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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園1年生編
80/222

65



 そんな夢のような時間はあっという間。


 次の日。教会の自室で目が覚めると…ベッドの上に何か包みがある…?

 開けてみると立派な装丁の本が。しかも2冊。


 パラっと開くと…アルバム!?昨日のパーティーの写真じゃん、ルシアン仕事早いな!!?

 昨日も彼は写真を撮っていた。いつの間にカメラマンになったんだ?



 僕はパラパラと捲る。そこには…


 皆に囲まれて泣く僕。

 美味しいケーキを頬張る僕。

 プレゼントをいっぱい貰って…笑顔でちょっぴり泣く僕。

 皆と笑顔でダンスを踊る僕…。

 他の人の写真もあるが、圧倒的に僕の写真が多い。

 …ふふ。


 包みの中には、1枚のカードが入っていた。




『セレスタン・ラサーニュ様

 誕生日おめでとう。其方と出会い、友となれた事…神に感謝する。

 このアルバムは遅くなったが、私からのプレゼントだ。

 1冊は其方が、もう1冊は教会に所蔵してくれると嬉しい。


 其方の変わらぬ友人。ルシアン・グランツ』



「……ありがと」



 アルバムを胸に抱き、呟く。

 よし、じゃあ早速…ん?


「ぎー」


「シグニ。何その紙?」


 結局このシグニは、ファロさんが「プレゼントだよー!きっとキミの助けになるよ」と僕に譲ってくれた。






『ファロさん…この子が何者か、気付いてましたか?』


『…やっぱキミは知ってたかー。アダンダラでしょ?これでもあたし情報通だからねー。

 でも害はねーし、お利口よ?気が付いたらウチに居付いててね。でもセレスタンちゃんが来た日から、ずっとソワソワしてんだわー。

「あの子んトコ行きたい?」って聞いたらコクンて頷いてねー。

 話せないけどこっちの言葉は通じてるから。普段はただのキュートな猫だし、面倒見たって。

 じゃ、よろ〜』






 …と。そのシグニは、ヘルクリスの上に丸まって寝てた。


 魔物って、精霊の天敵って聞いたんだけど…ウチの精霊達、全然怖がってないや。

 むしろヨミとか超可愛がってる。シグニもヨミの長い袖をちょいちょいして遊んでたりするし。

 分からんなあ…。


 

 で、シグニは何を咥えてんの?受け取ると…これもルシアンから?どうやら追伸のようだ。



『ラサーニュ嬢にも同じ物を贈ったのだが…「家宝にする」と連絡があった。良かったな!』





 ………ラサーニュの家宝が爆誕した日であった。






 ※※※






 僕は今、バルバストル先生の家に向かっている。教わった住所はこの辺のはず…あそこかな?

 先に上空で金髪のカツラを被っておいたから、男が訪ねるようには見えまい。



「いらっしゃい!準備出来てるわよ」


 先生の部屋は、1人暮らしにぴったりな広さだった。1LDKくらいで家具や小物が可愛い。そして本棚がデカイ…。

 手招きされて、鏡の前に座る。着替えるの?



「ええ。ナハト君から、ドレスを預かってるわ」


「は、ドレス!?」


 先生が手にしているそれは…水色のグラデーションなドレス。礼服用じゃなくて、普段着よりちょっとお洒落くらいなやつ。

 なんで…?と聞いてみたら、今日はドレスコードのあるレストランに行くらしい。なんとまあ。


「このドレスは、ナハト君からラサーニュさんへのクリスマスプレゼントですって。

 で、こっちは…私からのプレゼント」


 先生がくれたのは…靴?素敵…このドレスとよく合いそう…。



「ありがとうございます…先生。

 というか…今日も僕はエレナになるんですね…」


「もちろんよ。だって今日は、ラブレー君も来るんでしょう?

 そしたら…私が3人の男の子を連れ回す図にしか見えないわ…」


「………………」



 たし。かに。僕が女の子になる事で、ダブルデートに見せる訳ですね!?


「デッッッ!!?私はっそんなんじゃ…!!貴方達の保護者として…!」


「……ねえ先生。兄様本気だよ…」


「………………」



 先生は…眉を下げ、黙ってしまった。それでも僕のメイクの手は止めない。



「ね、先生。もしも、本当に年齢以外で兄様を拒む理由が無ければ…。

 一度、兄様が子供で学生だとか考えずに、ランドール・ナハトっていう男性を見て欲しいの…」


「…………うん…」


 言うても兄様成人しとるがな。…今日のお出掛けが、何かのきっかけになればいいな!







「で、先生。こちら僕からのクリスマスプレゼントでっす」


「あら、ありがとう!」


 僕の支度も終え、先生もばっちり完了。やっぱ先生美人だなー…大人の女性って感じ。格好いい…。

 で、待ち合わせの時間まで休憩中。兄様と先生からプレゼント貰ったし、僕もあげちゃおう。



「あら…綺麗なスカーフね」


「うっふっふー」


 先生は知るまい。まさかそのスカーフの柄が…僕から兄様に贈るネクタイと同じだとはなあ!!ちなみにエリゼには手袋だよ。大人っぽいやつ!



 そして時間なので家を出る。ドレスコードのレストランかあ。楽しみだなあ!




 ※※※




 お。兄様はすでに待っていた。

 にしても…スーツ姿の兄様、格好いい…。ただ立ってるだけで絵になるわ、本当に僕の周囲って美形ばっかだな…!

 周りの女性達の注目の的だよ、あそこだけ別世界だよ…。今からあの人に声を掛けるのか、僕ら…。



「あ」


 あ、気付かれた。

 こっちを認識した兄様は、ふわりと笑った。背景に花が咲いたよ…軽く騒めきが起こったよ…。



「に、兄様お待たせ。エリゼはまだみたいだね」


「ああ。そのドレス、よく似合っている。先生も、今日は一段とお美しい」


 かーーーっ!!歯の浮くようなセリフをまあ!先生を見なさいよ、赤面して固まっちゃってますぞ!


「……可愛いね」


「だろ?」


 あらやだ。普段キリッとした女性が今は、初心な少女のような反応を。コレが本当のギャップ萌えかー!!僕は兄様とグッと拳を合わせた。



「ラディ兄様、このドレスありがとう!それでコレ、僕からプレゼント」


「ありがとう。大事にするよ」



 その時ちょうどエリゼ登場。急いで来たみたいで、少し息を切らしている。

 よしよし、ちゃんと正装してるな。


「はあ、はあ…すまん、遅れたか?」


「大丈夫だよ」


 全然。むしろまだ10分前。

 だがこれで揃ったな。



「店はここから歩いてすぐだから、歩いて行こう」


 兄様はそう言って、バルバストル先生に手を差し出す。先生はゆっくりとその手を取り…歩き出した。



「見てよエリゼ、ありゃどっからどう見ても恋人同士だよね!」


「まあ…お似合いだと思うが。それより置いてかれるぞ、ほら」


「あ…ああ、うん…」


 エリゼも僕にすっと腕を出す。そっか、今日はエリゼが僕のエスコート役か…。

 そっと腕を組み、兄様達の後を追うのであった。







 ラディ兄様の選んだお店は、最高級とまではいかないがそこそこいいお店だった。多分高すぎると、先生が遠慮すると思ったんだろうな。


 ところでここは奢りですかね?



「いえ、私も払うわよ!?」


「いいんです。3人共、俺が誘ったんですから。

 …このぐらいも、させてもらえませんか?」


「んん…!じゃあ…お言葉に甘えて…」


 っしゃー!!僕らは先生の見えないところで腕をガシッと組んだ。


「(なんだこの兄妹…)」




 席に着き、先生と兄様はワインを。僕らはジュースです。

 15歳になったら僕も大人っぽく「ではこちらのワインを」とか言っちゃうもんね!



「ははは、お前は絶対に人前で飲むんじゃないぞ」


「そうだぞ。気を付けろよ」


「エリゼ、お前もだからな?こんな雰囲気の店で馬鹿笑いしてたら…速攻で出禁だからな?」


「…うぐ…」


「あら、なんのお話?」


「僕…じゃなくてわたしにもよく分かりません。

 実は以前…」



 美味しい食事が運ばれて来ても、アホな話ばかり。「君の瞳に乾杯…」とかやんないの?




「…で、それからちょくちょくエリゼの家に遊び行ってるけど、毎回お母様が出迎えてくれて」


「はあ!?ボク聞いてないぞ!」


「だって君迎えてくんないじゃん。勝手に部屋まで来いって言うから、部屋の前までお母様が送ってくれてるの」


「…今度からボクが玄関まで行く…!」

 


 という風に、基本的に僕かエリゼが喋ってる。

 2人はにこにこしながら聞いてくれて、時々言葉を挟む。

 あの…それでいいの?これ、2人のデートでは?



「いいのよ。もっと面白い話を聞かせて欲しいわ」


「「……!!」」



 先生が…デートを否定しなかった!!?

 僕と兄様は、テーブルの下で固く握手を交わした。




 その後デザートまでいただき、お店を出る。

 もう少ししたら花火が上がるから、場所を確保してあるんだって。



 さて…どこで消えるか!



「本当にやるのか…?」


「あたぼうよ。隙を見て逃げるよ!」



 今度こそ!冬花火というシチュエーションで2人きりにし、いい雰囲気を作る!

 その前に、こそっと兄様に声をかける。


「ちゃんと、お守り持ってる?」


「ああ、もちろん」


 よし!!健闘を祈る。





 花火を見るために、大勢の人が集めっている。おおう、こりゃ逸れたら大変だ。



「結構混んでるわね…」


「ここを抜ければすぐです。逸れないよう、しっかり握っていてくださいね?」


「ええ…」



 !今だ!!!




「うあーーー。はぐれたあー(棒)」


「あっ!…ったく!

 大変だー。ボクが追いかけるから、2人は先に行っててくれー(棒)」


 

「「…………」」




 っしゃー!!!完璧な演技で、お邪魔虫は退散成功!

 


「どこが完璧だ!2人とも苦笑いだったぞ!?」



 えー。まあいいさ、目標達成ですから!

 結構離れた所で、僕らは一息つく。ちょっと遠いけど、ここからでも花火は見えるっしょ。


 今頃…兄様達は無事目的地に着いているだろう。そこで手を取り合って、愛を語るのだ!

 覗きに行きたいが、場所がわからん!仕方ないので、こっちはこっちで楽しむか…。

 


「全く…はあ、ここで待ってろよ」


 ほ?エリゼはどこかへ行き…飲み物片手に戻ってきた。


「ほら」


「ありがと…あの、お金」


「いらん」


 そう言って彼は、僕の隣に立つ。口は悪いが紳士なんだなあ…。

 その後は特に会話もなく、花火を待つ。その時…僕の目の前に、見覚えのある白い毛玉が!?



「シャーリィ!こんなとこで会えるなんて!」


「セレネ!?…って、パスカルもいるの?」


「そうだぞ」


 上から降ってきたのはやっぱりセレネ!

 パスカルと一緒だったらしいのだが、何故か別行動をしている。



「セレネは()()()と一緒にいたくないんだぞ。

 ああ…シャーリィとなら…」


「あいつ…?」


 この口調からして、あいつとはパスカルの事じゃないだろう。

 

「あっ。僕がこの格好でここにいる事、パスカルに内緒にしてね!?」


「わかったぞ。という訳でセレネはここにいる。一緒に花火見よう!」


 それは構わないけど。パスカルは一体、誰といるんだろう…?

 

 僕は花火が始まる前に、エリゼにプレゼントを渡す。すると彼も「はい」とくれた。

 ふふっ、あとで開けてみよう!セレネはエリゼの頭の上で寛いだ。



「なんでボク?」


「シャーリィの細い首が折れたら大変だぞ!」


「遠回しにボクの首なら折れていいって言ってるな?」


「結構ストレートに言ってると思うけど」



 セレネが来たことにより、賑やかになったぞ。

 そんなやり取りをしていたら、ドン!!と花火が上がった。




「わー…綺麗…」



 ドォン!! パラパラ… ドン! ドオン!!



 と、次々に花火が上がる。

 僕らは感嘆の声を漏らしながら、自然と手を繋いでいた。


 今日はエリゼとセレネとだけど。いつか…皆で見たいな!

 ヘルクリスの背に乗せてもらおうか?上から見る花火も綺麗だろうなあ。


 …でも僕、もうすぐ退学するんだよなあ…。

 いや、友情は変わらないはず!この後いくらでも、機会はあるよね!




「エリゼ…僕とずっと、友達でいてね?」


「ああ…もちろんだ」



 約束だよ?そう言って、その手を強く握った。





 ※※※





 花火も終わり、人々も解散して行く。


 さて、兄様達はどこかな?大体の方角は分かるんだけどなあ…。

 近くの高台に有料の席があるって聞いた。僕らの席は無駄になっちゃったけど…すまぬ。



「なんだ、ランドール?セレネが匂いを辿ってやろう」


 おお、頼もしい!ってパスカルのとこに戻んなくていいの?


「いいの!こっちだぞ」


「痛って!!」


 セレネはエリゼの首をグキっと回した。


 案内されるがままに歩く。段々と人が減ってきて、視界も良好に。

 それでもエリゼと手は繋いだまま、なんかタイミング無くしちゃってね。




 すると…遠くに、兄様発見!!こっちに向かって歩いてくる!



「お…ねえあれ、いい雰囲気じゃない!!?」


「揺らすな!!どうせ、上手くいったんだろ」


 だよねそう思うよね!!手え繋いで見つめ合っちゃって…フウーーー!!!


「どうしようこのまま帰る!!?」


「ボクはまだ2人にプレゼント渡してないんだよ!!貰ってもないしな!」


 ちっ。仕方ない、行きますか!

 僕はエリゼの手を引っ張り、「早くー!」と言いながら兄様達に駆け寄る。







 

「……あ」





 だが…兄様達より少し離れた場所に。見えてしまった。




 パスカルが…誰か、可愛らしい女の子と腕を組んで歩いているのが…。




「!シャーリィ、ランドールはあっちだぞ!」


「…!?おい、早く来い!先輩達待ってんぞ!」


 僕はエリゼに腕をぐいぐい引かれハッとした。




「あ…うん」





 その時…パスカルと、目が合った気がした…。



ヨミとシグニは、互いに色や能力にシンパシーを感じている。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしかして一緒にいた女の子はパスカルのお姉さん…? [一言] 最後のセレス、絶対ショック受けてますね…大丈夫かな? ルシアンがカメラマンっぽくなってきて、とても可愛いです!
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