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#9.頭のおかしい奴に捕まった私

※主な登場人物

メリーさん:本作の主人公。最近自分がメリーさんになった時のことがただの思い出になりつつあって悩んでいる。

ギャル:ヒロイン。家はお金持ち。お人形さん大好き。大学生の妹がいる。


「――ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」


――殺害完了。

日課のように人を殺めて早三十年。

最初こそ拙かったけれど、今では随分こなれたもの。

もし世の中に暗殺者ランキングでもあれば上位数名に覚えられるくらいにはなってるかもしれない。

お金じゃなくて、私基準で殺すからダメなんだろうけど。


「う、う……」

「あら、生きてる」


 背後からの鋏での強襲。

大体の場合即死するのだけれど、たまにこうして生き残ってしまう人が居る。

不幸というしかない。痛いだけなんだからさっさと死ぬ方がいいのに。


「も……」

「遺言くらいなら聞いてあげましょうか?」


 何か言いたげに口をパクパクさせていたので耳を寄せてあげる。

まあ、死にかけの男一人、最後の言葉位聞いてあげる優しさは私にだってある。

聞いたところで何するものでもないけれど。

殺されるのって本人にしてみれば理不尽極まりないものだろうしね。


「もっと」

「……は?」

「あぁぁぁぁっ!! もっと、もっと責めてぷりぃぃぃぃずっ!!」

「なっ――」

「美少女人形にっ! 鋏で無茶苦茶にされるの最高なのぉぉぉぉぉぉっ!! ふぉぉぉぉぉぉっ!!」

「きゃっ……へ、変態っ!」

「へぶっ」


 突然大声を上げながら肩を掴んできたので慌てて突き飛ばす。

確かに一撃、腹を切り裂いたはず。

なのにこの生命力。ナニコレ変態怖い。


「死ねっ! 死んでしまえっ! 変態っ! 壊れろつ! 滅びてしまえぇっ!」

「あひんっ! ああっ、最高っ……おんなのこに、ころされるの、さい、こ……がくっ」


 やっと死んだ。ああ怖かった。

なんで怖がらせるつもりで襲ったのに私が怖がらないといけないの。

意味が解らない。意味が解らない。

けれど、まあ、死んだからよしとしよう。


(これで私みたいになる可能性のある人形はいなくなった、と)


 予定通りとても大切にしまわれていた人形五体を回収し、袋に詰める。


『コロシテ……コロシテ……』

「あーあ、やっぱりこうなってるわよねえ。大丈夫よ、ちゃんと殺してあげるから」

『ハヤクワタシヲコロシテ……コンナニキタナイカラダ、モウヤダ……』

(この手の扱いされてる人形見るたびに思うけど、なんでこう、無機物にこんな事するのかしらねえ、一人暮らしの男って)


 意味わからない。

今しがた殺した変態もそうだけれど、なぜこうも人形相手に欲情できるのか。

人形とは本来、人間たちの友達として作られたものではないのか。

確かに宗教的な意味合いとか、そういう小難しい理由から生まれた人形もいるでしょうけど、愛玩人形は、小さな子供たちの友達のはずなのに。

そう願われて作られたはずなのに。


(……そういう意味では、私は恵まれてたのかしら)


 私の持ち主だった少女は、少なくとも私と出会った時には私を見て喜んでくれたし、毎晩のように抱きしめて寝ていた。

私が傍にないと寂しいと思うくらいで、だから、私もずっとそばに居たいと思ったものだけれど。


(ま、過去を思い出しても仕方ないか)


 今の私はメリーさん。

ただの殺人人形。そして――




「――あれ」

「えっ」


 変態男の部屋のあるアパートから出て、すぐ。

建物の前の路地で、金髪の女と鉢合わせる。

これは……いわゆるギャルとかいう奴。

黒髪だろうに金髪に染めて、毛根の辺りがプリン色になってる奴。

でも結構いい化粧品を使ってるのか、肌の艶や唇はとても瑞々しい。

ファッションこそ軽いけれど、美形と言えるような女だった。


「……っ」

(あー、やば、見られた。こいつも殺すか)


 即座に判断し、鋏を構え相手の背後にテレポートしようとした矢先。


「――なにこれちょーかわ! マジ好みなんですけどぉっ!」

「はぐっ!?」


……ものすごい勢いでタックルをかまされた。

お腹にすごい圧迫感。

これはやばい。掴まれた。鋏が振るえない。


「ねっねっ! ちょっとウチ来ない? 今声出したよね? あんたどっかのロボか何か? なんか人形っぽいけど何? どういう原理? まあいいやウチ来よっ! ほらっ、ウチ結構近いしーっ」

「なっ、ちょ、放しなさいっ! 離してっ、私メリーさんなのよ!?」

「えっ、メリーさん!? メリーさんって、羊のアレ!?」

「メリーさんの電話のメリーさんよぉっ!」


 まさか自己紹介が必要だなんて思わなかった。

ダメだ、ギャルのノリについていけない。

……ついていきたくもない!!


「メリーさんの電話……?」

「そ、そうよ。あんまりバカにした態度してると斬り刻むわよ!」

「なにそれちょーかわいー! まあいいや話はあとで聞くからー」

「あっ、ちょっ! だから! 私は貴方とは関わりたくないというか……引っ張らないでっ! きゃーっ、いやーっ、お巡りさん助けてーっ」

「あははっ、お人形さんを連れて帰っても逮捕されないしー! 大丈夫大丈夫、さきっちょだけだからさーっ」

「な・に・が・よぉ!! いやあっ、たすけてぇっ! 変態がっ、変態がぁぁぁぁっ!!!」



……こうして私は頭のおかしいギャルに誘拐された。

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