第164話
(作者より)
ミーシャは普段はドワーフ語で話しています。他種族語や共通言語の時は
(共)「こんにちは」 ←共通言語
(エ)「こんばんは」 ←エルフ語
と言った感じで表記したいと思います。まぁ、古代エルフさんが出て来る時だけの表記になるかもしれないですが。後、古代エルフ語の下に書いてある対訳はミーシャはスキルの力で意味を理解している状態を表しています。
言葉が通じると勝手に勘違いしたエルフさんは難解な言葉でマシンガントークをぶちかました。きっと話し相手に飢えていたんだろう。スキルがあっても内容が頭に入ってこなかった。
「オレな、古代エルフだのよ」
訳:(私は古代エルフです)
非常勤講師さんはエルフだけどエルフじゃなかった!! そうか、この難解な言葉は古代エルフ語か!! 普通のエルフ語とか共通言語は通じるのだろうか?
(エ)「ボクの言葉が分かりますか?」
(共)「古代エルフの非常勤講師さん、通じてますか?」
「どっちも分かるはんで」
訳:(両方分かりますよ)
聞き取れるけど喋れるどうか、これはまたスキル介在でも別処理って事か? 意識していないと脳は混乱するし言語の変換で喋るまでに時間も掛かる。ポニー達との念話の時もビックリしたけど、改めて言葉の壁の手強さを感じたよ。
(共)「共通言語にしませんか?」
(共)「仕方ないね。 ん…? あなたは一回死んでるのかな? ちょっと変わったものが見えるね」
古代エルフさんの発言ににドキッとした。何か見えたの? 俺が異世界転移者ってバレたかな?
古代エルフさんは何もない空間から真っ赤な長数珠を取り出すと両手でジャラジャラと鳴らし始めた。そして謎の言葉、古代エルフ語で謎の呪文を詠唱し始める。『異世界言語』を介しても俺には呪文の意味は分からなかった。
「あー、おめだば転生者だが」
訳:(あら、あなたは転生者だったのか)
「………」
「けねけね、誰さも喋らねはんでなー」
訳:(大丈夫、誰にも言わないからね)
(共)「あ……、ありがとうございます」
「オレな、スクルのせいで魂っコ見えてまるのよ」
訳:(私はスキルの関係上、魂が見えてしまうの)
(共)「ええっ!? そっ、そうなんだ…ですね」
「へばな、湯っコから上がるべな。逆上せてまるな。せばだばまいねびょん」
訳:(そうだね、お湯から上がろうか。逆上せてしまうよ。それは駄目だね)
スキルが仕事をしてくれるけど、古代エルフ語の変換は脳にも負担がデカいのか非常に疲労度が溜まる。湯船の中で聞くのはヤバい。見て分かるのと聞いて分かるは大違いだ。TV画面の字幕、アレは偉大だったよ…。
(共)「ゴメンゴメン、つい…ね、素で言葉が通じる相手に会ったので嬉しくなってしまったのよ」
(共)「そこは気にしないで下さい」
(共)「あなたの魂の覗き見をして申し訳なかった。二重の魂が見えてしまったんだよ。重魂だよ、重魂。たまに居るんだよなぁ」
重魂は言葉の響きが何だか良くないなぁ…。重婚を思い出すせいか? そして特殊スキルの前だと転生者だってバレるんだな。
(共)「あの、話は変わりますが古代エルフさんって非常勤講師なんですよね?」
(共)「そうそう。後期に指導しに来るんだよ。『ブルー=フォレスト』が雪に埋もれるから避難を兼ねてね」
(共)「『ブルー=フォレスト』!! あの端っこの地ですか?」
(共)「林檎の採れる森林地帯だよ。あの世と繋がる山もある」
古代エルフは『ハポン=ヤポン国』の北端『ブルー=フォレスト』に住む亜人の種族だ。『ロング=フィールド』に住むエルフと違い、古代エルフはエルフなのに寿命が極端に短い。
(共)「『ブルー=フォレスト』は寒いからね、皆、大酒飲みで塩辛い食べ物が大好きで、太く短く生きるのさ。下手したらヒト族より短命かもねぇ…」
エルフ族の住む『ブルー=フォレスト』と『ロング=フィールド』は共に長寿と知恵を授ける果実と言われている “ 林檎 ” の産地なのに、『ブルー=フォレスト』に住む古代エルフは短命種なのだ。
(共)「私はオロール=ダフネ=オベール。刺し子の授業を受け持ってるよ」
(共)「ボクはミーシャ=ニイトラックバーグです」
(共)「ミーシャの方が私より歳上かもしれないねぇ…」
(共)「えっ!?」
(共)「古代エルフだからね。短命の代わりに死霊術師の能力を持つ者も多いよ。先祖の霊を呼び出すことも人様の魂を覗き見したりも出来る。修行次第でカミサマも降ろせる」
(共)「ボクの事は何処まで見えたんですか?」
(共)「うーん、風呂で言うのもなぁ。後で私の部屋においで。学生寮の三階の端っこに居るよ」
(共)「ありがとうございます。あとでお邪魔しに行きますね」
(共)「このままでは湯冷めしてしまうから、もう一回お湯に浸かろう。ミーシャは寮住まいかな? それなら一緒に夕飯をしないかい?」
(共)「ボクも学生寮の部屋を借りてます。夕飯、ご一緒したいです」
という事で、俺は古代エルフのオロール=ダフネ=オベールさんと一緒に夕飯を食べる事になったのですよ。




