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第157話

「そうだ、【黒猫印の配走便(メッセンジャー)】の人が、パイク=ラックとミーシャ宛の書簡を預けていったよ。ミーシャ宛の書簡には氏族名が書かれていなかったが、そこにいるミーシャ=ニイトラックバーグの事で間違いないかね?」


「間違いないじゃろう。先日、儂とミーシャで三毛皇(みけおう)閣下宛で配達を依頼したのじゃよ。恐らくその返事じゃろうて」



という事なので内容を確認してみたら、


「 越後屋、お主もワルよのう…  by. 代官 」


と日本語で書かれた便箋が入っていたよ。やるなぁ、推定=転生者の三毛皇(みけおう)さん。ならば返事は、


「 いえいえ、お代官様にはかないません。  by. 越後屋 」


一択なのでは?



「ミーシャ、三毛皇(みけおう)閣下から何かメッセージはあったかのう?」


「はい、お礼の言葉が書いてありました」


俺、嘘は言ってないと思うよ。こちらの世界の人達が見たら、謎の暗号文なんだろうけど。




「あ、せやせや、ホークの家やけど、俺とチーウの借りてる家を使うてええで。チーウが家賃負担が軽うなるって喜んではったわ」


「チーウとカーン兄貴、『スワロー』に家を借りてたのか…」


「『地底()』はんの本拠地が『スワロー』やさかいな」


「で、どの辺りなんだ?」


「二時の辺りやなー。今日から家賃払うてな。金貨三枚貰うで」


「高っっ!!」


「日当たり良好、風呂近、門近、食堂近や。ほぼ寝るだけの家に月に金貨九枚や」


「チーウの奴、何考えてんだよ…」


「そんなん俺に聞かれても…」



「あの……、不躾な質問なんですけど、カーン=エーツさんとジョー=エーツさんとホーク=エーツさんって兄弟なんですよね?」


「せやでー」


「あの……カーン=エーツさんの言葉が……」


流石に初対面の(ドワーフ)に兄弟でお母さん違いませんか? って聞けないでしょ? 何で一人だけエセ関西弁なのよ。


「あー、これな……ビジネス言語なんですわ。…って、虎の人の商人とかヒト族の商人相手だと、この口調が一番話が早いんだよ。ミーシャ君は売れそうな案件を持ち込むドワーフみたいだから、このビジネス言語を覚えておいたら他種族間との商談がサクサク進むぞ」


「あ、そうだったんですね。てっきり… 」


「てっきり?」


「いや、何でもないです、忘れてください。それはそうと、そのビジネス言語って職校でも習えますか?」


「基礎は習える。直接商談をする生産職もいるからな。お気張りやす」


「わかりました、ありがとうございます」


うーん、異世界でまさかのエセ関西弁が使えるとは…。きっと前世で関西出身の転生者がいたんだな……。って、なんでやねん!!



「あの…ボク、スキルが増えた気がするんですけどスキルオーブはどこで購入できますか?」


「商業ギルドか冒険者ギルドか錬金術ギルドだな。小さな町なら互助会に発注すれば買える。職校生や学園の生徒は月に一回までなら無償で【一視・簡易】を使えるぞ」


「そうなんですね」


「どちらも入校前に【二視・簡易】でスキル確認をするからな。リンド=バーグが伝えなかったか?」


「俺が職校に入ったのは大分前だったからな。すっかり忘れていたよ」


「パイク=ラックもリンド=バーグも単身赴任から戻ってきたんだから、職校に顔出しして聴講するものがないか確認しておいた方がいいな」


「生徒以外も授業に参加出来るんですか?」


「最新技術の説明や、レア鉱の精錬実習なんかはドワーフで職人登録がしてあれば誰でも参加出来るぞ。大鍛冶師でもアダマンタイトやヒヒイロカネなんかは滅多に打たないから、備忘録的な意味で実地実習をさせてもらいに行くんだ」


「銘木のレア材の製材や細工とかもじゃな。最新工具の内見会や魔漆や魔(にかわ)の調整実習も時々行われておるのう」


「生産職は職校に実習しに行くが、錬金術師と魔道具製造職人は学園に学びに行く。更にクロスオーバーして互いの技術や知識を共有もするので、まぁ……混沌としているというか何と言うか……」


「支部長、そこは “ モノ作りに貪欲 ” と言うところじゃよ」


「 “ 混沌の生産職(カオス・クリエイター) ” なのかぁ…」


「アリサ、その言い方は止めろ」


「えー? でも事実でしょ」


「アリサ、お前のパーティーがヒト族に何と呼ばれてるか知ってるか? “ どうかしている採集者クレイジー・コレクター ” だぞ。 “ 混沌の生産職(カオス・クリエイター) ” と大差ないぞ」


どっちの二つ名も嫌だな。


「ちなみに錬金術師は “ 向学心の錬金術師イーガネス・アルケミスト ” 呼びされておるのじゃ」





()テンションから燃え尽きて()になってしまったホーク=エーツさんを商業ギルドに置きっ放しにして、馬車ギルド、冒険者ギルド、職校と回って最後に不動産屋を覗いていくことにした。今すぐ家を借りる訳ではないけど空き物件の確認はしておきたかったんだよね。


六時区の外輪側には馬車ギルドの所有する放牧地がある。馬車の動作チェックや乗馬練習なんかはそこでする。街の外には畜産業の放牧地や鶏小屋などが有り、農地が広がっている。逆に十二時区の街の外に何があるかと言えば、登窯とか炭焼き小屋とか砕石場がある。醸造所は六時区側に作る様に定められている。その昔、二時区にあった醸造所が炉や窯に引火させて大爆発を引き起こした事故があって以来、火気の無い六時区側に作る決まりになったのだ。


冒険者ギルドで職校生枠の冒険者登録をしておいた。時々素材の採集なんかで冒険者として活動する事があるからだって。勿論、プライベートで採集に行っても問題ないってよ。

(作者より)


カーン=エーツの喋るビジネス言語なエセ関西弁は、共通言語ベースのビジネス言語です。共通言語が喋れたらビジネス言語を習ってなくても何となくニュアンスは伝わる…って事です。

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