事の始まり
「人質をとった為、やむなく犯人の1人を射殺。天使ちゃん逃亡中のもう1人の所在わかる?」
男は上着の襟に仕込んであるインカムに話しかける。
「不明と…あいつはどっかで足みつけて逃げおうせてるな…伊達に能力で逃し屋、運び屋してないだろうからな…了解。とりあえず、人質は保護したから、あとお願い」
呆気にとられながら、明光は男を見つめる。
「ケガはないか少年?荒っぽいやり方で悪いが…と」
「動くな!!」
警官隊が銃を携え到着する。
「民警のヴェンだ。たまたまあんたらのお仲間がフリークス2人と一悶着しているところに居合わせ、手を貸した。発砲許可も取ってるはずだが…」
やれやれと両手を上げるヴェンに警官の1人が反応する。
「失礼しました。お話は聞いております…」
「どうせ、怪しかったから一応警戒しただろ…まったく…」
「すみません…あの少年は?」
「巻き込まれた人質だ。だから、犯人をしかたなく殺した。報告書やらなんやらはするから、少年の保護は任せた」
「わかりました…」
ヴェンは去る間際のすれ違い様にに少年に近寄り肩に手を置いた。
「災難だったな少年。もうおれとは会うことはないだろうから、今日のことは悪夢だと思って忘れた方がいい。じゃあな」
「ちょっとあんた!!」
若い警官がヴェンを呼び止める。
「何か?」
ヴェンはふり返り、呼び止めた警官を見る。
「民警とは言え、街中で銃を撃って、人殺してさよならはないでしょ!!この少年に怖い思いをさせて」
「職質で不覚とって負傷したのはおたくらでしょ。こちとらたまたま居合わせてあんたら協力した。映像記録もあるしな」
やれやれと胸ポケットから小型カメラを取り出し、若い警官に見せる。
「巻き込まれた少年には同情するが…とりあえず、報告はするよ。現場の事後処理はそっちの仕事だろ?」
「そうやって、お前は!!」
「やめろ澤田。すまんなうちの若いのが」
若い警官、澤田を年配の警官が止めた。
「いえ、大丈夫です。若い勢いは大事ですから。それでは…」
ヴェンはそのまま路地の出口へ向かい去っていった。
「大変だったなぼうず…」
年配の警官は明光に言葉をかけた。
「民警と言っていましたが、あの人は…」
「殺し屋だよ。民警と名の下、何人殺してるのやら」
「こら、澤田やめろ」
年配の警官、話を続けようとする澤田を制止する。
「能力者がらみの事件に関わるたび、殺して、金を稼いでっ」
「いい加減にせんかっ!!澤田っ!!」
怒号により、澤田は口をつぐむ。
「急に大声だして、すまんなぼうず。だけど、あの人には関わらん方がいいのは本当の事や。今日のことは忘れた方がええ」
そして、警官に付き添われながら、一応病院へ向かい検査の後、警察に何があったか話すこととなった。
さっきまでの目の前にあったまるで映画のような光景。
それが非日常への始まりだった。