24 破砕
時空はもろい。
ガラスの中、一つの彎曲した構造の原子が、宇宙を作り出しているプール線をぼかすスピードで回転していた。
プール線は宇宙の中心から離れれば離れるほど希薄になっていって、この惑星上ではもはやその存在は無にも等しい。
だが、増幅させる手ならあった。
PCOが原理は知らねども、起こりうる効果は知っているキャタリストが、百八の辺、二十六の面、八つの超面を持つ図形の形とって、彎曲原子をとりまく。新たな力場に驚いた原子はエネルギーを体内に溜め込むだろう。だが、この時点ではキャタリストの方が力は上だ。
音高く原子にヒビが入った。
たちまち原子は安定性を失って暴走を始めた。原子の周りの、キャタリストや、ガラス、空気、プール線で織られた世界などがまとめて内破する。
そうして周囲の次元を吸い込んで、宇宙の線に波紋を投げかけた後、今度は打って変わって純粋なエネルギーとして膨張した。
世界の繊維がほどけていく。
全ては飲み込まれた。
その衝撃波たるや、凄まじかった。
最初の内破で和歌山県の表土はひっくり返され、形あるものは、形ないわけの分からぬものになってしまった。
そして十億分の一秒後に生まれた膨張で何もかもが巻き上げられ、空中で消滅していく。
秒速十キロメートルを越える速さで四方に膨らんでいく、光と熱の球体に全ては飲み込まれていった。




