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第161話

「どうせだったら学園に挨拶していってくれー!! すぐそこ、隣みたいなもんだから!!」



ラルフロ=レーンさんの工房を後にしようとしたらドアの向こうからそう叫ばれた。セキュリティの関係で錬金術師は錬金術ギルドに工房を構えているし、魔道具師の工房も錬金術ギルドの傍にある。そして錬金術ギルドは学園の隣にある。


「折角だから挨拶していくか。どの道、俺とミーシャは後で学園から呼び出しだろ? アリサは関係ないからなぁ…」


「私はチーウに出来たてホヤホヤのこの魔導鏡を自慢してくる。ついでにいつミーシャちゃんと野外採集訓練をするか決めてくるね。午後二時までは『赤ら顔親父のふわふわパン屋』のテラス席でのんびりしてるから、それまでに済んだらそこで合流」


アリサお姉ちゃんはいい感じに察してくれたのでここで別れることに。そのままリンド=バーグさんと学園行きだ。


「アリサが居なくなったから言うが、本当は俺達が呼び出しを食らうのは錬金術ギルドの方だからな」


と言うことなので、錬金術ギルドに向かった。



ーーーーーー



もう…めっちゃビビって損しました。錬金術ギルドの皆さんは俺達を和やかに迎えてくれました。研磨済み魔石滓に魔力を込めてしまった問題は、錬金術ギルドと学園とで精査していくとのこと。魔石再チャージは魔石の需要と備蓄に関する事には有効だけど、魔導ガラスを始めとした魔石リサイクル事業にとっては痛手なので、実は魔石エネルギー問題で魔石が再利用出来ることは単純には喜べない話だった。


そんなこんなで魔石問題だけでなく、俺自体が調査研究対象になっているみたいなのですよ。錬金術ギルドや学園に頻繁に呼び出すことを考慮したのか、俺に学園への入学権利を渡してきた……それも無理やり。拒絶不能・返品不可。表向きは百歳まで授業料免除の特例枠。職校の生徒にして同時に学園でも生徒なのは特例中の特例だ。


「我々はミーシャ=ニイトラックバーグを批難する訳でも批判する訳でもないのだ。ただ、少しばかり新技術と事業の功労が多くて困ってしまってな…。目立たずに報奨金を渡すには職校同様、学園の授業料免除くらいしか手が無く……」



そんな破格の待遇?に苦笑いするしかなかった俺が錬金術ギルドというか学園のカリキュラムに魅了されてしまった。それは………、薬草・魔草・魔物素材の調合の授業!! これ、七味唐辛子やカレー粉作る授業だよね? えっ?違う???


野菜や薬草の新種開発や品種改良といった農業系の学問も学園の管轄だった。美味しいお米やまだ見ぬ大豆はこっち枠だったのね。



そして、魔石滓は学園と錬金術ギルド以外では決して研磨しないという誓約書を書かされました。後、むやみやたらと鉱石やスライムの死核を始めとした魔物素材にも魔力を注がない様に注意もされたけど。逆に言うと学園や錬金術ギルド内でなら申請したらやっていいという事か?


そして、リンド=バーグさんも俺と同様に誓約書を書かされたのは言うまでもない。そんなリンド=バーグさんは学園の聴講生登録をしていた。どうしても魔道具用に研摩した宝石や魔物素材を武器や防具に使ってみたいんだって。(おお)鍛冶師として通常研摩品とどう違うか興味があるのは勿論だけど、一番の理由はより使い勝手のいい装備品をアリサお姉ちゃんに作ってあげたいって事なので、それについてはご馳走様でした。


折角なので、学園の学生寮も借りてみようか…。だって、学園(こっち)の寮ならカレー粉の研究をしても怒られない気がしてきたぞ。だったら、ダブルで学生寮を借りて賃貸物件は暫くの間保留がいいのでは? あとは食事問題だけ解決すればOKだな。



実は結構、職校卒と学園卒している(ドワーフ)は多かった。身近な(ドワーフ)だとパイク=ラックさんがそう。パイク=ラックさんは先に学園を卒業してから職校に入校した(ドワーフ)でした。



俺、学園と職校の大きな違いを見つけた……。職校の学生寮には共同浴場があるけど、学園の学生寮には共同浴場が無いんだよ。デスクワークは公衆浴場に行けって事!? まぁ、学園の学生寮を借りると公衆浴場の割り引き利用券が貰えるので、俺はその日の気分で好きな方の風呂に入ろうと思います。



「ミーシャ、良かったな。これから六十年間、修行も勉強もやりたい放題だな」


…と、リンド=バーグさんに揶揄われましたよ。



『赤ら顔親父のふわふわパン屋』はフレンチトーストっぽいパンが美味しいパン屋さんだ。エールや『生命之水(蒸留酒)』に浸したパンをフライパンに乗せ、溶かしバターで焼き上げた物にクロテッドクリームをたっぷり付けて食べる。卵不使用の甘くないフレンチトーストって感じ。チーズと一緒に焼き上げるバージョンなんかもある。


 「ミーシャちゃん、リンド、こっちこっち」


待ち合わせ場所に行ったらアリサお姉ちゃんが手を振って席を教えてくれた。

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