エピローグ
こにゃにゃちわ。クロネコです。
僕の作品を開いていただきありがとうございます。
処女作になりますのでまだまだ勉強不足な所があると思いますが精一杯頑張りますのでこれから末長くよろしくお願いしますん。
〜エピローグ〜
ジリリリリリリリリ!!
バン!!
ガチャン!ドゴン!ガシャーーン!!
「くそ、またやってしまった…」
そう言うと俺は机の下に無惨に散っていった37代目の目覚まし時計を足でまとめて、真っ黒でボサボサの髪を掻き上げる。
寝落ちして消し忘れたモニターを消して手探りで机の上にあるはずのメガネを探していると、一階にいるウチの鬼というか神というか。一般的に母親と分類される生き物から怒号が飛んできた
「くおらぁああああ!!またやりやがったなイクトてめぇ!!目覚まし時計もタダじゃねぇぞ!!降りてきて早く朝飯食え!!!」
普通の家庭ではあまり聞くことはない声量、内容、気迫だ。うむ、流石と言わざる負えない。俺がこんなにも冷静なのは皆さんもお気づきの通り‘いつも通り’だからだ。…皆さんって誰だ
「今降りるよ。母さん」
軽く返事をして見つけたメガネをかけて、パパッと制服に着替えて一階へ降りる
「おはよう。母さん。父さん」
「……」
「イクト!もう目覚まし時計買ってやらないからな!あんたも高校3年生なんだからバイトでもして自分で買えよ!」
相変わらず元気な母さんと、無駄な事は一切喋らない父さんが一足先に食卓に座っている
「母さん。ゲームの大会で優勝した賞金は全部家に入れてるじゃんか。それで勘弁してよ」
少ししたり顔でそう言うと母さんは、ふんっと言って他所を向いてしまった。そう、俺は超が付くほどゲームが上手い。アクション、FPS、格ゲーはもちろんRPGも網羅している。大会で優勝するのも稀じゃない。お陰で視力はメガネがないと1メートル先の物体も視認出来ないほど…後悔はしてないけど
「…おい。イクト。この前渡した我が社のRPGはクリアしたのか」
新聞を広げてコーヒーを啜りながら目も合わさず父さんが話しかけてきた。父さんはゲーム会社の社長らしい。詳しい事は分からないけど週一でソフトを渡してきて、一週間でクリアしろと言ってくる。普通だと無謀な話だが、小さい頃からの日課としてゲームをさせられている俺からすれば一週間は貰いすぎてるくらいだし、まだ世に出てないゲームをクリアする快感は俺にしか味わえない
「あぁ父さん。もちろんクリアしたよ。今回も条件通り主人公はレベルMAXで」
そう。父さんはなぜかレベルをMAXまで上げてからクリアさせてくるんだ。レベリング自体は好きな作業だし別に良いんだけど、父さんの渡してくるゲームはレベル上限が1000とか9999とかなんだよな。最効率を求められる感じは悪くないけどデバッグは社員にさせれば良いのに。
「そうか。クリアしたか。もうお前にゲームを無理にさせる事はない。学校から帰ったら話がある」
そう言うと残ったコーヒーをグッと飲んで新聞をたたみ、家を出てしまった
「…イクトあんたなんか怒らせることしたの?」
心配そうに母さんが聞いてきた
「いや、心当たりはないよ」
首を振ると母さんもはぁとため息をつきながら父さんと俺が食べた食器を片付け始めた。
ピンポーンガチャ!
「おはよーございまーす!今日も迎えにきましたー!」
インターホンとドアが開く音がほぼ同時に聞こえた。こんな非常識な事をできるのはあいつしかいないだろうな
「あのなぁ。幼馴染っていうのは何でもしていい仲って訳じゃないんだぞ。ヤエ」
「あら、ヤエちゃん。いらっしゃい」
「おはようございます!おばさん!ほら、イクト行くわよ!」
少し暗くなってた空気を払拭してくれたヤエに少し感謝しながら朝の挨拶を済ませ、鞄を持って家を出る
「「行ってきます」」
「行ってらっしゃい」
こんな何気ない会話が母さんとの最後の会話になるとはこの時の俺は夢にも思ってなかった
キーンコーンカーンコーン
放課後のチャイムが聞こえて目が覚めた。あれ、もう学校終わったのか。まだぼやけている目を擦っていると聞き覚えのある声が近づいてきた。
「あんたねぇ。また朝までゲームしてたの?」
「ヤエか。あぁ、今週は課題で出されたソフトがちょっと難しくてね」
「課題ねぇ。まだそんな事してるんだ。ちょっとっていうか、だいぶ変わってるわよねイクトのお父さん」
「まぁそう言うなよ。あまり喋らない父さんとの大事なコミュニケーションなんだ。ゲームを通して会話してんの。うちの親子は」
そんなたわいも無い話をしながら教科書をまとめて学校を出た
「あ、そういえば父さんが今日話があるって言ってたな。課題も先週のやつで最後だって。なんだろうな」
下校中にふと朝の会話を思い出して何となくヤエに呟いてみた
「あのお父さんが話?全然想像つかないわ…。あ、でも課題が最後って事はこれからいっぱい外で遊べちゃうんじゃない!?」
ヤエが少しウキウキしながら話している
「いや、課題がなくなったら今以上にゲームに専念できる!去年の倍は大会にでるぞ!」
目をキラキラさせながらグッとガッツポーズして言うと
「はぁ…。こんのゲームバカ…」
呆れてものを言えなくなった幼馴染が少し寂しそうに俯いた
そんなこんなで家に着くとすぐ異変に気づいた。父さんの車がある。いつも19時くらいに帰ってくるんだ。それより早く帰ってきた事はないから不気味だ。話があるって言っていたけどその為に早く帰ってきたのかな。不安だな
ガチャ
「た、ただいまー」
少し警戒しながらドアを開けると食卓に座って俺を待ってる父さんがいた。少し俯いて表情が見えない。怖いな
「早く座れ。全て端的に話す。時間がない」
腕を組みながら呟くように父さんは言った
「う、うん。わかった」
急いで靴を脱ぎ捨てて鞄を玄関に置いたまま椅子に座る
「イクト。これから話す事は全て事実だ。時間がないから質問は全て話した後に一つだけ受け付ける」
「わ、わかった」
「まず一つ。この今生きている現実は全て今日で終わる。世界が終わるんだ。」
「…え?」
まてまてまて。父さんは何を言ってるんだ?世界が終わる?そんな訳ないじゃないか。もしそうだとしても何で父さんがそんな事知ってるんだ。頭が情報を処理しきれない
「まぁ聞け。世界が終わると言ったが死ぬ訳ではない。全てが仮想現実に切り替わるんだ。詳しい事を話す時間がないが、父さんの会社は裏にある組織が絡んでる。‘そういう技術を持っている’組織だ。そしてこの会話ももちろん聴かれているだろう。二つ。イクト。お前に毎週課題としてゲームを渡していたのには理由がある。仮想現実でステータスとなるのは、今までクリアした事のあるゲームで得た経験値だ。詳しくは聞かされてないが盗んだデータに書いてあった事だから間違いない」
無理矢理言われている事を噛み砕いて頭に詰め込んでいるが冗談にしか聞こえない。だが父さんが嘘をつくイメージが無く、今まで一緒に生活してきた父さんがこんな変な冗談を言うわけがないというのが分かる。つまり父さんはその仮想現実で有利に生きる為に俺に課題を渡していたって事か。
「お前と母さんを守る為にあまり家で喋ることが出来なかった。どういう会話が組織の逆鱗に触れるか分からなかったからな。特にお前はゲームに精通しすぎている。迂闊に話すと消される可能性があった。すまない」
「え、あ、いや、謝らないでよ。父さん」
「あぁ。そして最後だ。おそらくお前はもう世界最強レベルだと思う。負けるな。絶対に」
父さんは組んでいた腕を机の上に置き、血が出るほど拳を握っていた。こんな感情的な父さんは見た事がない
「負けるな?何に?」
「『全て』にだ。イクト」
「ん?」
「楽しく生きろ。悲しむな。笑え。お前が生まれた時世界が虹色に見えた。俺の息子として生まれてきてくれてありがとう。今まですまなかった。元気でな」
「ど、どういうこ」
パリーン!
どういう事と聞く前に窓が割れ、それと同時に父さんが倒れた。胸あたりから大量に血が出ている。
「父さん!父さん!」
すぐさま駆け寄った。焦って名前しか呼ぶ事が出来ない俺の頬を血だらけの手で撫でながら父さんが消え入りそうな声で言った。
「やはり何かしらの方法で聞かれてたんだな…。覚悟はしていたんだ。大丈夫だ。あぁ、質問を一つ受け付けると言ってたな。おそらく長く持たない。」
今まで見た事のない優しい表情の父さんを前に絞り出したような声で聞いた
「父さんは…僕と母さんを…あい…してた?」
「ははっ。そんな事か。俺は仮想現実についての質問を受け付けると言ったんだがな。お前も大人びたような態度だがまだまだガキだな。あぁ。愛してる。今もこれからもずっと。」
そう言うと父さんは俺の手の中で動かなくなった。あぁ現実だ。夢じゃない。何で父さんなんだ。何で死ななくちゃならないんだ。そんな疑問を頭の中で反芻していると。外であり得ないくらい大きな音で放送が始まった。
『あーー。えーー。マイクテストマイクテスト。こんちわー聞こえますかー?日本の皆さん。え?音量デカい?もうちょっと早く言えよぉ。あーあー、このくらい?おっけいおっけい。えーっと改めまして日本の皆さんこんにちは。長々と話すの面倒くさいのでサッと話しちゃいますねー。えーっと。皆さんが生きてる現実は今日終わります。目が覚めるとそこは新しい世界でしょう。みんなゲーム好きでしょ?要はそうなるの。簡単でしょ?』
腹が立つほど軽口の放送が外で響く。さっき父さんが言っていた事だ。なるほど。こいつが組織、親の仇か
『僕も放送任されただけだし詳しい事分かんないんだよねぇ。とりあえず僕の仕事終わり!!じゃあ流しまーす。あ、耳塞ぐとか無駄ですのでぇ』
そう言うと外のスピーカーから爆音で不快な音が響き出した。それと同時に徐々に意識が遠のいていくのがわかった。勝手に閉じていく瞼から笑顔で寝ている父さんを見ながらとうとう意識が途切れた。
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