第115話
マリイン=リッジさんに色付いたトマトを全部収穫してもらうことにした。緑がかって見える物は除外だけど。「大丈夫、ちゃんと用意しておくよ〜」って畑で手を振ってたけど、その用意する物はトマトではなく豆苗だと思う。追熟の魔法とかあれば便利なんだろうなぁ…と思う。
ワギュ達の所に行って、「皆おやすみ。明日はよろしくね」と声を掛けてくる。いいよ〜と言った表情で鼻先を擦り付けてくる。気付けば四頭に囲まれていて、甘噛みしてくる子もいる。凄いなアルファルファ効果。ジャーナリストが取材先の原住民と仲良くなるには同じ物を飲み食いする事だ…と言うのを聞いたことはあったけど、正にそんな感じ。
速攻で調理を開始。茹でブロッコリーと、山鳩肉の食べ辛い箇所を茹でて解した物を皿に盛り付ける。【茹で樹樹菜と山鳩肉の盛合せ】と名付けてみるかな。
生姜焼きは焼くだけだし、付け合わせのクレソンと千切りキャベツも準備済。酢豚は角切り猪肉と、後はニンジン、ピーマン、タマネギ代わりのネギ。仕方なくキヌサヤも入れる? 俺的にはヤングコーンとシイタケが欲しかったが、無い物は無いので諦める。パイナップルが無くて良かった。俺はパイナップル不要派です。キノコタケノコの戦いはタケノコ派だけどね。って脱線したわ(笑)
甘酢とか酢醤油ならぬ【シークワ&粗相豆】は食べる直前に合わせよう。食べラーの具も皆の目の前で混ぜる。本当は馴染んでたほうが美味しいんだろうけど説明があるから実演する方が早い。
そしていよいよこの『関所の集落(仮)』での最後の晩餐が始まります。餃子、春巻き、酢豚、なにこの町中華感!!(笑) まぁ生姜焼きもあるし唐揚げもかき揚げもあるから町の定食屋かもしれないが。なんか打ち上げっぽくていいよね。その前に報告会だな。
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「では報告と申請を。先にミーシャを認定しちゃおう。折角七人いることだし」
七人???
「七人って何かあったか?」
「兄貴、大丈夫? 監査官と七人のドワーフが同席してれば即時認定出来るやつ!! 開発関係は審査と確認があるから無理だけど、養子や婚姻の即時認定は可能だってやつ」
「あ~~、そんなシステムが有ったな。滅多にやらないから忘れてたわ」
「マジで!? てっきり即時認定の為に三人呼ばれたかと思ってたのに……」
「スマン、素で気付いてなかった」
「とうでもいいから認定しちゃおう」
「異議なーし!!」✕七人
皆チャラいというか軽いな。きっとさっさと終わらせて酒が飲みたいだけなんだろ?
「これでミーシャに庇護氏族名が付いてるハズ。兄貴、鑑定してみてよ」
【ミーシャ=ニイトラックバーグ:庇護養親:パイク=ラック 庇護保証人:リンド=バーグ】
「出たな。ミーシャ=ニイトラックバーグ、おめでとう」
「ありがとうございます。パイク=ラック大爺ちゃん、リンド=バーグおじ様、これからもよろしくお願いします」
「ミーシャ、おじ様は止めろ」
婚姻で親族が増えたとかではないので、前世の日本語としてどの『おじいさん』『おじさん』表記になるか分からない。まぁ好きに呼びかけていいそうなので気にしないことにしよう。
「では、リンド=バーグお義兄様で」
「…………、不許可」
「おじちゃんとかおっちゃんとかオッサン呼ばわりされないだけいいんじゃない?」
マリイン=リッジさんは相変わらずブレない人だった。




