神様とO・HA・NA・SHI、司祭とお話し
祈祷室はそれ程広くはなかったが、正面にある神像が部屋の天井まで高さがあり迫力があったが、天界で会ったじじぃではなく女神なのが納得いかない。
神像の前に祈祷をする為の場所がある。
ぼうっと眺めているとシスタージェシカから声が掛かった。
「クラウド様は聖印はお持ちですか?」
「いいえ、持ってません。」
聖印?なんだそれと思っていると祈禱台と思われる台の引き出しからケルト十字の様なシンボルの付いたからネックレスの様な物を取り出した。
「こちらにいらして、これを首にかけて下さい。祈りの方法は私の真似をして下されば良いです。」
シスタージェシカが祈禱台の左側に膝をついて、両手で聖印を握り少し俯いて、おでこに聖印を軽く付ける。
祈禱台の右側でその姿勢を真似すると
「祈りの言葉を唱えますので、私の後に続いて唱えて下さい。」
「はい。」
シスタージェシカの真似をしながら祈りの言葉を唱えていると
「元気かだの?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい、じじぃ!神託とか創造神の加護って一体なんだ?聞いてねぇぞただでさえ、記憶喪失とか新しいステータス、スキルで大騒ぎなのに騒動がデカくなるだろ!」
と捲し立てる
「気に入ってもらえただの?ワシからのちょっとしたプレゼントだの?」
「いらねえよ。」
「その神託と加護のおかげでこうして話が出来るんだから良いんだの。」
「それはそれはそうだが、付けるなら初めに言えよ!」
「まぁ、いいじゃない。おっと、そろそろ時間だの。
祈りを捧げてくれればまた会えるかもしれないんだの。
ではだの。」
反論しようとしたら瞬間、シスタージェシカが祈りを捧げる言葉が聞こえて来たので、戻って来た様だ。
シスタージェシカの真似をして祈りを捧げながら心の中ではじじぃに対して悪態をついていた。
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クラウドが祈り捧げている頃、パウロ司祭の執務室ではパウロ司祭とクラウドの両親が話をしていた。
「アインズ様、相談というのはクラウドくんの今後についてです。
将来、どの様な道に進むか分かりませんが、早期に教育を始めませんか?
彼も兄二人を同じように王都の学園に行くものと考えています。
しかしながら彼は3男ですので、成人後、の進路を広げてあげたいと考えます。
そこで、神学の基礎を学ばせてあげたいと考えます。」
この世界、家を継ぐのは長男である事が普通。しかも長男は、学園を卒業して王都で修行を始めた事はパウロ司祭も知っていた。
3男のクラウドは、家で兄の手伝いをするか、家を出て独立する事になるのが普通の流れだ。
「それは、教会に入ることでしょうか?」
「彼が望めば、それも一つの道でしょう。
ですが神学を学んで、回復魔法が使える様になれば、将来、商隊での旅や独立して行商人になったとしてもメリットはあれどマイナスにはならないと考えます。」
パウロは、独立してもクラウドは商人になる前提で話を進める。
「なるほど。クラウドの将来にとってそれは良い事でしょう。
しかし、教会に入らずに教育となるとその、御寄進の方が少々」
アインズは言葉を濁した。
確かに、神学が学べるのは有り難い事だが、それなりの金額を積むことになる。それも、成人するまで10年だ。
神学を学ぶとなると、寄進の他にも、服装や、教材、教師の月謝など様々なお金が掛かる。
いくら商会長で市井の中では裕福な方であっても躊躇する金額になるのだ。
「いえ、クラウドくんは、神託のスキルと創造神の加護を賜りました。
私は、教会に入らずとも神学を学び市井に神の恩寵がある事が重要と考えております。
ですので、寄進と月謝については教会の持ちとなる様、上とかけ合います。
でなければ、教会ばかりが利を得てしまいます。」
「そうであれば、私として嫌とは言えません。」
「ありがとうございます。この件を上に話した場合、上層部がステータスの確認に来る事が予想されます。その時にご協力頂ければ大変助かります。
また、教会に取り込めとの声が出る事も考えられます。
私の方で出来るだけ抑える様に致しますが、此処の司祭程度の力で何処まで抑えられるか分かりません。
取り込む動きがあった場合は教育の件は無かった事にして頂いて結構です。」
パウロ司祭はこんな事を言っているが、将来枢機卿になる事が確実視されている事は、教会に居なくても情報通であれば知っている事だったが、大声で言うことでもない。
アインズは任せられると判断した。
「パウロ司祭、クラウドを宜しく頼みます。
ですが、クラウドはまだ4歳で文字の読み書きも出来ません。5歳から家庭教師をつける予定ですので、最低限の読み書きができる様になってからで宜しいでしょうか?」
「私としては、上の判断が降りる前、来週からでも読み込みの勉強を始めたいと考えています。
クラウドくんが教会に通うのはまだ難しいでしょうから、シスタージェシカをアインズ様のお宅に派遣致しましょう。」
「それはいささか急ぎすぎな気もするのですが?」
「いえ、私達が教えるのはあくまでも、読み書きや神学、回復魔法についてです。それ以外の教育は、アインズ様がご用意されている方との兼ね合いも有りますから、早すぎると言うことは有りませんよ。」
「分かりまた、ただこちらで準備する物もあるでしょうから、それらが揃い次第始めるという事で宜しいでしょうか?」
「ええ、その様に致しましょう。」
此処まで話をした所で、コンコンっとノックする音が聞こえた。
「パウロ司祭、ジェシカです。クラウド様の祈祷が終わりましたのでお連れ致しました。」
「入って下さい。」
ドアが開いてクラウドが入るとシスタージェシカはその場を辞そうとしたが、パウロから声が掛かった。
「シスタージェシカも入ってくれ。話がある。」
「かしこまりました。」
クラウドは母の隣に座り、シスタージェシカはパウロ司祭の後ろに控えた。
アインズから話を切り出した。
「クラウド、神学を学んで回復魔法を使える様になりたいか?」
なるほど、こっちの相談とはこういう事か。
「はい、興味はありますが、まだ父様や母様と離れたくありません。」
「ハハハ、この子は賢いな神学を学ぶのに教会に入る必要がある事を知っているとは。クラウド、教会に入る必要はないぞ。」
「ええ、クラウドくん、まだ教会に入らなくても良いですよ。入らなくても勉強できる様には出来るからね。
クラウドくんも興味がある様だし、この話しは進めてしまって良いですか?アインズ様。」
「ええ、よろしくお願いします。必要な物はご教示いただけたらと準備いたしましょう。」
「シスタージェシカ。詳しくは後で話すが、アインズ様のお宅に伺ってクラウドに神学の勉強をしてくれ。初めは文字の読み書きからになる。」
「かしこまりました。アインズ様、ティファ様クラウドくん、宜しくお願いします。」
こうして予定より早く勉強を始める事が決まってしまった。