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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園1年生編
71/222

56



 なんとか送り返せないかなあ!!?え、無理?そりゃそっか!!

 もうどうしてくれようかこの死神は!!!僕はヨミの両頬をマスクの上からむぎーっとつねった。


「あふぇ、おふぉっへうお?」(※あれ、怒ってるの?)


「呆れてんの!!!精霊最強って、もう世界最強と同義だよね!!?

 僕は一体誰に襲われる予定があんのかなあ!?」


「え…予定あったの?よかった…じゃあこれで安心だね!」


 そーじゃねーんだわーーー!!!あああーーー!!ドラゴンが、形がハッキリしてきてらっしゃるう!!!



「大丈夫だよ…気性は荒いけど、彼はぼくらの誰よりも…人間っぽい感性を持ってるの。

 あんまり(へりくだ)りすぎても駄目だから、いつも通りに接してあげれば…きっとシャーリィなら気に入ってもらえるよ」



 人間っぽい…?あんなに、巨大なドラゴンが…?

 そんな疑問を抱く暇も無く…エンシェントドラゴンは完全に姿を現した…。




「………すご…」



 その姿は…大きさは教会ほどあり、広場にぎっちり詰まってらっしゃる。しかし畑や遊具は潰さないように気を使ってくれている。

 白銀に輝く鱗は、角度や日の当たり具合で虹色にも見え…形容出来ない程に、美しい。

 大きな翼、凶暴な牙や爪…恐ろしいけど、「カッケエ!!」という僕の心がそれを中和している。

 そして大きな2つの瞳で、僕を見下ろしている…ごくり。



「久しぶり…早速だけど、この子ぼくの契約者。

 ぼくがいない間…守ってあげて欲しい…。契約は嫌なら無理強いはしないけど、数日間だけでもよろしく。

 ああ、ぼくの未来のお嫁さんだから…絶対に傷付けちゃ駄目だよ…?」



 僕はその美しさに見惚れて…ヨミがなんか言ってるのを完全にスルーした。

 ドラゴンはヨミの言葉を受けて…僕に、鼻を近付けて来た。


 って、降ろすな!!!そして離れないでヨミ!!?



「お兄様!?どうしたのこれ!!」


 教会から皆何事かと出て来たが、ドラゴンの姿にビビって大半は逃げ戻った。ロッティとかは僕に駆け寄ろうとしてくれてたけど、ヨミが影で壁を作りストップをかける。


 それより…ドラゴンは僕の匂いをふんふん嗅いでいる。これでもかって程嗅いでいる。

 なんなら引き寄せられそうな程吸い込まれている。そして吐く時吹っ飛ばされる。


「わ、わ、わ!…ひあ!!?」


 そしておお〜きな舌で…べろんと舐められた。


「ちょっ、わぶ!待って、うおい!!」


 その舌だけで、1メートルくらいありますよねアナタ!?そんなんで舐められちゃあ、うひゃひゃ!!僕は転がされ、うはは!!



「ちょ待ちい!!なははは!うきゃー!!」


 なんか僕、鼻の上に持ち上げられちゃったよ!どういう感情コレ!?



「契約…してやってもいいってさ」


「え…そうなの?」


 地面に降ろされた僕は、ドラゴンの唾液でベトベトだった。その唾液をアクアに流してもらい、暖炉に乾かしてもらっていたらヨミがそう言ってきた。


「うん…もちろん、シャーリィが望むならね…」


 そりゃ…こんな格好いいドラゴン、契約してくれるってんなら超嬉しいが。

 背中に乗せてもらって、大空を飛んでみたい。なんかもう、首都まで数分で着くんじゃないだろうか?

 


「精霊が、舐めたり体を擦り付けたりして自分の匂いをつけている時点で、もうお気に入り扱いされてるんだよ…。

 セレネもそうだったでしょ?舐めたり、咥えたりするのはお気に入りだけ…。ぼくのキスも、同じ…」


「そう、だったの…?」


 え…じゃあ5歳のあの時。僕はすでに、セレネにお気に入り登録されていたという事…?




 でも、どうして?前から思ってたんだけど、どうして僕は精霊に好かれるの?


「んー…大半の精霊は、セレネにお気に入りされた時点でシャーリィには逆らわない。

 ぼく達最上級は…なんだろうね。まずセレネの匂いがしたから興味を持った。多分、それだけ…」


「それだけなの!?」


「うん…そもそも」


 ヨミが何か言いかけたと思ったら…ドラゴンが少し前足を持ち上げ、ずん…と大地を揺らした…!ぐらぐらと体が揺れるう!僕はヨミにしがみ付き、なんとか耐えた。地震か!!


「きゃっ!な、何!?」


「私を無視するな、早く契約しろ…だって」


 おおう…ソーリー、今名前考えます。

 



 んー…ドラゴンかあ…。セレネの時は月から、ヨミは黄泉からとった訳ですが。

 ドラゴンといえば!?とパッと思い付く名前が無いな。何か、特徴から付けようか。

 

「あの…ちょっと触ってもいい?」


 そう言ってみると、ドラゴンは僕に顔を近付けた。いいんだね!?

 では失礼して…おお、すべすべ。でも冷たくはない、温かくて、気持ちいい…。

 いや、名前にならんな。うーん、風の精霊か…エアみたいな…ウィンドじゃそのまんますぎ?


 ……セレネが月なら、星からとってみようか。そうだ、僕の誕生星。12月24日は確か…



「…… オミクロン・ヘルクリスだったかな…。ヘルクリスはどお?」


 僕が提案すると…ドラゴンは少し考え、頷いた。




「よし!僕はセレスタン・ラサーニュ。君はヘルクリス。誇り高きエンシェントドラゴン、どうか僕と契約してください」


 彼…ヘルクリスに両手を差し出し、そう告げた。

 今まで何度か感じた事のある…魔力が繋がる、身体の中が暖かくなる…。うん、ちゃんと契約出来たね。

 ヘルクリスはその大きな口を、ぐぱっと開けた。



「なかなかいい名前だ。褒めてやる」


「そ、そりゃどうも…」


「ふんふん…お前はセレスタンというのか?死神とフェンリルはシャーリィと呼んでいるが」


「ああ…出来ればセレスタン、もしくはセレスと呼んで欲しいかな。彼らに関しては、もう諦めてるので」


「分かった、セレス。私と契約した以上、この世界にお前の敵はいない!」


 ふふん!と胸を張るヘルクリス。…に、人間っぽい、のかな?




「お兄様ー!おにーさまーーー!!?」


 あ、忘れてた。ヨミ、影解除して!

 壁が無くなった瞬間、ロッティが僕に抱き着いてきた。そしてヘルクリスと僕を見比べる。


「どうなったの?さっき聞こえた声は…この精霊様の?」


「うん。彼はヘルクリス、僕の新しい家族だよ!」


「まあ…!凄いわお兄様!!」


「そうだ、私は凄いのだ」


 ふんすー!!とヘルクリスが鼻息を荒くするもんで、僕達はきゃーっと言いながらころころ転がった。

 あの、君もセレネみたいに小さくなりませんかね!?



「大きいほうが威厳があるだろう」


「確かにそうだけど、大きすぎて一緒にいられないよう」


「む……」



 ぽん!と音を立て、彼は縮んだ。ただ座ってるだけでも僕の身長と同じくらいあるけど…オッケー!

 そんな様子を見ていた子供達が…恐る恐るヘルクリスに近付いて来た。どうやら興味津々らしいが、最上級精霊だから無闇に近付いて怒らせたら…!



「なんだ子供達!私が格好良すぎて慄いているのか?ははは恐れるな、好きなだけ触れるがいいぞ!」


 とな?その言葉を受けたちびっ子達は…一斉にヘルクリスに群がった。



 その様子に僕や大人が目を丸くしていたら…ヨミが解説してくれた。



「言ったでしょ、人間っぽいって…。

 本来ぼく達は…許可もしてないのに名前を呼ばれたり、相手が気に入らなかったら容赦なく殺すけど…彼は違う。

「え…別に、殺す事無くない?ほら、反省してるっぽいし…」って言うんだ…。流石に契約者の命の危機とか、名誉を貶されたら躊躇わないけど。

 それに、子供には特に優しい…まあぼくらにとって、人間は全部子供みたいなもんだけど。無邪気な相手には無条件で甘いんだよ…。

 だから気性が荒くて乱暴者でも、力ずくに出る事は無いから安心して…。それでも、彼を侮るような生き物はいないんだけどね…」



 ……なにそれえ、あんなに大きくて怖いドラゴンが…!!!

 くっそ可愛い!!!コレがギャップ萌え!!?めっちゃキューンとするう!!




「ねえ、ヘルクリス…早速だけどお願いが!」


「ん、なんだ?誰か懲らしめるのか!?」


「ちっがう!あのね…僕を背中に乗せて、空飛んで欲しいな〜…って!」


 僕がそう言った瞬間…エアがショックを受けた。

 違う、君にはいつも助けられてるよ!?ただね、ヘルクリスなら…他の友人も、一緒に飛べるじゃない?

 エアはいつも重い荷物を軽くしてくれたり、可愛いから側にいてくれるだけで癒されるし!ね?


 と一生懸命言葉をかけたら…元気になってくれたぞ。ほっ…。

 これからどれだけ精霊が増えようと…誰も契約を解除する気は無いからね!皆大切な家族なんだから!



「よかろう!では…子供達、離れなさい」


「「「ええ〜…はあい」」」


 やっぱ優しいな彼は…皆が離れたところで、元の巨体に戻った。

 そして僕とロッティ、バジルを乗せて首都まで飛んで欲しいと願ったら…快く乗せてくれたぞ!ちびっ子達はまた今度ね!



「わあっ」


 風を操り僕達の体を浮かせ、自分の背中に乗せた。「しっかり掴まってろ!」と言うが、この辺掴まってていいですかね?



「それじゃ、僕達はこれで!!またねー!」



 教会の皆に挨拶をすると…ヘルクリスの巨体がふわりと浮かび上がった…!

 そして一瞬にして大空に…!



「うわあ…!」

「素敵…」

「凄いです…!」


 僕達の反応に、ヘルクリスは得意げだ。そうして首都に向かう…前に。伯爵邸に寄ってロッティ達は荷物を取りに行かなきゃ。

 猛スピードが出ているはずだが…空気抵抗がほぼ無い。気持ちの良いそよ風が肌を撫でる…。


 そうしてあっという間、1分も経たないうちに屋敷に到着!庭に降り…れないね、大きすぎて。

 まず上空で小さくなってもらった。3人だとぎゅうぎゅうになっちゃうんだけど、ヘルクリスの力は変わらないみたいで安定してる。




 今度こそ庭に降り、2人は中へ。僕はヨミに、中断された話を聞く事に。


「ねえ、ヨミ…さっきの続きだけど…。

 どうしてセレネのお気に入りだから、皆僕を気にかけてくれるの?」


 僕の問い掛けに、ヨミが影から上半身だけ覗かせた。



「うん…ぼくらにとって人間は、良くも悪くも等しい存在なんだ。地位も美醜も、どれもぼくらには意味を為さない。

 路傍の石と同じ。転がっている無数の同じ石の中から…どれか1つだけを目に掛けて愛でる事はしない。

 でもその石の中に…1つだけ、光り輝いていたり色が付いていたりしたら目に留まるでしょ?それがセレネに気に入られたシャーリィという事。


 手に取ってみれば…ああ、この子は暖かいな、美しいなとか。ぼくの事を受け入れてくれるんだ…とか。そういう事に気付くんだ。

 でも特別な人間は1人で充分。シャーリィの大切な人間はぼくにとっても大切だけど、愛でたいとは思わないんだよなあ…。


 まあ、そういう事…。なんでセレネが君を気に入ったのか。それは本人に聞いてみなきゃ分かんない…」


「そっか…なるほど、納得…。ヘルクリスも同じ?」


 横に座っているヘルクリスにも聞いてみた。


「当然だ。フェンリルにフェニックス…更には死神までもが目に掛けている人間だからな。

 それに匂いでどんな人間かは大体分かる。

 お前の契約している精霊達も…お前の事が大好きだと言っていた。

 人間の命など、私達からみれば一瞬の瞬き。少しくらい、手を貸してやろうと思っただけよ。

 …そういえばつい最近フェニックスが、人間に強制召喚されて…「懲らしめたった」と言っていたな」



 エ、エリゼ…!!

「火の精霊さーん」とかいう指定が無い限りは、術者と相性の良い精霊が喚ばれるはず。

 つまりエリゼは最上級の中ではフェニックスと相性がいいって事なんだろうけど…もしあの時喚ばれたのがエンシェントドラゴンだったら。

 面白い事になっていた気がする…。




 でもまあ、縁って不思議。

 きっとちょっとしたすれ違いだけで僕達は、全く違う運命を辿っていたんだろうな…。

 精霊達だってそう。もしも僕が前世の記憶を思い出さなかったら。

 セレネとはいつか、再会してたかもしれない。でもヨミやヘルクリスとは…出会う事も無かったんだろうなあ。



「…ありがとう、2人共。僕を見つけてくれて…契約してくれて」


 僕がそう呟くと…どちらも返事はせず、ヨミは僕の頭を撫で。ヘルクリスは頭を擦り付けて来たのだった。





「坊ちゃん…?そちらは…精霊殿ですかな?」


「あ…カリエ先生!」


 屋敷の玄関が開いたからロッティ達かと思ったら、姿を現したのはカリエ先生だった。

 僕はジスランの猛特訓が無くなって以来、怪我をする事が激減した。その為、先生と顔を合わせるのは夏以来なのだ。

 ちょうど良い、僕は周囲に誰もいないのを確認し…先生に近付き話しかけた。


「久しぶり、先生。今日は母上の診察?」


「ええ、お久しぶりです。いつもの定期検診ですよ。

 坊ちゃんはお怪我もしなくなり…ちと寂しいですが、良い事です」


「えへへ。……ねえ、先生。

 どうして伯爵…父上に、僕の胸にフェニックスの刻印があったと…報告しなかったの?」


「フェニックス…?」



 初めて生徒会室に呼ばれ、ルキウス殿下・ルクトル殿下・ラディ兄様と出会ったあの日。

 僕もあの後鏡で確認してみた。僕の左の鎖骨の下に、何かの紋様がうっすらと刻まれているのを。

 しかもやや熱を帯びていて…確かに、僕のものではない魔力を感じたのだ。

 いやあ、兄様に触れられて恥ずかしさで熱持ってんのかと思ったら、本当に熱かったんだわ。


 僕もちろっと調べたが、刻印を刻めるのは最上級のみ、精霊によって場所が変わるらしい。

 今現在世界中で確認されているのは、フェニックスは左鎖骨の下。リヴァイアサンは右手首。エンシェントドラゴンは首の後ろ。ドライアドは臍の下。ベヒモス(土)が右腕だ。



 もし先生が、これがフェニックスの刻印だと知らなくても。魔術的な何かであるとは分かるはずだ。

 だが先生は伯爵に報告しなかった。

 すれば恐らく伯爵は紋様について調べ、フェニックスの力が宿っていると知り。僕を何かに利用出来ないかと考えたはず。


 現に、今だって…僕がヨミと契約したと知った後。

 顔を合わせれば変わらず互いにいないものとして過ごすけど。裏…いや表では、「流石私の息子です」「我が家ならば、いつでも闇の最上級精霊殿と顔を合わせられますよ…?」と利用しまくってるのだ。


 多分今は、僕を男にしたのは失敗だったと思ってそう。

 女のままだったら…政略結婚とかに利用出来たもんね。皇子妃だって狙えたろう、残念でした!

 …それは置いといて。先生は伯爵の味方のはず。どうして…何も、言わなかったの?


 僕の言葉に、先生は何かに思い至ったようだ。だが…



「………ほっほ。坊ちゃんが何を仰っているのか、分かりかねますな」


「…どういう事?」


「…はて、儂も年のせいか、目が霞んでしまいましてねえ。ついつい小さな変化を見落としがちでして。

 その刻印とやら、健康に害は無いので?」


「無い、よ…むしろ絶好調だよ…」


「それは良かった。ああ、今更自分の見落としを旦那様に報告しては、儂は信用を失って解雇されてしまうかもしれませんなあ。

 良ければ見逃してもらえると、ありがたいですねえ」


「…………う、ん…。いいよ…内緒に、しておくね…」


「ほっほ。ありがとうございます。

 …おや、目にゴミでも入りましたかな?いけません、ほれ拭いなされ。

 では儂はこれで。今の坊ちゃんには頼もしい護衛が沢山いるようで…もう、怪我をするんじゃありませんよ」



 先生は僕に医療用のガーゼを差し出し、自分の診療所に帰って行った。

 ガーゼて。ハンカチは持って無かったの?全く……もう………。



「お待たせ、お兄様…お兄様!?」


「坊ちゃん、どうかされましたか?まさか旦那様が…!?」


「違う…違うの、2人共…。

 僕は…知らず知らずのうちに、守られてたんだなあって…気付いた、だけ。

 多分、ずっと昔から…」


 

 だから、大丈夫。少し泣いちゃったけど…!

 僕はガーゼでゴシゴシ顔を擦り、ポケットにしまい…にっこり笑った。




「さ、学園に帰ろう!!ヘルクリスで飛んで行けば、あっという間だよ!

 皆が授業しているのに、間に合うかもね!ヘルクリスの綺麗な姿を、全校生徒にお披露目しちゃおうよ!!」


「………ふふ、分かっているじゃないかセレス。

 そうとも、私の玉体は万人に知らしめるべきなのだ!さあ乗るがいい!学園とやらまで参るぞ!!」


 僕達のノリに、2人は顔を見合わせ…クスッと笑った。



「そうよね、行きましょう!」


「僕はあまり目立ちたくないのですが…まあ、いいとしますか!」


 また3人で、ぎゅうぎゅうに乗り込んだ。でもさっきは僕は先頭だったけど、今度は真ん中。

 前にロッティ、後ろにバジルの温もりを感じながら…大空に飛び立つ!!



 上空でヘルクリスは巨体に戻り、大きく翼を広げて飛んだ。




「じゃあセレス、ぼくはここで一度離れるね。大丈夫、何かあったらすぐ呼んでくれれば…ぼくは、すぐに駆けつけるからね」


「…うん!ありがとう、ヨミ。お願いねー!」


 

 ヨミはマスクを外し、僕の頬にキスをしてから消えた。ロッティがものすごい目をしていたが…僕とバジルは気付かない振りをしました。

 


 

 ヘルクリスの背中から見る景色は…いつも1人で飛んでいる時と、なんだか違う気がする。

 多分きっと、大切な人達と一緒だからだろう。


 流れる景色を眺めていたら、もう首都に着いてしまったぞ。

 すごい!馬車では何時間も掛かるのに…10分も掛かってないんじゃない!?



「学園はあっちだよ!行こう!」


「任せろ!!」



 ギャオオオオォォ!!と咆哮をあげ、学園に突撃い!!!



「ヒューヒュー!!かあっこいいー!ゴーゴー!!」


「きゃあー!あはは、楽しいわ!精霊様素敵!!」


「ははははは!!もっと褒め称えよ!!!」


「落ち着いてください皆様!!これはちょっとやり過ぎ…!」




 学園の上空で大きく旋回し、風を纏いながらヘルクリスは広いグラウンドに堂々と降り立った…ふ、完璧…。


 教室の中から、驚愕の視線を向ける生徒達が目に入るぜ…どーせ伯爵にはすぐ知られちゃうんだしい、先にドバーン!とお披露目だい!!





 だだだだだだだ!!!




 ん?複数の足音が…。



「何事ですか!!!」

「魔物か!!?」

「いえ、最上級精霊と思われます!!」

「な…!すぐに皇宮に連絡を!!」

「はいっ!!」



「「「………あら?」」」


「ああ〜…!やっぱりいいいい!!!」



 頭を抱えるバジルと、きょとんな僕、ロッティ、ヘルクリス。

 気付けば僕達は…警備の皆様に囲まれていた。お仕事ご苦労様でっす。



「なんだお前らは!!私を誰だと思っている、私を囲む時は称賛のみで良い!!!」


 ヘルクリスが大声を出すだけで、ビリビリと大気が震える。ちょっと…ヤバいかな?


「こ、言葉を発した!!?」

「いいか、刺激するんじゃないぞ!」

「隊長!!精霊殿の背に…子供がおります!」

「何ぃ!!?」



 あ、怪しい者じゃありません、この学園の生徒ですけん。


 僕達ちょっと…何か間違えましたかね???




「シャーリィ!!」



 そこに現れたのは、セレネを連れたパスカル。そしてエリゼも一緒だ。



「シャーリィ、エンシェントドラゴンと契約したのか。久しぶりだぞ」


「おおフェンリル。久しいな!!」


「セレネはセレネだぞ!」


「ふむ。私もヘルクリスという名を得た。今後はそう呼ぶがいい!」


 精霊2人は再会の挨拶をし。



「おい、セレスか!!?お前一体何やってるんだ!!!」


「すみません、あれは学園の生徒で、俺達の友人で…!」



 エリゼとパスカルは、ヘルクリスの足下で何やら言っているぞ。


 おおっとぉ、ルキウス殿下にルクトル殿下も走って来たぞ。ラディ兄様も、先生達も……。





「………………このまま逃げちゃおうか?」


「そうしましょう、誰もいないどこかへ行きましょう」


「駄目!!!です!!!!」



 だよね!!



刻印を与えたら契約が出来なくなるので、セレネは文字通り唾つけておいた。

セレスタンが幼すぎてまだ魔力が安定して無かったので、成長して自分の名前を呼んでくれるまでひたすら待っていた。


という設定を今考えました。

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