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話し合いの結果。
「向こうの国王に決めてもらおう!!」という結論に至った!
これこれこーいう理由で僕は男として生きてきました。
僕自身は、少那殿下と友人になれたらいいなとは思っています。
でもそれは殿下を欺く形になってしまうので…陛下にお決めいただきたいです。
駄目だと言うのであれば、申し訳ございませんが…僕は殿下の学友にはなれません。
良いのであれば、男として友人になりたいと思います。
僕から正体を明かす気はありませんが、もしもバレてしまったら…殿下を傷付けてしまったら、陛下より助け舟をください!!
……的な内容を丁寧に書いて送るんじゃい!!
でも箏まで海路で1ヶ月掛かるっていうから、返事はまだまだ先。結果がどうあれ僕は、もう少し男として過ごすようだ。
それでも今までと違って家とかでは自由に過ごせるし…まあいっか!というのが本音である。
その手紙は陛下にお任せする事に。陛下、皇后陛下、お父様、ファロさんは退室する。
僕ら子供達は、今日はゆっくりしてなさいって。ではお言葉に甘えまして、と。
皇后陛下が帰り際、「今度ルネも呼んで女性だけでお茶会しましょうね〜」と言ってくださった。楽しそう…!
話し合いが終わり、まったりお茶会を楽しむ事に。ラディ兄様も着席した。
そしてルシファー様が僕の横に移動して来て、女子3人で並んでおしゃべりをし始めたぞ。
「貴女、女の子だったのね〜!その眼鏡、もしかして伊達?」
「はい。少しでも顔を隠そうと…」
「ちょっと外していい?
…こうして見ると本当に姉妹でそっくりね。はあ…私も姉妹欲しかったわ…いるのは弟が3人だけ。
ルシアンはギリギリ可愛いけど…あと数年すればむさ苦しくなるのよね…」
「「「ははは……」」」
その弟3人は渇いた笑いしか出てこないようだ。
ルシファー様にとっては、ルネちゃんが妹分らしい。これからは僕達も妹だって!いやあ、照れるう。
「ねえ、本当に妹にならない?そこの3人、好きなの選んで良いわよ?」
「「え」」
「「「ブフーーー!!!」」」
殿下達は盛大にお茶を噴いた。すかさず侍従が拭くが…まだ咽せている。
そんな弟ズはガン無視し、ルシファー様は言葉を続ける。
「知ってるか分からないけど。近い内に我が国でも女性が爵位を継承出来るようになるのよ。
だから貴女達どっちかがいずれ公爵になると思うのよね。ヴィヴィエ家ではルネが継ぐのは決定事項みたいだし!
それで…どっちが継ぐとか、考えてる?」
「私が継ぎますわ」
その問い掛けに…すかさずロッティが答えた。
確かに僕には伯爵だって重荷だったのに…公爵なんてむーりー!!と思ってたけど…。
「本当に…いいの?」
「もちろんよ。お姉様が継ぎたいと言うのなら話は別だけど。
今まで本当に、ごめんなさい。お姉様の苦しみに気付いてあげられなくて…。
これまで苦労して来た分、これからは好きに生きていいのよ?お父様だって分かってくれるに違いないわ!」
…ありがとう…。
「それじゃあ…セレスタン君、お嫁に来ない?どれが一番タイプかしら?」
「!!んんん…っとぉ…!」
「シャルロットさんは、ルクトルかルシアンのどっちか婿にいらない?」
「えっと…私は…それより!お姉様にはすでに想い人がいますので駄目ですわ!!」
何言ってるのロッティーーー!!!?ルシファー様が目ぇギンギラギンに輝かせてますが!?酷い、姉を売るなんてええええ!!!
「まあ!聞かせて聞かせて!!お相手は誰、出会いはいつ?意識し始めたのは?告白するのかしら!?」
「うぐぅ…」
きゃいきゃい騒いでる僕らの向かい側で、男4人はというと。
「今日はいい天気だな」
「そうですね」
「明日は晴れるってさ」
「へえ」
「明日は雪だぞ」
「はー」
「ところで今日はいい天気ですね」
「曇ってるけどな」
と言いながら…すんごい聞き耳立てているぞ。
彼らに聞かれるのは恥ずかしいので、移動したいなー!
「それもそうね。
ねえ、セレスタン君…じゃないわね。セレスタンって男性名でしょう?
さっき叔父様も仰っていたように、戸籍も女性として新たにするのよね?箏の件があるから、まだ公には出来ないけど…名前、どうするの?」
「あ。そういえば…そう、ですね…」
僕はいつかセレスタンの名を捨てて、新しい名前と人生を得るつもりだった。
それがついに現実になる訳か…名前、どうしよう?
「早速お父様の出番ね。彼にお姉様の名前を考えてもらいましょう!」
「…うん!あ、でも…」
「「?」」
名前はお父様に任せるけど…1つだけ、希望が。
「僕ね…愛称が「シャーリィ」になる名前がいいなあ…」
なんだか照れくさくて、手で頬を覆いながら言った。
僕が何者であろうと変わらず…そう呼んでくれる人がいるから。これからもずっと…そう呼んで欲しいから。
「そう…じゃあシャーリィって呼ばせてね!貴女もロッティって呼んでいい?」
「「はい!」」
「じゃあ早速シャーリィ。私のお古で申し訳ないのだけれど、今からドレス着てみない?そして3人でお茶会しましょう!」
ドレス…!うん、着たい!
ん?着替え?…そうだ!!袴に着替えて写真撮って、手紙と一緒に送ってみよう!
なのでごめんなさい、お茶会はまた後日…!と言ったら、ルシファー様は快諾してくれた。
「という訳で着替えてくるね!ルシアン、後で写真お願い」
「分かった」
そうしてこの場は解散した。
「……お前ら圏外だってよ。ふっ、早く春が来るといいな?まあ可愛いセレスはやらんがな!」
「お前…!自分だけ結婚が決まったからと言って上から目線で…!」
「今から振られちゃえばいいですよ」
「そういえばナハト、バルバストル先生と婚約したそうだな。おめでとう」
「ありがとうございます、ルシアン殿下。
ところで…殿下はセレスの想い人をご存知ですか?」
「いや…初恋の相手はブラジリエだったらしいが…」
「「「そうなの!!?」」」
「(あ、いらん事言ったな私?)」
「それよりマクロンだろう?以前あんなにも熱烈な告白を…あれ、今考えると…マクロンは酔っ払って、淑女に半裸で抱き着いたという事に?」
「兄上も、顔を合わせる度にセレスタンさんを抱っこしてたでしょう…。場合によってはセクハラ呼ばわりされても文句は言えませんよ…」
「ぐはっ」
と…男4人は盛り上がっていたそうな。
ロッティが着替えを手伝ってくれると言うので、今は部屋で僕ら2人きり。バジルは部屋の外で待機だ。
袴を葛籠から引っ張り出し…ご丁寧に着付け方法がイラスト付きで描かれた本がある。これを参考に…と。
今のうちに、ロッティに報告しておきたい事がある。服を脱ぎながら僕は口を開いた。
「僕ね、今日…ジスランに告白されたよ」
「……そう、やっとなのね」
「…ジスランの気持ち、気付いてたの?」
ロッティは無言で頷いた。
彼女が言うには、彼は昔から僕の事をそういう目で見ていたと。バジルも「彼は、坊ちゃんのことが大好きですからね」とか言ってたっけ…。
僕だけ気付いてなかったって事…?え、鈍すぎない?
…いや僕悪くないよね!?普通好きな人にあんな地獄の特訓させないでしょ!?
僕を男らしくしたかったにしても、もっと加減とかするでしょ!?
「それに関しては、私は死ぬまでジスランを許す気は無いわ。
でも…彼は心の底から反省して、私が怒ると分かっていながら全て打ち明けた。どんな罰も受け入れると。
お姉様にも直接謝罪があったのでしょう?それで、お姉様は許したのでしょう?なら…私がこれ以上口出しする事ではないの。
もしもお姉様が彼と結婚するとなっても…複雑だけど、頑張って祝福するわ」
「…そっか。僕、お断りしたよ。
僕ね…ずっと、ロッティはジスランの事が好きだと思ってた。違った?」
「……分からないの…自分でも、本当に…」
ロッティは頬を染めながら言った。
その表情は…恋する乙女って感じなんだけど…色んな感情が入り混じってるのかなあ。
僕に対する仕打ちを許せない心と、ジスランを愛する心…とか?
バジルは以前、ロッティはジスランに対して特別な感情を抱いていないと言っていたけど。僕にはそう見えなかった。
家族である僕とバジルを除くと、明らかにジスランだけロッティと距離が近いんだもの。
触れるのを許しているのもそうだし。以前医務室で使うマグカップも、ちゃんとジスランの分も買って来たし。何かと気に掛けていたように思える。
それは恋愛感情では無かったかもしれないけど。ロッティにとって「特別」なのは間違いない。だから…
「今後ロッティには、今まで以上に婚約話が舞い込んで来るよねきっと。
公爵令嬢だし、邪魔な伯爵はいないし。他国からも来るかもね?
それで…もしジスランとの話が来たら、受ける?」
「……………そう、ね。あんな男は…私が死ぬまでこき使ってやるんだから。
お姉様が幸せになる姿を…近くで指を咥えて見ているがいいわ」
ロッティはそんな言い方をしているけど。その表情は穏やかなものだった。
僕も大好きな2人が幸せになってくれたら嬉しいな…。
※※※
四苦八苦しながら袴を着る事に成功!ミカさんも腰に吊るしてるし…少女、いや少年剣士爆誕!
髪は…ちょんまげ?やーだー!!とりあえずポニテのままでいいか。
「お姉様素敵!これはハカマと言うの?やだ可愛い…!」
うふふ〜!もっと褒めて!!
可愛いと言うけれど、色的にこれは男物なんだよね。この国の人には伝わらなそうだけども。
「おお…お似合いです、お嬢様」
でしょう?バジルも廊下ですれ違う人達も、似合ってるって言ってくれる。照れるなあもっと言って!
僕らは足取り軽くルシアンの部屋に向かった。だが不在のようだ…なんだよう、写真撮ってもらいたいのに!
じゃあ先にお父様にお披露目しよう!陛下の執務室にゴーだよ!
執務室の前にいる騎士が僕の姿を見るや否や「精霊姫!本日のお召し物は異国風ですね」とほざきやがった!!やめてや!
「んもう…。ええと…ラウルスペード公爵、皇弟は中にいますか?」
「はい。少々お待ちください」
「お姉様、精霊姫って…」
「お願いロッティ、バジル。何も聞かないで言わないで…」
僕達はすぐに部屋の中に通された。そこには陛下とお父様、宰相様、ファロさんがいた。
お父様は僕の姿に目を丸くしていたぞ。
「セレス?その服は…?」
「素敵でしょ?箏からの贈り物だよー!似合う?ねえねえ似合う?」
僕は部屋の中に入り、クルクル回ってみせた。
お父様に「ああ、似合っている。可愛らしいな」という言葉いただきましたー!陛下達にも褒めてもらえて、今の僕は有頂天!
宰相様も、僕が女だという話を聞いたらしい。すっごく驚いたらしいぞ。そういえばナハト家も養子の打診をしてくれたんだよね。
「ああ、でも皇弟殿下が御父上なら安心だね」
「はい!ねえお父様、僕に新しい名前をちょうだい!」
「…な、ま、え?」
「うん!セレスタンじゃなくて、女性の名前!あのね、愛称がシャーリィになる名前にして欲しいの」
僕の発言に、宰相様以外の3人が固まった。なんで?
「(あちゃー…セレスタンちゃんは、この男のネーミングセンスの無さを知らんからね〜。さてどうする?)」
「…………シャ、シャーロット…」
「捻りがなさ過ぎる!!?」
お父様が絞り出した名前はほぼシャルロット!!結局「すまん、時間をくれ…」と言われ、この話は一旦終了。
彼らの邪魔をするのもなんなので、用事が済んだ僕らはとっとと退室した。ルシアンは何処かな?
そこでバジルが…「パスカル様のお見舞いに行かれては?」と提案してきた。
……少し気まずい(一方的)が…確かに心配だ。まだ目を覚まさないのかな…。
そういえば、ジスランはどこだろう?帰ったのか騎士に混じって鍛錬しているか、かな?
この2人には、世間に公表するまで僕が女だとまだ明かさない事に決まった。ロッティとお父様がそう言うのだ。
なんで?と思ったら、2人は演技が出来ないからだって。
確かにジスランは無理そうだわ。パスカルは大丈夫じゃない…?駄目?そうですか…。
「(お姉様にはすっごく悪いのだけれど…場合によってはジスランより演技ヘタよ、あの男…)」
パスカルの眠る部屋の前までやって来た。むう…ドキドキする…!ゆっくりとノックをし…
「パスカル…起きてる…?」
と声を掛けるも無反応。3人で顔を見合わせ…ゆっくりと扉を開ける。
だが部屋に入ろうとしたら。ヘルクリスがロッティを、ヨミがバジルを引っ張って止めた。
「お前達はここで待機だ」
「何故ですの!?」
「いい加減面倒になってきたからな…」
???よく分かんないけど、僕は1人で入る事に。すると…セレネが部屋の外に出た?
「シャーリィ。パルは1回起きたけど、また寝ちゃったぞ。頑張れ!」
ですって。何を…?結局精霊達も全員出ちゃったし、なんなのもう。
仕方ないので、バジルにはルシアンを探してもらうようお願いした。セレネも一緒に行ってもらえば、匂いで辿れるだろう。
「パスカル〜…?」
ゆっくりと近付くと…穏やかな寝息を立てるパスカルが。カーテンが開いているから、顔がよく見えるわ。
一度起きているなら、もう安心だよね…ふう。
ベッドに腰掛け、少し休憩。袴姿…パスカルはなんて言うだろう?
君は…僕が女だって知ったら、離れてしまうの?
そう考えると怖くなる。離れるくらいならいっそ…このままの距離感でもいいから…側にいたい。
ちらっと寝顔を見る。少し腰を捻って彼のほうを向き、その頬に…そっと手を当ててみた。温かい…。
その時、ゆっくりとその手を掴まれた。
お、起きた!?…いや、目の焦点が合っていない。寝惚けてる…?
「パスカル…?」
「………………シャー、リィ……?」
次の瞬間。その手をぐいっと引っ張られ、バランスを崩した僕は彼の上に倒れ込む。
へ?はい?何が起きたのか、直ぐには理解出来なかった。ただ目の前には…パスカルの整った顔があり、とろんとした目で僕を見つめる…!僕は一瞬で顔面を沸騰させた。
「ひ、ひぃ…!ふぁっ!?」
彼は空いてるほうの手で、僕の眼鏡を外して放り投げた。そして後頭部に手を回し…
「………!?」
んな…!!パスカルは、僕の唇に…ゆっくりと、包み込むようなキスをした…!
「……っぷあ!待って、パスカ…!」
しかも、離れたと思ったら角度を変えてまた…!!
決して荒々しいものではなく、優しく、何度も…。どうしよう、腕が震えて力が入らない。彼を振り解けない…!
「ん、んん…!」
バクバクと心臓の鼓動がうるさい。ヤバい、流される…!こういう時は、ええと…!頭突き!?いや怪我人にそんな事は…!
クラクラしてきた…呼吸が出来ん、酸素が足りん…!
…もぎゃーーー!!パスカルの手が、僕の胸に…!何考えとんじゃおんどりゃあ!!?
「……?…シャーリィ………!!!?」
なんかもう…色々諦めかけたその時。正気に戻ったであろうパスカルが…勢い良く後ずさった。
その顔は呆然と言うより、困惑気味。
「え、あれ、シャーリィ?その髪と服は…?
それより俺、今何を…?お、俺…」
僕達の間に沈黙が落ちる。おいまさか…今の、覚えて、いない…?
え。本当に?もういいかな…って思いかけてたんですが僕。
「………パスカルの…バカーーー!!!変態!むっつり野郎!!大っっっ嫌い!!!」
「えええええっ!?ぶはっ!」
ボスンッ!と彼の顔面にクッションを投げ付け、ダッシュで扉に向かい勢い良く開けた!
「あ、セレス。今何か叫んだか?って顔赤くないか…?」
「ル、ルシアン…!」
そこにはルシアンとバジルの姿が。ロッティはいないが…今それどころじゃない!!!
僕はヘルクリスの背中に飛び乗った。
「僕部屋行ってるから!!!暫く誰も来んなっ!!」
「ええ〜…?」
もうパスカルなんて知らん!!!
部屋のベッドにダイブし、先程の出来事を思い出す。
「ううう…パスカルのばかあ…!!」
急でびっくりしたし恥ずかしかったけど…嬉しかったのに…!これだから男ってのは!
あんにゃろうロッティにチクってやる!!バズーカで吹っ飛ばされちゃえ!!!
「余計面倒な事になったようだ…」
僕はヘルクリスの背中に顔面を押し付けて、ひたすらに啜り泣くのであった。
※
セレスタンが飛び出して行ったのを、パスカルは呆然と見送った。
「おい、マクロン…お前何した…?」
「殿下…」
ひょいっと顔を覗かせたのはルシアン。次いでバジル。ヨミとセレネも部屋に入る。
全員ベッドの周りに集まり、パスカルを囲った。
「俺…あれ?セレネと言い争った後眠くなって…寝たはず。
でも何か頬に温かいものを感じて…気付くとシャーリィが優しい眼差しで俺を見下ろしてたんです…。
でも髪は長くなってるし、見た事ない構造の服を着てるし…あ、夢かってなって…」
パスカルは完全に頭が回りきっていない状態で、今の出来事を説明し始めた。
「あー…こりゃいい夢だと思って。彼の手を引き寄せて…口付けをして…。
なんか夢にしては感触がリアルだなー…なんていい夢だ。と思いながら、何度も何度も…」
その説明に…ルシアンとバジルは顔を手で覆った。そして「こいつ、やりやがった…!!」と瞬時に悟った。
「いい匂いするな〜、柔らかいな〜、最高の夢だな〜って…。
これはもう、次のステップに進んでもいいのでは…!?とか考えていたら…急に頭がスッキリしてきて。
よく見ると俺の手は彼の体を弄ってるし、彼は震えて呼吸を荒くして涙目で顔を真っ赤にしているし…。
あ、可愛い。と同時に…まさかコレ、夢じゃ、ない…!?って感じて」
もうルシアンとバジルは、聞くのも苦しくて悶えていた。
「暫く2人共黙り込んで…突然シャーリィが、「バカ、変態、むっつり野郎、大っ嫌い!」って叫んで……だ、大っ嫌い…!!?」
ようやく完全に覚醒したパスカルは青ざめた。
数時間前までは愛しのセレスタンに「好き」と言ってもらえてフィーバーしていたのだが。
「ど、どこからどこまでが夢だったんですか…!?」
「多分…最初から最後まで…現実…」
ルシアンの返答にパスカルは絶望した。
夢だと思って暴走した事…セレスタンに大っ嫌いと言われた事。
あれ、俺…男として人として最低な事した?彼を…傷付けた…と、思い至る。
セレスタンにした行為を思い出し…青い顔を一瞬で赤くさせ、ベッドから飛び降りた。
「……う…うわあああああ!!!シャーリィ違う、違うんだ!俺はもっと段階を踏んでからあああああーーー!!!!」
「パスカル様あー!!逆、逆です!!!」
錯乱状態に陥ったパスカルはセレスタンの後を追った。だが廊下に出て逆方向に走って行ってしまい…急いでバジルが追い掛ける。
セレネとヨミは面倒くさそうにゆっくりと出て行く。
「あの馬鹿…」
部屋に残されたルシアンは頭を抱えた。
そして近いうちに、また自分とエリゼは彼に呼び出されるのだろうな…と思い特大のため息をつくのであった。
パスカルは相手がセレスタンに限りむっつり。他の女性には特に関心は無く、紳士的。
逆にグラスあたりは自分の欲望と本能に忠実なオープン野郎。




