13 ハチノヘとクジ
「4フレーズ・スーパー・ウエポンは純粋にこのリビルダーの基地を破壊する為だけに、我々PCOがサルベージした兵器です。その熱は一瞬であらゆる物を蒸発させ、なんら有害な汚れを残さない。リビルダーは反応する暇もないでしょう。生物化学兵器より遥かに洗練された手であると、我々PCOは誇りを持って確信しています」
ジョビ大佐はそれを聞いて、おおっと感嘆のうなりを上げ、上半身をのけぞらせた。
「夢のような爆弾ですね!」
「いま、政府軍の特務爆撃機が搭載して高空で待機しています。ネクサスの布陣が完了すればすぐにでも投下するつもり。……我々のこの努力が日本のいまの、他国に占領されているという現状を改善し、そして程度の低い二流の国という地位から引き上げてくれることを信じています」
「だとしてもーー」
ジョビ大佐はニコニコしながら言う。
「所詮は爆弾。人間味のない一瞬の閃光で和歌山県は焦土と化してしまうのでしょうね」
「残念ながらな。他に手はあるまい。この県のみかん産業も終わりだ」
クジのかわりにハチノヘが言った。
「そうですね。実に残念なことです」
ジョビ大佐は笑って言う。その笑みは実に自然な物に見えた。
自分の生国が焼き払われようというのに、どうしてこの男はなぜ笑っていられるのか。クジは分析しようとする。PCOの技術の過小評価? それとも和歌山県の利益よりも日本全体の利益を優先しようという、崇高な精神?
すると、ジョビ大佐は、クジの心の中の疑問に自ら答えようとでもいうのか、
「ま、私はみかんよりリンゴが好きですし」
彼はそう言い、なにか赤くて丸い物を懐から出して、自分の口に詰め込んだ。