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5 県軍人


 全長五百メートル以上の空飛ぶ戦艦、ネクサス表面は様々なガイドセンサーや砲塔ででこぼこしていた。舷側には血のような赤い文字で認識番号と政府軍の紋章が描かれている。ネクサスは上から見ても横から見ても矢尻の形で、艦橋や武装などは前方に集められている。後方にあるのはジャイロコプター用の飛行甲板と安定翼だけだ。

 海に浮かぶ戦艦が船の上に砲を並べるのに対して、空飛ぶネクサスが船の下部に砲を並べるのは道理だ。主砲の装甲回転砲塔は座布団のように平べったいので、収納式の脚を使った着陸の邪魔にはならなかった。

 そのネクサスに随伴するように和歌山県軍ジャイロコプターが飛んでいたが、こちらは小さ過ぎて地上の人間には気付かれることすらなかった。和歌山県軍のジャイロコプターはネクサスの表面をなめるようにして追い抜いていく。

 別にネクサスのクルーを驚かせるためにこんな真似をやっているのではない。大阪の対空陣地からの指示だった。彼らの、監視する飛行対象を一つでも減らして楽しようという算段は見え見えだ。

 それにジャイロコプターの操縦席のクロノトン伍長だって、からかうなら政府軍のネクサスよりからかいがいのある奴を探すはずだった。

 機長席に座る和歌山県軍人イルヒラム曹長は剃り上げた頭に手を置きながら、ゆっくりと閉じていたまぶたを開いた。

 政府軍はいかなる県の軍よりも高飛車な上に、ユーモアというものを理解しない。そして百戦錬磨で冷静沈着なので、あの巨大なネクサスが突如飛行能力を失って、眼下の大地に地響きとともに衝突したとしても、眉一つ動かさないだろう。彼はそう思った。

 パイロットのクロノトン伍長はひどく物静かな、口ひげを生やした痩せた男で、彼を見たものは誰も彼を軍人と考えなかったし、信じようともしなかった。

 ジャイロコプター内のもう一人の男、ウォンニ伍長は機体から身を乗り出して、武器ラックから吊り下げられたスピーカーをスパナでいじっている。ウォンニは頭上から強大な手のひらで加圧されたような体型のがっしりした奴で、それほど手先が器用でもないのに、やたらと機械を改造するのに熱を上げていた。

 武器ラックには本来なら対戦車ロケットや20ミリ機関砲がつけられるはずなのだが、和歌山県は平和な県のうえ、そういったものの維持費は高くついた。何年も前に、和歌山県軍は所有する飛行機械や車輛の全てから武装を取り除いている。

 このジャイロコプターにはみかん農場のスピーカータワーの一つから拝借してきたスピーカーが取り付けられていて、ときにそれは大音響の音楽を流し、ジャイロコプターの存在を際立てていた。

 ジャイロコプターはネクサスの突き出た艦橋をかわすために機体を大きく傾ける。ウォンニの横に置いてあった工具箱が床をザーッと滑っていき、大きく開け放たれた扉から落下していった。

 工具箱はネクサスの数ある砲座の一つにつっこみ、衝撃で開いた工具箱からネジやボルト、ナットなどが暴風雨のようにほとばしって、ネクサスの砲兵が悲鳴を上げて逃げ惑った。

 さながらクレイモア爆弾だな。イルヒラムは思う。

「よし、直ったようやな」

 ウォンニが額の汗を拭いながら言って、プラグをレコード・プレイヤーにつないだ。ターンテーブルで回るレコードのでこぼこした黒い表面にカートリッジの針を慎重にあてると、撥弦楽器を主役にしたバラードがスピーカーから大音響で流れ出した。

「くそ! サヴォウノ・ルゾンのバラードなんか流しやがる!」

 機長席のイルヒラムは拳で風防ガラスを殴りつけ、防弾処理済みのはずのそれには蜘蛛の巣のようなひびが入った。

 このような類の音楽を聴くと、イルヒラムの胸は毒ガスを吸い込んだように悪くなるのだ。

「僕たちがあれを嫌っているから、ウォンニはあればかり流すのだろうね、きっと」

 操縦席のクロノトンが振り向いて言った。

「なに言ってんです。この雄々しい調べに心の弦を震わせられないなんて、全く信じがたい人々だ。半島戦争の後遺症であんたらの精神の高次な部分は、まとめて腐り落ちてしまったんでしょうね」

「ほう? ネクサスを見ろよ、政府軍の連中だってこの音楽に怒り狂ってるようだぞ」

 イルヒラムは言ってやった。ネクサスの砲座の一つで、体の各所からナットやネジを生やした、おかしな男がこちらに向かって拳を振り回している。

「最近流行のアメリカのあれ、なんといった? ピートルズだ。ピートルズのレコードとか買ってこいよ、ウォンニ」

「イルヒラム曹長、ああいう常人の理解を超越した芸術形態の音楽、分かるんすか?」

 ウォンニは尋ね、それからイルヒラムが答える間を与えず自分で叫んだ。

「無理だ! 無骨な軍人イルヒラムが理解できるのは物質的なもののみ! その目は破壊する標的を探し、その指は引き金を引くためのみに存在する! そんなイルヒラム曹長がピートルズの音楽を聴いて招霊術を行うとどうなるかって? 地球におかしなものが一つ増えるだけすよ!」

 ウォンニはギリシャかメキシコの悲劇の主人公のように身を振りかざし天を仰いだ。

 そして真顔に戻って、

「ピートルズは無しです」

「なに一人で勝手に結論に至ってるんだ」

 イルヒラムはうなった。操縦席ではクロノトンがヘルメットに包まれた頭を抱え、それを計器類にがんがんぶちあてていた。

「このひどい音楽をどうにかしてくださあい!」

「二日酔いに悩む男が操縦席にいるぜ。ひっひっひ」

 ウォンニが言う。

「違う! クロノトンの方が正論だ! サヴォウノ・ルゾンの曲はどれもひどいが、今日のは特別にひどい! 辛抱ならん、ウォンニ、音楽を切れ!」

「サヴォウノ・ルゾンは和歌山県出身の歌手なんすよ。まったく、あんたらには愛県心ってものはないのかね」

 イルヒラムは足下から空き瓶を拾うと、窓から放った。それはスピーカーにがつりとぶち当たり、聴くに堪えない騒音を発するのを永遠にやめた。スピーカーがひどく損傷したのを見ると、ウォンニはぎゃあっと悲鳴を上げ、機体後部で丸まって滂沱と涙を流しはじめた。それを見て、イルヒラムは体内の寄生虫に苦しむ野獣を想像する。



 大阪航空軍基地の広大な発着場では周りの県の県軍から集められた飛行機械が、乾いた体を灼熱のアスファルトの上であぶっていた。

「なんだか混んでるね。ま、うちの県のためにこんなに周りの県が出兵してくれるとは、ありがたい限りだけど」

「親切なご近所だ。見返りは今年の冬に採れるみかんか、ええ?」

 楽しげな部下二人に対して、イルヒラムは眉間にしわを寄せていた。

「すこし多過ぎやしないか? 和歌山県の暴動ごときでこんなにも集まるものか?」

「最近平和が続いているから、どこの県でも軍は暇をもてあましてるんだよ、きっと。おかげで僕の機は駐機する場所がないんだけどね」

 クロノトンは足下のキャノピーガラスを通して、わずかながらジャイロコプターを停めれそうな隙間を見つけた。

 イルヒラムは、頭上をさっきのネクサスが通過していくのを見上げた。

 ネクサスがその巨体の下部から、最近東京に築かれた巨塔の基部の太さにさえ勝るという、しっかりした鋼鉄の足を地面に伸ばす。

 空飛ぶ戦艦がそうして、大阪航空軍基地に着陸し始めるに及んで、表情がこわばった。

「馬鹿な!?」

 ネクサスが着陸しようとしている基地外縁部、そこでネクサスの邪悪な兄弟たちがずらりと待機していることに気付いたのだ。

 禍々しい姿の黒い政府軍のネクサス。シルエットだけ見たのなら見分けはつくまいが、目をこらせば一隻一隻、微妙に形状が異なり、しかしどれも恐ろしく力強い見た目だ。それはオーダーメイドのためというよりかは数百年にわたる使用と改造の結果だった。

 さきほどのネクサスがその隊列に加わった。総勢、二十四隻。

「なんて数だ!?」

「これほどのネクサスが集まるのは半島戦争以来じゃないすか? なんかイベントでもあるんでしょうかね? ひひひ……」

 ウォンニは陽気に笑って、それからイルヒラムの顔から言わんとすることを読み取った。

「……まさか、うちの県のために?」

「他にこの辺でイベントなんてあるか?」

 その間にクロノトンは三重県軍の武装グライダーと奈良県軍の空挺装甲車の間にジャイロコプターを強引にねじこんでいた。

 ジャイロコプターの上でびゅんびゅん回る鋼鉄の刃から命を守ろうと、他の県軍の兵士があわてて退避する。

「ジョビ大佐には私が会う。おまえ達は離陸準備をして待っていろ」

 イルヒラムはそう言い残してジャイロコプターから飛び降りた。



 基地内の司令本部ビル。

 『和歌山県遺伝子強化人間対策本部』と書かれた扉を蹴り開け、イルヒラムはどどどどっと部屋にかけ込んだ。

「ジョビ大佐!」

 ジョビ・ルゾン大佐は椅子にどっかり腰を沈め、両足をテーブルの上に置いてくつろいでいたが、イルヒラムが嵐のようにやってくると、驚きのあまりワーッと叫んで椅子から転げ落ちてしまった。

「イ、イルヒラム曹長。よく来た」

「一体何が起こっているのです? 外の軍勢は一体? 我らの県の暴動を沈めるには多過ぎる兵力です! そして、なぜ政府軍が? ネクサスが? 百姓一揆や地方豪族の反乱では政府軍が動くことすら珍しいのに、若者が暴動の気配を見せた程度で、北京やモスクワを攻略できるほどの大軍が集まるのは異常です!」

「そんなにいっぺんにきかれても困るのだが……日本中の軍人がうちの県のみかんを食べに集まったという可能性はないか?」

「いまは夏ですからね!」

「ふむ」

 ジョビ大佐は椅子に座り直し、居ずまいを正した。

 黒い肌に紫色の髪という彼の姿は、およそ和歌山県人風ではない。何らかの医学的特性かもしれないし、あるいは異人種の親を持つのかもしれない。それにも関わらず、彼が大佐という地位にて、このような県の重要な問題を扱っているのは、彼の有能さか、あるいは豊富なコネの備蓄をほのめかしていた。

 彼はゆっくりと瞬膜のようなまぶたを開いた。

「政府はどういったわけか、この事件を非常に重要視してくださっている」

「なぜでしょう? 単に間もなく死ぬ運命にある若者達が暴動を起こすかもしれない、というだけだというのに」

「それは分からない」

 ジョビ大佐は書類入れの引き出しを開いた。そこには様々なファイルと、和歌山県産のみかんの箱があった。ジョビ大佐はしかめっ面をして、ファイルの一つを手に取る。

「もしかしてら、遺伝子強化人間という単語に政府は興味をおひかれになったのかもしれない」

「それは大いに可能性のある推論に思えますね」

「そして、理由がどうであれ、政府が本腰をお入れになるのなら、我々和歌山県軍もそれに合わせたより能率的な動きができるようにならねばならないのだよ、イルヒラム曹長」

 ジョビ大佐は机の下から大形の通信機を取り出した。イルヒラムはそれを一目見て、おおっ、と感嘆の声を上げた。

 最新モデルの戦域通信機だ。音声のみならず、磁気テープの内容さえ転送できる。その出力は本州全域をカバーし、力強い電波は地底からの通信をも可能にする。みかんの果汁を用いた自己発電能力さえも持っていることだろう。最新の科学の産物だ。

「これを持って君は和歌山県に戻らねばならない。君は遺伝子強化人間の暴動に際したら、私の指示に従い、困難な任務を達成してほしいのだ」

「和歌山県軍の兵士には私よりも暴動鎮圧が得意な兵士がいると思いますよ。私の専門は対テロリスト駆逐と市街戦です」

 イルヒラムが言うと、ジョビ大佐は大きく溜め息をつき、

「イルヒラム曹長、恥ずかしいことだが和歌山県軍はその規模の小ささのせいで、暴動鎮圧の専門家というものを持たない。だが、君なら上手くやれるだろう。君の半島戦争での活躍なら私も知っている」

「十年以上も前のことです」

 イルヒラムは朝鮮半島での朧げな記憶を呼び覚まそうとした。だが、それらの大半は帰国後に受けさせられた治療のおかげで人工的な忘却の彼方にある。

 半島戦争より前のことは思い出せる。戦争の後のことも何の問題もない。

 ただ、半島戦争中のことだけが、ぽっかりと奇妙に欠落していた。

 おかげで、自分の活躍の話は、他人の活躍の話のようにイルヒラムに感銘を与えなかった。

「頼むよ、イルヒラム曹長。これは君にしかできない仕事だろう。それに、他県の軍や政府軍も全力で君をサポートしてくださることだ。和歌山県の将来のためにやり遂げてくれ」

 いまのイルヒラムは和歌山県への愛県心からのみ構成される県軍人なのだ。

 彼はジョビ大佐の言葉を味わい、そしてうなずいた。

「いいでしょう。やりましょう」



 イルヒラムと彼の二人の部下の乗るジャイロコプターが混み合う駐機場を縫うように進んでいく。着陸のときにはヘリコプター同様、垂直着陸が可能だが、離陸の際には滑走路を必要とした。

「戻るぞ、和歌山に」

「へいへい。このジャイロコプターは気軽に隣の県に行ったり来たりするためのタクシーというわけなのだね」

 クロノトンはつぶやいて、滑走路に立ちふさがる邪魔者に向けてクラクションをブーッと鳴らした。

「おおおお、最新モデルの通信機! これでもう、みかん農園のスピーカーをかっぱらわずに済む!」

 嬉しそうに叫んで、ウォンニはイルヒラムの足の間から通信機をかっさらっていった。

「おいおい、それまで改造するのかよ」

「やめられません。なぜ俺が機械をいじるのにはまっているか、分かりますか?」

 ウォンニはどかっと兵員用座席に座った。

「俺の人生は政府に存分にいじり回されたからです。朝鮮半島で戦ったのも、和歌山県民のことを思えばのこと。それが今はどうです? 日本は富んでいっているのに、うちの県はどうです? 政府の作った死すべき子供の始末を押し付けられ、俺たち県軍に至っちゃ、武器もそろえられない! ひっひっひ!」

 ウォンニは空襲警報のような笑い声を上げた。その様子は控えめに見ても、異様だった。狂気を感じた。

 だが、考えてみれば、ウォンニは普段からどこかおかしかった。

 半島戦争で溜まった狂気を、自我の一部に置き換えているのだ。クロノトンと違った意味で、こいつはタフな部下だった。

「そういうわけで俺は、政府が俺をいじったように、機械をいじりまくってやるのです。分かります? ほら、精神学用語でこういうのなんっつうんでしたっけ? フロイトの」

「知るか。我らの指導者にして、よき理解者たる政府に不敬なことを言うもんじゃないぞ。それに、どれほどみずぼらしくても、我らは県を守っているのだ。誇りをもつのだな」

 イルヒラムは言葉を終えた。もともと言葉で部下を従わせるスキルは持っていない。正しい行動をすれば、部下はついてきてくれるものだ。

「へいへい。心の片隅にとどめておきますよ。じゃ、通信機の改造を始めます」

「任務に支障がなければなんでもいい」

「もちろんですとも。イルヒラム曹長、びっくりさせてあげますよ」

 そう言って、ウォンニはにやにやと笑った。



 ジョビ大佐は和歌山県軍のジャイロコプターが飛び去るのを窓から見届けた後、再び椅子へと戻った。

 だが、くつろぐ間もなく、

「ジョビ大佐」

 扉が傷口のようにじわりと開いて、二人の人間が入ってきた。その声はあまりに冷たく、無機質に感じられ、ジョビ大佐は驚きのあまり椅子の上で縮み上がったかのような動作をする。

 入ってきたのは、銀色の髪をあみだくじのように複雑な形に編んだ若い女と、口髭を蓄えた初老の男。

 彼らの制服は彼らの正体をはっきりと表していた。

「PCOの方々ですね。お待ちしていました。PCOの飛行機がやってくるのには気付きませんでしたが、隠密ステルス旅客機でいらしたのですか?」

 ジョビ大佐は尋ねた。

「私達は今到着したネクサスに便乗していたのです。私はクジPCO調整師」

「わしはハチノヘPCO警備主任」

 ハチノヘは痩せてはいるが、骨格のしっかりした体の脇に、金色のサーベルめいたものを吊るしている。片方の目は眼帯で隠されていたが、日焼けした顔の前部に陽気な笑みを浮かべ、上部にはアメリカの牛追いの男がかぶるような白い帽子をかぶり、着物の上にPCOの制服を羽織っている。伸ばした髪も、口髭も真っ白だ。

 妙な男だった。

 一方、クジという女は真面目一徹の技術官僚といった雰囲気で、すでに頭の中にジョビ大佐と和歌山県と今回の事件に関する相当数のデータを蓄積していそうだ。腰になにか銃を装備しているようだが、彼女の役割から考えるに、それはアクセサリのようなものだろう。ハチノヘの金色の光り輝くサーベルよりかは良識といったものを感じさせるアイテムだ。

「私は和歌山県軍大佐ジョビ・ルゾンです。あの有名な歌手、サヴォウノ・ルゾンは私の弟です」

 ジョビ大佐はさりげなくその点を強調したが、PCOの二人は相づちを打つだけだった。和歌山県の外ではサヴォウノ・ルゾンはあまり有名でないのかもしれない。

「今回の作戦に政府軍のみならず、PCOにまで関心を示していただいて、その喜びは言葉に表せられないほどです。なんといっても、最近の日本の経済成長はPCOの助けなしではあり得ませんでしたからね」

「恐縮です。ただし、我々PCOはゆるやかな経済的協議組織に過ぎず、実働的な戦力というものは持ち合わせていません」

「それは、我々和歌山県軍も似たようなものですが、ではなぜ和歌山県に……?」

「仕事だよ」

 ハチノヘが微笑の顔で言った。クジもうなずき、

「今回の遺伝子強化人間の暴動という事件は、非常に特異なイベントですからね。学べることは少なくないと私達は考えています」

「素敵な心がけですね。でも、正直、見ていてそう面白いものかどうかは分かりませんよ」

 ジョビ大佐は悲しげに言って、椅子に体重を預けた。

「遺伝子強化人間と言ったところで、人間となんら見た目に変わりがないのはご存知の通り。たとえ激しい暴動が起きるにしても、和歌山県軍はそれに備えています。おそらく、今年のみかんの生産は落ちず、シフトに変更すらないのでしょう」

「そうですね。まあ、私達の予測外のことが起きる可能性は常にありますし、私達は和歌山県軍になんらかのアドバイスと、技術的な援助を施すことができるでしょう」

「心強い限りです」

 ジョビ大佐は破顔して言った。

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