表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界証券取引所  作者: はみびとノベルズ
異世界証券取引にかかる検査事例:当該世界で行われた勇者召喚とそれに関わる異世界債発行について、その根拠となる事象に疑義が持たれ指摘した事案
10/15

10.魔王と痕跡と疑問と

ユタカがスミノフに案内されたのは、城から少し歩いたところにある小さな遺跡のような場所だった。

その中を進むと、正面に古い石造りの門が見えた。


「この転移門で移動します。キサラギさんも来てください」

ユタカは言われるがまま、その門の前に立つ。


(XXXXXXXXXXXX)


スミノフが何か唱えると、門が光を放った。

「さぁ、いきましょう」

扉を開くと光輝く壁が現れる。スミノフに続いて、ユタカはその光に吸い込まれた。


光の扉をくぐり抜けると、そこは暗くジメジメとした空間だった。

「ここはどこですか?」

「魔王城です」

「!」

「さきほどの城からは少し離れた位置の、沼地の中に位置しています。魔王が倒された玉座がありますので、見に行きましょう」


スミノフの案内で二人は城の中を歩いて移動する。

「かつて、ここは別の国の城でしたが、数千年ほど前にその国が滅び廃城に。その後魔王の居城となったようです」

魔王の居城だが、暗くジメジメはしているものの、よく見ると比較的きれいな建物だった。

そして、奥にある部屋に入った。

そこは瓦礫で雑然としているが、かつて立派な様子だったことが伺える程度には形が残っていた。


「ここが玉座の間です。かなり頑丈な建物だったようですが、魔王と勇者の戦いでこのように瓦礫が散乱しています」

「ちょっと、見て回っていいでしょうか?」

そう断ってから、ユタカは部屋の中を歩いてまわった。


石造りの壁や床に鋭い斬撃の跡や焼けた跡が残り、この場で激しい衝突があったことが伺える。

「ん?」

あたりの瓦礫を見て回っていると、ある瓦礫がユタカの目にとまった。


見たことがあるような柄がついている。ユタカはそれを手にとった。

「これは、、、」

かけらはほとんど残されていないが、一部残ったかけらからでもユタカにはそれが何か分かった。

「召喚術だ」


ユタカはスミノフに確認したいことがあった。

「こちらの魔王は、どのような存在だったのでしょうか?」

「不死の王と聞いています。アンデッド系の魔物の上位種、とでも言いましょうか」

「闇の力で世界を恐怖に、ということなんですね」

「おそらくは。世界の各地に闇魔法で破壊された痕跡が残っていました」


ユタカはもう一度あたりを見渡す。

部屋には戦いの跡が残っているが、どうしても違和感があった。

「この現場は・・・」

スミノフに問いかけるように言った。

「まるで、人と人が戦った跡のように見えます」


「しかし、魔王は不死の王だということは確証がとれています。戦闘の痕跡や、勇者と住民の証言からです」

「はい、おそらく、そうなんでしょう。でもこの太刀筋や燃焼痕は、人同士が戦った跡にしか見えません」

「人型の魔王、ということでは?」

「もちろん、そういう魔王もいるかもしれませんが、不死の存在がそのような戦いをするでしょうか?」

「まぁ、それは一概には言えないかと」


ユタカは考え込んでしまった。

おそらく、これは直前に別世界の魔王を討伐した自分にしか感じられないことなのかもしれない。

魔王のような存在と戦って、こんな跡にはならない。もっと、なりふり構わない状態になるはずだ。

それに比べて、あまりにここはきれい過ぎるのだ。


もし、勇者が戦った相手が、人に近い何者かだったとしたら、それはどんな存在だったのか。

なぜアンデッドの魔王だったのか。

そして、なぜこの玉座に召喚術の紋章の跡が残っているのか。

魔王は、別の何かを呼び出そうとでもしていたのか。


「とりあえず、戻りましょうか」

スミノフの言葉で検査室へ戻ることが決まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ