男の報復
『第三皇女シャディア様の夫グリム氏が何者かに暗殺されました。シャディア様が中東の戦災復興支援活動中、武装勢力の襲撃により命を落とされ、一週間程経ち、記者会見を開いた後、車に乗り込もうとしたところ、車が爆発し、死亡が確認されました…』
某国、とある要人の豪邸のテレビからニュースが流れていた。
淡々とニュースが流れるなか、豪邸の主人の部屋は惨憺たる光景となっていた。ひとつひとつが車が購入できるレベルの芸術品の数々は変わり果てた姿となっていた。絵画は引き裂かれ、壺は粉々になり、像は砕け散っていた。壁には大小様々な穴が空き、ドアはなくなり、床にはいろいろな物の残骸や血で汚れている。護衛達はは家のあちこちで床に倒れ、守る者は誰もいない。
肝心な主は顎を砕かれ、う〜う〜と唸るしかできなくなっていた。
犯人は何も語らず、銃を向ける。
数回引き金を引く、すぐには死ないよう、急所は外した。しかし、出血多量で死は免れない。
彼は直感的に犯人の正体に気づいていた。目の前で、爆死したはずでは…
最初に殺されたこの男は、犯人の男の妻を襲撃を指示した黒幕だった。
その後、妻を殺した人物は次々と報復していった。
そして、表向きはテロリストによる犯行だったが、戦災復興支援事業を悪用し、横領や武器や麻薬の横流しなどの悪行の露見を恐れてのシャディアを暗殺したことは世間の明るみにでることとなる。
死を偽装し、社会的に死人となったグリムは復讐を終えた後、この国から姿を消した…