表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/462

第127話

道中は不気味なくらい順調。いや、変なトラブルもイベントも不要だけど。「平和ですね」と言ってみたら「紛争地でも魔物の棲む洞窟(ダンジョン)でもないからな。所詮ただの街道だぞ」と返された。



「ミーシャは洞窟(ダンジョン)に興味があるのか? それなら俺の相方を紹介するぞ。アリサなら喜んで連れて行きそうだ」


「相方さんですか?」


「アリサ=ランド、リンド=バーグの奥さんだったよね。今は洞窟ダンジョンに潜ってるハズ」


「そろそろ出て来るんじゃないか?」


「チーム『地底()』じゃったか? ヒト族の表現なら『C級パーティーの地底()』じゃな」


「アリサの所属パーティーは採取がメインだからな。討伐記録が少ないからヒト族の冒険者

ギルドのランク付けだとC級止まりだ」



おっ、新情報だ。



「あの…採取メインで活動出来るものなんですか? 冒険者って魔物を討伐してナンボなんじゃ?」


「まぁヒト族はそうだな。逆に討伐以外の依頼は人気が無くて余るからな。採取依頼をこなしつつ素材を集めに行くのがドワーフ流の冒険者生活だ」



確か、白い空間で覚えておいた知識によると、亜人も獣人もフリーで冒険者稼業は出来るけど、トラブル回避のためにヒト族の冒険者ギルドに登録しておくべき…だったな。



「『地底()』ってことは女性限定パーティーですか?」


「女性五人のパーティーで、リーダーがチーウ=エーツだ」



まさか、そのチーウ=エーツさんって……、



「エーツ四兄弟の末妹にして長女。チーウは俺の妹」


鉱山(ヤマ)系の探索はエーツ氏族がいると格段に安定するんだよ。ちなみにアリサの出身のランド氏族は冒険者の家系だ」


「そうなんですね」


「チーウ=エーツは悪い()ではないんだが、隙あらば『地底()』を『エイドパス鉱山』に連れて行こうとするのが玉に瑕で……」



それってお兄さん(ジョー=エーツさん)と一緒。



「機会があったらボクも採取にご一緒させてもらいたいです」


「多分、チーウが嬉々として『エイドパス鉱山』に連れて行くと思うよ」


「それはちょっと…」


「あそこは面白い鉱石が出るんだよなぁ。それこそ宝石(ジェム)クラスのやつも出る」


「本当ですか!!」


「俺は勧めないが………」


良くも悪くも気になるじゃないか。





夕飯は芋麺炒め、茹で【茄子花芋】、あと水煮ナメコならぬ水煮【スライム茸】を入れた汁物。ポニーは近くで野草を食べている。



「芋麺は携行食として優秀だな」


「お湯に水煮【スライム茸】を入れ、魚醤と【粗相豆】を少々で味付けしたスープに刻み【山葱やまネギ】を入れる。斬新なスープだ」



それはナメコの澄まし汁風です。本当は豆腐も入ったお味噌で食べたいところ。



「で、追熟は?」


「魔法を常時発動させていれば可能なのかのう?」


「少しは赤くなってるみたいです」


「保温の魔道具が一番安定してるんじゃないか?」


「七割熟したところで収穫し、輸送後に使う場所で追熟させるのが流通的によさそうじゃのう」


「追熟出来たところで【血の海ブラッディ・オーシャン】が飲める訳じゃないからな。さあ出発しよう」




ポニーに跨ったらいきなり街道から逸れ、さっきまで草を食べていた辺りに連れて行かれた。


「何か見つけたな」


「どれ…」


パイク=ラックさんが下馬して草むらを確認しにいった。暫くすると長細い根菜を両手に握りしめて戻ってきた。


「【不叫(さけばず)マンドラゴラ】じゃ!! ポニー達、お手柄じゃな」



『対物簡易鑑定』の結果は 


不叫(さけばず)マンドラゴラ】 前世の薬用人参。薬の素材になる。『生命之水(蒸留酒)』に漬け込んでもよい。【運魔(ウマ)】の大好物。


叫ばないマンドラゴラって…(笑) そしてやはり【運魔(ウマ)】の大好物なんだな。


ドワーフの取り分は一本だけにしておいて、残りはポニー達の美味しいオヤツに。その脇でメモを取るホーク=エーツさん。群生地は保護の観点からも記録を取るのが決まりだとか。後で必要分だけ採取にくるんだろう。そしてパイク=ラックさんがトマトの追熟を止め、代わりに【不叫(さけばず)マンドラゴラ】を冷蔵保存し始めた。誰も文句を言わない辺り優先順位は当然ながら薬用人参の方が上に決まっている。



そのまま夜通し並足(ウォーク)で進んだ。眠くならない様に時折、四方山話を交えながら。分かったことは、リンド=バーグさんと奥さんのアリサ=ランドさんは幼なじみ同士で結婚した事だとか、パイク=ラックさんの奥さんは塗料を専門とする氏族の(ドワーフ)だとか、ホーク=エーツさんが独身だとか。後、カーン=エーツさんは商業を手広く手掛けている(ドワーフ)なんだとか。売り出したい商品があったら預けておくと、いつの間にか次の注文を取ってくる凄腕の営業マンらしい。



気付いたら月の姿は無く、東の空が白んできていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ