sideランドール
「うあーーー。はぐれたあー(棒)」
「あっ!…ったく!
大変だー。ボクが追いかけるから、2人は先に行っててくれー(棒)」
「「…………」」
花火を見る為、用意しておいた席に向かう途中…明らかにわざとセレスとエリゼが逸れた。
何故分かるかって?セリフ棒読みだし、セレスはこっちに背を向けダッシュで遠ざかってるからな。
やるとは思っていたが…もうちょっと上手く出来なかったのか?こっちはもう、笑うしかない。
「今のは…」
「…すみません、気を使われました…」
きっと今頃「完璧にさり気なく退散成功!」とか思ってるんだろうなー…。
そう言ったら、先生は小さく吹き出した。彼女の笑顔が見れるなら…うん、まあいいか。
高台にある見物席に到着し、並んで座る。
ここは入場規制がされているからな、人も少なくていい。
席は一応4人分取っておいたんだがな、予想通り無駄になった。
今頃2人もどこか花火を見る場所を探してるんだろうな…全く。
「楽しそうね、ナハト君。微笑んじゃって」
「ええ。ちょっと間抜けな妹がいると、些細な事でも笑ってしまいます。
それより…ランディとは呼んでくれないんですか?クレールさん」
俺は以前から、授業中以外は愛称で呼んで欲しいとお願いしているのだが…どうしても呼んでくれない。
俺はいつまで、子供なんだろう?もう17歳で、法律的には大人だ。仕事だってしている。
今まで何度も告白を断られて来た。諦めるつもりはないが…平気な訳でもない。
年齢ばっかりはどうしようもない。他に断られる要素があるのなら、俺は直す努力をしよう。
俺はコートのポケットに入れてある、セレスがくれたお守りを無意識にぎゅっと握り締める。
効果があるとは思えないが…可愛い妹の手作りプレゼントだ。大事に持ち歩いている。
今日も先生に想いを伝えるつもりだが…断られるんだろうなあと思っていた。だが…
「……うん。ランディ君…で、いい?」
「!!…はい!」
初めて…名前で呼ばれた…!俺はそれだけでも、天にも昇る心地だった。
まさか、本当にお守りの効果が!?
周囲は薄暗くて分かりづらいが…先生は頬を染め、俺とは目を合わさずに話してくれた。
「あのね…今日、セレスタンさんに言われちゃった。
一度、貴方が子供で学生だとか考えずに、ランドール・ナハトとして見て欲しいって。
それで…ね。そんな事考えちゃったら…私には、貴方を拒む理由なんて無いのよ…。
私の事を一途に想ってくれて、言葉にしてくれて。
友達想いだし、家族も大事にする人だし、すでに自立出来るほど社会に出ているし…。
でも、だからこそ…!
私なんかでいいの?って思ってしまう。
年上っていうのもそうだけど、私は…貴方に釣り合うような女じゃない。
貴方にはもっと、相応しい女性がいるって…思うの」
…違う、そんな女性いない!
俺は隣に座る先生に体を向け、彼女の両腕を掴んだ。
「俺は…先生が好きなんです…!
傾国の美女だろうと一国の王女だろうと、溢れる才能を持っていようと巨万の富を築いていようとも。
俺にはなんの価値も無い…!俺はただ、クレールさんに…隣に立っていて欲しいだけなんだ…」
何故だろう…今までは、彼女に対してここまで感情を露にした事はない。
大人の貴女に釣り合うよう、クールな男でいようと努めていた。
こんな風に…相手に縋り付いて懇願するなんて、まるで子供じゃないか…!
クレールさんは何も言わず、真っ直ぐに俺を見つめる。そんな目で見られると…言葉が、止まらない。
「いつも…不安に思っていた。
早く卒業したい、大人になりたい…。貴女は魅力的な女性だから、俺の手が届く前に…誰かに、攫われてしまうんじゃないかって。
クレールさんが俺を慮ってくれている事なんて、分かってる。
でも…勝手に俺の幸せを決め付けないで。他の女性なんていらない…俺は、貴女の全てが欲しい。俺が、絶対にあらゆるものから守るから。
でも…俺も、貴女の幸せを決め付けたくない…。
俺は貴女と一緒になれたら、幸せになれる…幸せにする自信がある。
でもそれが俺の一方的な感情ならば。
クレールさんが一欠片の感情も俺に無いのなら…そう言ってくれ。
すぐには無理だけど…貴女の幸せは他にあること、いつか受け入れるから…。
でも。僅かでも、俺を想ってくれているのなら。どうか…受け入れて…」
俺はもう、顔を上げられない…。
貴女の前では…格好いい男でいたかったのに…!
だが…彼女はそのまま俺にもたれ掛かり…言葉を紡ぐ。
「………私は、貴方よりずっと年上で。
家だってほぼ平民と変わらない男爵家。家格も何もかも釣り合わないけど……。
貴方の事を、信じてもいいかしら」
「それって…まさか…」
「……ずっと怖かったのよ。言っておくけど!この年まで独身の女がねえ、貴方みたいな理想的な男性に言い寄られたら、舞い上がる前に疑っちゃうのよ!!」
「えええっ!!?」
クレールさんは俺からバッと離れ立ち上がり、拳を握り力説し始めた。
それと同時にドォン!!と花火の一発目が上がった。花火をバックに見栄を切る彼女は…なんか勇ましいな。
「今はまだ私もギリ若いけど、もう30近いのよ!?そんな女が成人ホヤホヤのイケメンに「好きです」なんて言われりゃ、夢か冗談としか思えないわ!!
貴方がそんなじゃないと頭では理解してるけど!「はい、喜んで…」とか返事して、「すんません、冗談だったんすわ」とか言われたら…!って考えちゃうの!!!」
「いや俺そんなじゃないって!!」
冤罪だ、俺はそんな事しない!
次々上がる花火に負けぬ大声で、クレールさんは今まで気にしていたであろう事を暴露する。
「分かってるわよ!!
それに今は本気で愛してくれても、数年経ったら「もうオバサンだな…」とか思われて、女として見てもらえないのでは?って思考になるの!!
そうなったら…若い愛人を作るのでは?いやむしろ、離縁を言い渡され…なんていう被害妄想が暴走するの!!だから…!!
だから!!約束して!!!絶対に浮気しないって!
それに私、嫉妬するからね!?セレスタンさんはいいけど、他の女の子が貴方に近寄っていると…ムキー!ってなるわよ!
浮気しない、私を捨てない!これを約束してくれるなら…!」
俺はそこまで聞き…クレールさんを正面から抱き締めた。
「ああ、もちろん約束する。
俺は貴女を、貴女だけを一生愛し続ける。
セレス以外の女性とは、仕事以外では近付かない。向こうから寄ってきても、上手く躱すから。
だから…どうか俺と、婚約していただけませんか?
一生、大事にします。その代わり、ずっと俺だけを見ていてください」
周囲は花火の音が響くので…俺は、彼女の耳元で囁いた。
これで振られたら…多分立ち直れない。その時は一生独身を貫こう…。
そう本気で思っていたが…クレールさんは僅かに体を震わせ…小さな声で…
「はい…喜んで…!」
「……!やったあ!」
やった…やった!!ついに…!
嬉しい、嬉しい!彼女から体を離し…そっと、触れるだけのキスをした。
クレールさんは顔を赤くし、控えめに微笑む。俺も嬉しくて…もう一度…
「ストップ!!!…周囲を見なさい!!!」
「周囲…?あっ」
「お幸せにー!」
「ヒュー!!」
「やーん、素敵ぃ!!」
「お似合いですよ!」
…………あらー。ここは人が少ないとはいえ…金を払った人達はいる。
俺の告白劇は、大勢の人に目撃されてしまった。注目の的である、流石に恥ずかしい…!
もう俺達は花火どころではなく、居た堪れなくて手を繋いだままその場を去った。
去り際にすれ違う人々から「浮気すんなよ!」「幸せにしろよ兄ちゃん!!」とヤジを飛ばされる。
そんなもん…言われなくても分かってる!!
俺がそう反論すると、また歓声が上がるのだった…。お前ら花火見ろ!!
※※※
この辺りでいいかな…。俺達は人の少ない広場にやって来た。
花火から遠いし障害物が多くて見えづらいけど、なんかもうそれどころじゃないし。
俺らは屋台でジュースを買い、ベンチに腰掛け飲んだ。
「セレスに報告したら、絶対喜んでくれるよ。クレールさんの事を、ずっと「ルゥ姉様」って呼びたがってたから」
「ええ…絶対喜んでくれるわね。私も、可愛い妹が出来て嬉しいわ。
…でも!貴方が卒業するまでは教師と生徒!いいわね!?」
「ちぇー」
もう一度口付けを…と思ったが、頭を鷲掴みにされ止められた。
まあいいさ。帰ったら父上に報告だ。それと各関係者に婚約の報告を…忙しくなるな!
ルキウスとルクトルもずっと俺を応援してくれていた。報告したら喜んでくれるに違いない。今後は揶揄われるようになるんだろうな、あいつらにも早く…いい人が見つかるといいな。
俺は卒業したらこれまで以上にバリバリ働いて…あ。
「そうだ。俺卒業後はそのまま皇宮で働く予定だったけど…ちょっと数年、寄り道するかも」
「寄り道?何かやりたい事でもあるの?」
「それが…ごめん、今は言えない。今後どうなるかで…変わってくるから」
「そう…分かったわ。いつか話してね」
「うん。……うん?」
「?」
クレールさんの後ろ…俺らのいる広場に通じる橋の上、離れた所にいる人物が目に入る。
あれは…マクロンじゃないか?しかも…隣には、見覚えがあるような無いような少女。
おいお前ぇ…セレスが好きだとか吐かしときながら、何他の女とデートしてんだ…?
「?あら、あれは…マクロン君とサルマンさんね」
「!知ってるの?」
「ええ。隣のクラスのゼルマ・サルマン侯爵令嬢よ。あの2人、婚約してたのかしら?」
は?……許さん。
「何怒ってるの!?」
「あいつは以前…セレスが好きだと言っていたんだ…。
なのに、婚約者だと…?どっちが本命か知らんが、舐めた真似をしてくれる…」
俺はゆらりと立ち上がった。彼女も「え、え?マクロン君は男性が好きなの?え?」と戸惑いながらついて来る。
許さん…だがここで「おい!」と殴り込みは悪手だ、まずは情報収集だ…!!
もしここで「俺が好きなのは君だけさ、マイスイートハニー♡」とか言ったら…縊り殺す。
あ、精霊殿がいるから無理か…って見当たらん?好都合だ!!
コソコソとマクロン達の近くの生垣に身を隠す。
うう…両思いになって初デートなのに、なんで俺はこんな…。
でもクレールさんは目を輝かせている。彼女が楽しそうだからいっか。
「でもマクロン君が2股するような人とは思えないわ」
「俺も…だからこそ、確認をしないと」
かなりの距離まで近付けた。その時、最後の花火が終わり耳が痛いほど周囲が静かになった。
すると彼らの会話が鮮明に聞こえてくる。
「パスカル様。今日は楽しかったです。
また来年も一緒に見ましょうね」
「……サルマン嬢。お祖父様から何を聞かされているか知らないが、俺は貴女と婚約する気は無い」
「「………!!」」
俺とクレールさんは顔を見合わせた。
「まあ…つれない事を仰るのね。
でもいいのです。いつか…私のほうを振り向いてくだされば」
「俺は…他に好きな人がいる。一生を共にしたい、愛しい人が。
だからこうして貴女とクリスマスを過ごすのは今年だけだ」
「あら…まさかそれは、ラサーニュ嬢…?もしくはヴィヴィエ嬢でしょうか?」
「……それを知って、どうしたい?」
「…いいえ、どうにも。気になっただけですわ」
ふふふと笑う少女は…こう言っちゃなんだが気味が悪い…。
マクロン…変なのに好かれてるんだな…同情するぞ。
遠くからは恋人同士が腕を組んで、仲睦まじく歩いているように見えたが…近くで見ると、マクロンは完全に目が死んでる。
いつもセレスを見つめている時とは大違いだ。今言ってた愛しい人ってのがセレスなら…まあ、許してやろう。
「……ふふ、この後はどうされます?私、まだ…」
「もう遅い、家まで送るから帰ろうか」
「…………分かりましたわ」
そう言って2人は…腕を組んだまま歩いて行った。
って、そっち俺達も向かう方向!仕方ない…少し時間を置いてから行こう。
「………もしかして俺も、今まであんな風に一方的だったのか…?」
「え、違うわよ!私はその、ちゃんと嬉しかったし…!」
よかった。ほっと胸を撫で下ろす。俺はストーカーになるのだけは嫌だったからな…もし俺がそうなったら、殴って止めるようルキウスに頼んでおいたくらいだ。
あ。大事なもの忘れてた。
「クレールさん、これ…クリスマスプレゼント」
「あ…ありがとう…。私からも、コレ…」
俺からのプレゼントは、指輪。ルキウスに「重くないか?」と言われたが、それほど高価じゃないから大丈夫だ。
ちゃんとした指輪は、卒業後贈るとも。クレールさんからのプレゼントはなんだろう?あとでゆっくり開けよう。
そろそろいいかな?と、手を繋いで歩き出す。
セレスになんて報告しようか。「上手くいったぞ!」うーん?「お前のお陰だ」かな?どう思う?
「そうね…彼女ならきっと、こうして手を繋いでいるだけで…勝手に盛り上がっちゃうと思うわよ?」
「……そうだね。確かに」
『ひえー!!おめでとう兄様、姉様!!!上手くいったんだよね、そうだよね!?』とか言いそう。
その様子を思い描くだけで、笑みが溢れる。クレールさんも同じ事を考えていたようで、俺達は目を合わせて笑った。
そこに…遠くから、エリゼの手を引っ張ってこっちに駆け寄ってくるセレスが見えた。
満面の笑みだ、きっと俺達の様子が違う事に気付いたんだろう。
引っ張られてるエリゼは「やれやれ」といったところか。こうして見ると…あの2人も中々お似合いだな。
だが。セレスは何かを見つけたようで…立ち止まってしまった。
?何を………まだいたのかお前!!!?
その視線の先には、マクロンとサルマン令嬢が!!あ、あそこは馬車の停留場に使われている場所!!早く帰れ!!!
立ち尽くすセレスを、エリゼが引っ張ってこっちに連れて来る。って、何故光の精霊殿が?
「セレス…?」
「…………あっ。…どうしたの兄様、手え繋いじゃって!上手くいったんでしょ、そうでしょ!?」
「…ああ。お前が勇気をくれたお陰だ。ありがとうな」
「えへへ〜…どういたしまして!じゃあこれからは、ルゥ姉様って呼んでいい!?」
「ランディ君が卒業したらよ!」
「フゥー!!ランディ君!?いいねえ!」
きゃはー!と喜んでくれるセレスだが…どこか、元気が無い気がする。
「あ…パルが呼んでるから、セレネはもう行くぞ」
「あ……うん!パスカルによろしくね〜」
あ!精霊殿が消えた…残された俺達は、何故か気まずい。
…よし、もう帰るか!!
セレスはクレールさんの家に寄ってから帰る。なのでそこまで送ることにした。
そして馬車の中…なんとも言えない空気が支配する中、セレスが口を開く。
「ねえ…さっき、パスカルがいたの見えた?」
「「「!!!」」」
な、なんって、答えるべきか…!!?
1・「そうなのか?全然気付かなかった!」
2・「ああ…誰か、女性と一緒だったな」
3・「薄暗かったしな、人違いじゃないか?」
4・「そんな事より俺の話を聞いてくれ」
……2と4はアウトだ。うう…他の2人は…?
俺に期待の籠った視線を送るな!!はいはい分かったよ、俺がなんとかすればいいんだろ!?
「…えっと。俺も、見た。薄暗いから最初は人違いかと思ったんだが…」
「うん…なんか、すっごい可愛い子と一緒だったよね…」
ごふっ。お前のほうが断然可愛い!と言うべきか!?
そこにクレールさんが言葉を挟む。
「あっと…あの子、同じ学園のゼルマ・サルマンさんよ?知らなかった?」
「ゼルマ…あ、あの子が…!言われてみれば面影が…」
それ言っていいのか!?セレスは俺達には聞こえない音量でぶつぶつ何か言っている。
隣に座るエリゼも聞き取れないようだ。まさか、あの子の事知ってるのか?
「(パスカルはゼルマの事、嫌ってると思ってたけど…漫画の内容が変化して、2人の関係性も変わった?
仲睦まじそうに…どっからどう見てもカップルだったし…)」
…セレス?どうしてそんな悲しそうな顔をする…?
「僕…気付かないうちに、パスカルの事好きになりかけていたみたい」
「「「!!!!??」」」
「でも大丈夫、まだ傷は浅い!
んもう、パスカルが僕にやたら優しくするから…勘違いしちゃったじゃんよ!
前、心に決めた人がいるって言ってたし…きっとあの子がそうなんだろうね。
僕は正直サルマンさんの事好きにはなれないけど…友人として応援する!」
おばぁーーー!!!お前は軽傷でも向こうは致命傷だ!!
俺は、可愛い妹の涙を見たくない…昨日のように、嬉し涙以外は流させたくない!!
「マクロン家は、先代当主…パスカルの祖父が厳しいお方で有名でな。
さっき少し会話が聞こえてしまったんだが…あいつは、祖父の命令で彼女と過ごしていたらしい。
パスカルの意思じゃない、だから…本人に確認するまでは、勘違いしないでやってくれ…」
「…兄様?」
何故俺は、マクロンを擁護する真似を?
仕方ないじゃないか!俺だって…知らずのうちに、パスカルを弟と認めていたんだから!!!
あの時、酔っ払っていようともあの言葉は本物だった。なら…年上として、見守ってやろうと思ったんだよ!!
……よし。ここは。
「………!?」
俺はエリゼの肩に手を置き、ウインクして親指を立てた。セレスは俯いているから気付くまい。
「(任せた!!)」
「(なんでボクが!?)」
「(お前が適任だろうが!!なんとか誤解を解いてやれ!)」
「(難しい事を…!もうプレゼントやらんぞ!!!)」
「あ、そうだ。エリゼにプレゼントやるの忘れてた。はい」
「そうだった、私からも!はい」
「ありがたく受け取ってやる。じゃあボクからも2人に…誤魔化すなー!!!」
そんな俺達の騒がしいやり取りも、セレスは窓の外に目をやり聞いちゃいない。
いつもだったら笑顔で会話に入ってくるのに…そんなに、辛そうな顔をしないでくれ…!
クレールさんの家に着き、俺とエリゼはそれぞれ帰る。
俺はこのまま馬車で、エリゼは転移で。セレスは風の精霊殿がいるから問題無い。
「じゃ…頼んだぞ」
「なんでボクが…ん?」
?エリゼの頭の上に…紙が降ってきた。
「………パスカルが、明日話がしたいって言って来た…」
「………なんで?」
「さっき…一瞬だがパスカルがこっち見たからな…。
ボクは変装もしてないし…でもセレスには気付いていないはずだ。なんの話だ…?」
俺達がいくら頭を捻っても、パスカルの考えなんて分からない。
残りは全部エリゼに任せて…俺は、結婚の報告を父にするのだ。
先生がランドールに贈ったのは腕時計です。
エリゼは2人に色違いのハンカチ。セレスタンには青いリボンの髪飾り。
ランドールと先生は2人共、エリゼに同じ万年筆を贈った。
「……色もデザインも全く同じだ。示し合わせたのか偶然か、どっちだ…?」
家に帰ったエリゼは、無駄に頭を悩ませる事に。




