第122話
酒精のトマジュー割り、二度目なわりには手慣れた仕草で楽しみ始めているぞ。前回と比較して明らかに違うのは、すべてのトマトを一気にジュースにした事だな。何を何杯飲めるか確認してるし。しっかり “ 完熟 ” ジュースと “ 追熟 ” ジュースを分けてる辺り、抜け目ないというか、しっかりしているというか。それほど沢山無いけどどう振り分けて飲むのか気になる。
「では、この【緋茄子】ジュースで楽しもうじゃないか。用意はいいか、野郎ども!!」
「オーー!!」✕ 七人
「今からお前らを『血祭り』にあげてやる!!」
「イェーーーィ!!」✕ 七人
ジョー=エーツさんがノリノリで音頭を取る。今から三人が血の洗礼を受けるのか…(笑)
「いいかホーク、こうやってジョッキの中の冷やしエールに【緋茄子】ジュースを注いで軽くステアだ」
ふむふむと頷きながらレッドアイを見つめるホーク=エーツさん。まだ仕事モードしてるし。
「これが『血祭り』だ。ささ、グイーッとグイーッと。百聞は一飲に如かずってな。レオナルド=ダービーもダン=カーンも味わってくれ」
また変な諺を言っているぞ。これがジョー=エーツさんのオヤジギャグ的なエセ諺なのか本当に使われている諺なのかを知りたい。
グビッ 「んんーー!?」
ゴクッ 「うぉっ!!」
ゴクッゴクッ 「フォーーー!! ヤバい!! 正に『血祭り』だ!!!!」
残り五人はニヤニヤしてるし。五人ともレッドアイを飲みたいんだろうけど未体験の三人に優先して譲ってる辺り、血の沼に落としたいんだろうなぁ。優しいんだか優しくないんだか。
「この芋麺をクレープで包んで揚げたものも美味い」
「これを頬張りながら飲むエールがこれまた美味いぞ!!」
「ミーシャ、これは何と言う料理なんじゃ?」
「芋麺の包み揚げかな?皆さんでいい呼び名を付けて下さい」
酢豚の野菜を硬いものから順に素揚げしながらそう答える。
「簀巻き揚げか?」
「木乃伊揚げなのか」
「 “ おくるみ ” 揚げ? 赤ん坊に着せる産着」
「『スワドル揚げ』がいいんじゃない?」
「では『おくるみ揚げ』で登録しとくー。何年かしたらヒト族が『鉱滓包み』を『討伐証明』って呼んで、『おくるみ揚げ』を『ミイラ揚げ』って呼んでそう〜〜」
あっ、ホーク=エーツさんが酔っ払い始めた。それより餃子と春巻きをヒト族が変な名前にする未来予想は止めて!!
「言われそうじゃな」
パイク=ラックさんもダメ押ししないで下さい。
「兄貴、『血祭り』お代わり!!」
「どれ、儂の割る分を分けてやろう」
「パイク=ラック、いいのか?」
「明日は移動じゃからな。それに三人には《《しっかり》》味わってもらわないといかんじゃろ? 儂は『 血の雨(仮称)』を試せさえすればよいのじゃよ」
「俺は追熟を使ったバージョンの味を確認したいから『血祭り』と『血の海』を一杯ずつ貰うね」
マリイン=リッジさん、試飲するんだな。確認は大事だよね。飲む人で完熟派と追熟派と好き好きが分かれるのかもしれないし、単純に完熟使用が勝つのかもしれないし。
猪肉を二度揚げする。油から引き揚げ余分な油を落としたら、揚げ野菜と一緒にフライパンに移し軽く炒める。あらかじめ合わせておいた【シークワ】の搾り汁、【粗相豆】、煮詰めておいたトマトソース、水飴を『生命之水』少々で伸ばしておく。後は水溶きデンプンも用意。流石に一気に全量は作れないので二回に分けて作るよ。
フライパンの中の酢豚の具に合わせタレを絡める。ジャーッという音と共に独特の酸味のある香りが広がる。うん、これ、町中華屋さんのカウンターで漂ってくる匂いだ。揚げられた猪肉に纏わりつくデンプン衣が軽く溶け何とな〜くトロミがついてくる。具全体に合わせタレが回ったところで味の確認。少し岩塩を振り塩味を足したところで水溶きデンプンの投入!! 下手にフライパンを煽ると酢豚落下の悲劇が怖いので、俺は大人しくかき混ぜる方式を取ります。大事なのはデンプンが過熱されてしっかりとしたトロミになることです。
完成した酢豚を大皿に移してやると全員の目が酢豚に釘付けになる。甘酸っぱい匂いと艶々と輝く甘酢餡。ぶっちゃけ今すぐ俺が食べたい。
「『揚げ猪肉と揚げ野菜の甘酢餡掛け』、まず半分です。すぐにもう半分を作ります。これに合わせるのはキンキンに冷えたエール一択です!!」




