女の仕事
とある高層ビルから、スナイパーが照準をあわせて引き金を引き、ターゲットを仕留める。彼女にとってそれはあるふれたルーティンだった。
今回のターゲットは、有力政治家だったが、彼女にとって標的以外のなにものでもなく興味がなかった。
大企業の重役だろうが、軍の幹部、犯罪組織のボスなどを何人も殺してきた。日常的に仕事の依頼を受け、機械的にこなしてきたのだ、もはやそこに感情はなかった。
防弾ガラスに安心して、決起集会を開き、演説をしていたところ、頭を撃ち抜かれた。
放たれたものは弾丸ではなく、光だった。
彼女の能力は光、こと威力においては、世界最強と言われている。
能力に同調する特殊な銃を使い、遠距離から狙撃を行う。防弾ガラスを貫通し、目標の頭を撃ち抜いた訳である。
あとは計画に従い、撤収するのみだった。
自分が狙われている問題を除けば…
破裂音が響く、そして連絡用の端末が使用できなくなった。
「チャフグレネード…」
気配を察し、素早く周辺の光を操作し、光化学迷彩の様に透明になる。
まだ見つかってはいないが、近くにいる。
拳銃を抜き、身を潜め警戒する。なんらかの方法でこちらの所在を大まかに割り出したのだろう。ほぼ真っ直ぐこちらの潜伏先に向かってきた。
能力がなければ普通の女の子と変わらない、極力戦闘は避け、やり過ごしたいところだった。
部屋ドアが少し空いた瞬間、銃声がした。
部屋のスプリンクラーが壊され、水が降り注ぎ、透明化している彼女の輪郭が浮き出てしまった。
ドアを開け飛び出してきた男に咄嗟に銃を向け、引き金を引くが、野を駆ける獣ような動きでとらえることが出来ず、一気に距離を詰められ、腕を掴まれ、捻りあげられ、拳銃を取り上げられ、そのまま地面に組み伏せられた。
頭に銃を突きつけ、男は言う。
「抵抗は無駄だ。能力を解け」
狙撃手は能力を解く、そこには見た目は10代半ばであろうか銀髪の女性が姿を表した。
「貧相でガリガリの身体でよければ好きにしたらいい」
自分が捕らえられた時の覚悟はすでにしている。
自害出来なかったスナイパーの末路など、想像絶するものだろう、安全な遠距離一方的に殺す卑怯者だ。その憎悪を一身に受ける。
しかし、その後展開は思わぬ方向へ向かうこととなる。
それが、男と彼女のファーストコンタクトとなった。