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第166話

「その(めぇ)に…」

訳:(その前に)


オロール先生は何もない空間から真っ赤な数珠と黒い数珠を取り出す。黒い数珠の方には数珠玉と数珠玉の間に熊の爪や猪の牙も通されている。オロール先生は赤い数珠を手にし、黒い数珠は首から下げる。



「ヘレバヘネッテヘルシー、ヘネバヘッタッテヘルシー、ンダバヘネシー!!」



オロール先生は謎の呪文をヘルシーだヘネシーだと唱えながら赤い数珠をジャラジャラと弄る。



「音っこしね!!」

訳:(音漏れしない!!)



(共)「お待たせ、お待たせ。防音の結界呪文を展開したからね。魂見とか降霊とかをする時はね、防音結界は必須なんだよねぇ…。これは『ブルー=フォレスト』の東の言葉だよ。西の言葉を遮る為さ」


(共)「ありがとうございます。あの、その…ボクの魂の件ですが……」


(共)「私に見えるんなら、もう少し強い力を持った死霊術師(ネクロマンサー)霊媒師(シャーマン)ならその魂の秘密を完全に見てしまうだろうからね。ミーシャは秘密にしておきたいのかな? それともバレても気にしない?」


(共)「ボクは秘密にしておきたいです」


(共)「あい分かった。その代わりもう少しだけ魂を見せておくれ」



オロール先生が再び赤い数珠をジャラジャラと弄る。



(共)「あー、ミーシャはこことは違う世界で死んで、魂がこっちの世界に転生してきたのか。そうか、魔法が無い世界であったか。それで前世では……あんた男か。馬車馬の様に働いていたから今生はのんびり酒を飲みながら好きな作業をしながら生きようと……、でドワーフか。そうかそうか、古代エルフを選ばなくてよかったな…」


(共)「あ…、そうです」


(共)「んで…、これは誰かな? 緑色の加護が見える。 霊か…? ん…? これ神様か? で、ツート(チート)が三つか。はいはい、それで言葉が通じてた訳だな、ハイハイ……、【運魔(ウマ)】に好かれてるのは馬車馬の様に働いていたせいだな」



ヤバい、転生者って見える人にはガッツリ見えるんだ。



(共)「んーー、このままでは駄目だな。待てよ……確か魂見の封印の腕輪(わっか)があったハズ。はてさて、どこに入っていたか……」



オロール先生はそう言いながらゴソゴソと見えない空間を探っている。これが世に聞く、アイテムのしまい場所が分からなくなる次元収納トラップ!?



(共)「おっ、これか?」



オロール先生が謎の包みを取り出す。


「違る、これだば【酒盗練(シュトウレン)】だじゃ」

訳:(違う、これは【酒盗練(シュトウレン)】だよ)


シュッ、シュトーレンですと? シュトーレンって、クリスマス前に出回るカマボコ型に形成されたフルーツケーキの事だよね? 確か、薄切りにして少しずつ食べていくやつ。



「これな、めのよ」

訳:(これ、美味いのよ)


取り出された【酒盗練(シュトウレン)】を『対物簡易鑑定』する。



酒盗練(シュトウレン)】:クリームチーズに酒盗を練り込んだ酒の肴。ハマるとクセになる味わい。薄切りにしたものをチビチビとやりながら飲むのがオススメ。



シュトーレンじゃねぇ!!



(共)「オロール先生、酒のツマミだけ出されても……」


(共)「悪い悪い、ミーシャはどのお酒がいいかな?」



更にゴソゴソと次元収納内を探るオロール先生。外から見えなくても整理整頓って大切なんだな。…って、探し物は【酒盗練(シュトウレン)】でもお酒でもないです。



(共)「見つけた、これだ!! 【秋津(ダンブリ)腕輪(わっか)】」


今度はお酒じゃなくて探していた腕輪が見付かった模様。


(共)「酒はどこだ!!」


あ〜〜、この(エルフ)、ドジっ子タイプなのか。それも守ってあげたくなくなる方の。



テテレテッテテー、 白濁獨酒(ハクダクドブロク〜)(ダミ声) って雰囲気を醸し出しながら取り出されたガラス瓶。あれ…一升瓶くらいデカくね? って言うか、この世界にも一升瓶って有るの!? 結局、酒も出て来る訳か。



(共)「【秋津(ダンブリ)腕輪(わっか)】を装着する前に確認しておかなくてはいけない事があるんだ。ミーシャは元の世界に戻りたいという願望はあるのかい? それによっては使う腕輪(わっか)の種類が変わってくるよ」


(共)「いや、戻れなくても構わないです。多分、元の肉体は火葬されてしまっているでしょうから、今から戻っても赤子から再スタートでしょうし」


(共)「ならば【秋津(ダンブリ)腕輪(わっか)】で大丈夫だな。元の世界に戻りたいんなら【臥蝶(テコナコ)腕輪(わっか)】が必要だったな」



机の上に繊細な細工の施された腕輪が置かれた。前世で言うなら平戸細工って感じ? 捻った細い針金で構成された細工物だ。よく観察すれば蜻蛉柄に見えてくる。



(共)「秋津(ダンブリ)は天と地とを行き来する魂の運び手だ。立ち止まっても前進しかしないから魂は元の世界には戻らない」


(共)「臥蝶(テコナコ)は違うんですか?」


(共)「臥蝶(テコナコ)は天と地と冥をフラフラと行き来する魂の運び手だから、元の世界に戻りたかったら使うのはこっちだな。いやーよかった。もう一回探さなくてよくて良かった」



『対物鑑定鑑定』を掛けてみる。


秋津(ダンブリ)腕輪(わっか)】: UNKNOWN OBJECT


あら、鑑定不能だよ。




(作者より)


オロール先生の謎の呪文、


「ヘレバヘネッテヘルシー、ヘネバヘッタッテヘルシー、ンダバヘネシー!!」


訳:(言えば言わないって言うし、言わないと言ったって言うし、だったら言わないよ!!)



と言う内容です。しゃべればしゃべったってしゃべられる……(以下略)とは、ちょっと違う感じにしてみました。

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ブルーフォレスト東西で対立してんのかな? 誰か謀反起こして独立したのかな?
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