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11th Line 生産しましょう。そうしましょう。 その二

 料理スキルについて教えてもらった後は木工・加工スキルについて教えてくださるという、ヴィシュワさんを訪ねることにした。

 ヴィシュワさんの拠点はエンジェさんの拠点とは打って変わってとても質素なものだった。

 全て木でできていて、山小屋(ロッジ)のような感じだった。

「すみませーん。誰かいらっしゃいますかー。」

「はいはーい。ちょっと待ってくださいね~。」

 中からは子供のような声が聞こえた。

「よいしょ。どなた様~と。あれ?見たことない人ですね。まあ、どうぞ中へ。」

 そう言って出てきたのは見た目小学生ぐらいの男の子だった。

 取り敢えず中に入って勧められた席に着く。

 そして、リンさんに勧められたこと、そして木工スキルや加工スキルについて教えてほしいことなどを伝えた。

「ふむふむ。なるほど~。リンさんの紹介ですか~。しかもリンさんやエンジェさんが情報や鍛造の方法まで教える対価を与えられるとは…。それほどの実力を持った存在ということですか。なるほどなるほど。面白いですね~。僕としてはあなたという存在と会えたこと自体が対価となってもいいのですが…。ですがそれだと少々マナー違反ですから…。そうですね。こうしましょう。僕の名前の由来。それを当てられれば教えてあげましょう。」

「なるほど…。少し待ってくださいね。」

「ええ、ええ。いくらでも待ちますよ。もちろん回答回数に制限はありませんよ。なんたって、僕はどちらかといえばあなたに嬉々として教えたい派の人間だ。今、対価を付けているのは、リンさんを中心とした僕とエンジェさんと、レイブンさんの中で結んだ同盟によるものですから…。」

「あ、あと。ヒントになるかは分かりませんけど僕のリアルは高校生ですからね。」

「え?高校生?」

「はい。このアバターは身長はリアルより小さくなるように弄ってますけど、他は弄ってないんです。でも元来の童顔とこの身長でいつも小学生と思われるんですよ。いくらインターネットで色んなことを調べられると言っても、高校生と小学生では素が持ってる知識量が違いますから。一応お教えしておきますね。」

「お、おう。」

 結構言われ続けたのだろう。さっきまでゆったりとした喋り方だっただけに急に早口になったのには驚いた。

「う~~ん。そうだな…。ヴィシュワ、ヴィシュワ………。どこかで聞いたことがあるんだよな…。」

 そう。どこかで聞いたことがあるのだ。

 どこかの神様かなんかで………。

 こういう時に取る名前って基本的に縁起いいものだから恐らく生産に関係のある神なのだろう。

 あ!!

「分かった!!ヴィシュワカルマ。インド神話の物づくりの神、ヴィシュワカルマだ。」

「ん~~~。いぐざくとりー、イグザクトリー。正解だよセイ君。では約束通り教えようじゃないか。」

「木工スキルは、基本的にね料理スキルや調合スキルと同じようにレベルとともに増えていくレシピ、及び自己レシピを自動で作れるオートモードと自分の思うように作れるマニュアルモードの二種類があるよ。家具に始まり、木の盾、木刀、杖、棒、果ては家まで。木で出来ている物は全てこのスキルが無いと始まらないよ。」

「そして、加工スキル。これはね、鍛造スキルと同じように他のスキルで言うところのマニュアルモードしかないんだ。だからこそできることも多く、万能に近いスキルだよ。このスキルは木、金属、石そう言った削ることのできるものを削ることができる。逆にこれが無ければ削って装飾を施したとしてもゴミになってしまうんだ。また、『削る』ということに特化しているから、剣を研ぐ為の研磨や、原石から宝石への研磨なども、このスキルが無いとできない。」

「まあ。こんなものかな。ね?思ったよりも簡単でしょ?まあ、木工は釘や鋸を使うし、加工には鑢や鑿などを使う。その辺りは自分でお気に入りのを探すか、鍛冶で作れるのなら作ったほうが良いよ。分からないことはあるかな?」

「いや、特にないよ。とても分かりやすかった。ありがとうな。」

「いえいえ、こちらこそだよ。あ。フレンドコード交換しておこうか。」

「OK。あ。エンジェさんとフレンドコード交換するの忘れてた。」

「あ~らら。あの人、結構さみしがり屋だからな~この後レイブンさんともフレコ交換したら、『自分だけ仲間外れにされた~』って三日ぐらい引きこもって泣くんじゃないかな?」

「………。それは悪いな………。ちょっと走って行って交換してくるわ。」

「ん~じゃ。またね~。」

「おう。またな~。」


 ◇


 其のあとエンジェさんの店に戻ってエンジェさんに「仲間外れにされたかと思いました~」と泣きつかれはしたが無事(?)にフレコを交換した。

 そして時計を見ると11:30だったので一度ログアウトして今日買ってきた、ムネ肉、もやし、椎茸、胡瓜、中華麺などを使って冷麺、所謂冷やし中華を作る。

 まるで嗅覚で察知している犬か!?というほど、できたと同時にログアウトしてきた陽と共に食べて。片付ける。やはりなんだか、いつもよりもおいしい気がした。


 ◇


 再びログインした後は皮革・裁縫スキルを教えてくれるというレイブンさんのところは向かう。

 途中で裁縫スキルを獲得してないことに気づいて、SPを1消費し、裁縫スキルを取得する。

 レイブンさんのお宅はリアルのカフェみたいな感じだった。

 その家の前に一人、全身黒づくめの成人ぐらいの男が腕を組んで立っている。

「あ、あの。ここはレイブンさんの拠点でしょうか?」

「ああ。そしてこの私がレイブンだ。」

 まさかの、この人がレイブンさんだった。

「あなたが、レイブンさんでしたか。リンさんか…。」

「聞いている。」

 めちゃめちゃ話の途中で言ってきた。

 うぅ。話しづらい。

「ヴィシュワから話は聞いている。貴様の目的などをな。そして待っていた。そして一目見て分かった。貴様の顔、スタイル。其の全てが我が理想。ここまでの存在はエンジェ殿以来だ。さぁ。セイ君。皮革スキルと裁縫スキルについては教えてやる。だからな…。我の作品(服)を着ろ!!」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は思った。

(この人、ヤベェ人だ。)

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