べ物の話とか、流行(ハヤリ)戯曲(うた)や絵画の話とか、戦争の話とか、為政者の話だね。異世界転生者同士の暗号で使うのならいいんだろうけど、余計な身バレもするだろうし……。まぁヒト族に必要以上に近付き過ぎなければ転生者生活も然程煩わしくはないものだよ」



ははははは…色々やらかしてるよね、俺…(苦笑)



(共)「肝に銘じます」


(共)「まぁ、腕輪(わっか)で前世の魂は見えなくなったから何とでも誤魔化せばいい。それより、今年の冬は当り年だったぁ。新しく酒飲み友達が出来たよ」


(共)「良かったですね」


「何しゃべてらのよ、けやぐは、おめのことだべな」

訳:(何を言ってるんだい、友達は、あなたの事だよ)


(共)「へっ???」


「けやぐから、どやぐだな」

訳:(友達から大親友に昇格だよ)


「わいはー!!」

訳:(ナンダッテー!!)




取り敢えず俺の魂を見られても転生者バレはしなくなったらしい。オロール先生の話によると、二重になっている魂の前世側を少しだけ引き摺り出して術師のコントロール下に置く支配魔法とかが有るのだという。高位の死霊術師とか、悪魔族で精神支配系に特化した種族(それこそ淫魔とかだ)や高位アンデッドなんかが使える秘術だ。



(共)「古式のゾンビの使役術がそんな感じだよ。二重の魂の過去に死んだことのある方を死霊術で従わせる術式だ。対象を意図的に仮死状態にして蘇生させると一時的に魂が二重に、つまり重魂(じゅうこん)状態になる。その重魂(じゅうこん)の仮死状態になった方の魂を死霊術で支配下に置くんだ」


(共)「それって所謂アンデッドのゾンビではないんですよね?」


(共)「生きている相手を無理矢理操り人形にする傀儡術だよ。長らく掛け続けて支配していると本当のアンデッドに変化させることも出来る非道の術だ。掛けられた相手は術師の忠実な下僕になるし…、たとえ術が解けても術師に依存するからね。大昔ならともかく、今は禁呪中の禁呪だ」



ジョブのジャンル違いで知らない事とは言え、教わらないと知らないことだらけだ。知ってしまえばユニークスキル『知識保管所(アーカイブ)』の力で脳内にストックしておけるけど。学園の図書館で知識を貯めていかないと駄目か。



(共)「でも何で大昔の(エルフ)はそんな危険な術を?」


(共)「厳冬の雪山で仮死状態になった仲間を里に返すのに仕方なく使っていたそうだ…。天に見放された仲間を助けるために、仕方なく冥の力を使っていたんだよ……」



そう語ったオロール先生は、悲しそうな目で何かを思い出した様に遠くを見ていた……。

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