#4.相手がどんな姿でも気にしない俺
※主な登場人物
俺:本作の主人公。メリーさんと半同居生活みたいになりつつある。得意なゲームは格ゲー。
メリーさん:ヒロイン。気が付くと彼の家に通うのが日課になっている。得意なゲームはホラーゲー。
『モシモシ、ワタシ、Mary サンデース』
今日のインターホン越しの声は、いつもと違ういかつい男の声だった。
いつもの愛らしい少女然とした声はどうしたというのか。
声変わりか? それともそういう気分の日なのか?
まあいいかそれならそれで、と、安易にドアを開けてしまった。
ちょうど今、唐揚げを作りすぎてしまったところだったし。
「Hello!!」
どこからどう見ても黒人のがたいのいい兄ちゃんだった。
筋肉質な、それでいて眼鏡なんかかけてたりするちょっとインテリっぽいいでたちの男だ。
ポケットには小さいながらも鋏を入れてるし、メリーさんで間違いないな、ヨシ。
「ワタシMaryサンデース!」
だがメリーさんらしかった。
なるほどアメリカナイズドされるとこんな感じなのか。
メリーさんも国際色豊かになったものである。
「イマカラアナタノ」
「オーケーオーケー、それじゃさっそく飯にしようか」
「メーシー?」
「いいからいいから」
なんとなくいつもの流れになった気がしたのでそのまま飯に誘う。
メリーさんもそういう日があるのだろう。
「今日は唐揚げだぜ!」
「oh! イッツカーラーアーゲー!! ワンダホゥ!」
「はははそうかメリーさん唐揚げ好きか。よしよし沢山あるからな」
「ワタシレモン・ジルカケマース!!」
「それは別皿にとってからやれ!!」
メリーさんがレモン汁を勝手にかける系女子だったとは思わなかったぜ。
全く恐ろしい。
「飯食い終わったか? よし、ゲームでもやろうぜ」
「ohゲームゥ? ワタシステイツデハオタクゲーヤッテマーシタ!」
「くくく、だがジャパニーズゲームは遊びじゃないぜ。いくぞ!」
「ソ、ソノゲームハ……UMAOTOKO!?」
全世界を震撼させた日本ゲー、UMA漢プリケツグランプリだ。
これを出すと大体のオタクは歯を震わせ腰を浮かせ曖昧な笑顔になる……メリーさん、お前もか。
「話が分かるようだ。早速プレイと行こうぜ!!」
「oh……デモワタシステイツノチャンプ、ツヨイネ……!」
「いけぇっ、アカの牧場クイーン!!」
「リュウハセイホウムハイノナノモトニィッ! ウフウウンサエキィ! コイ!!」
今二つのプリケツマイスターが火花を散らす……!!
ゲームの時間が終われば風呂の時間だ。
最近はメリーさんもよく風呂を使うのでその辺りも抜かりはない。
「おうメリーさん、風呂湧いたから先入っちまえよ」
「ohジャパニーズジャグジー! コレガオーモーテーナーシー!?」
「くくく、なんとアヒルの玩具も浮かべてあるんだぜ」
「コノダック、ウゴイテールーヨー!?」
お昼の玩具一つで大はしゃぎとはメリーさんもまだまだ子供……所詮は少女人形という事か。
「Oh! ダックガ! ダックガメリーサンノカーミーヲー!!」
……おかしいな、あのアヒルの玩具は別に動くようなものではなかったと思ったが。
まあそういう事もあるのだろう。
「Zzzz……チガウンダヨ……ボクハイツカ……パパノノウジョウノタメニ……」
風呂の後もゲームをやったりして遊んだが、流石に疲れてきたのか、メリーさんはコントローラーを握ったまま寝入ってしまった。
このように油断しきったような子供っぽい顔を見ると、「ああ、いかつくてもメリーさんはメリーさんなんだなあ」と思える。
「とりあえず今日はもう寝るか」
いつもの小さな体なら抱きかかえて寝るところだが、あいにくとこの巨体、俺一人では抱き上げることは難しい。
しかし案ずることなかれ、いつどこが寝床になってもいいように薄掛けは用意してあるし、座り寝も慣れたものだ。
このままこの黒メリーさんの枕となったまま眠るものとする。
「ではおやすみ、メリーさん」
「グッ……ナイ、パパ、ママァ……」
「ふぅ、怪奇現象の寄り合いの所為で今日はずいぶん遅くなっちゃったわ……ねえ、起きてるー?」
「ご飯がない……そういえば玄関に靴が二足あったけど、誰のかな……っと」
「あ、いたいた……うん? この外人の人、誰……?」