表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園1年生編
60/222

49



 その後僕達は学園に戻り…束の間の女の子タイムは終了した。

 にしても、医務室が先生の荷物だらけ。んもう。


「それ、全部開けてみて」


「え…いいんですか?」


「いいのよ」


 そう言いながら先生も開けている。んじゃまあ、この袋から…。


 出てきたのは…服。でもなんか、小さくない?先生着れるの?これ。



「これは…貴女のよ」


「……え?」


 出てくるものは全部、サイズもデザインも少女向けのものばかり…大人の女性が着るようなもんじゃない。

 全部…僕のため?なんで…



「いただけ、ません…こんなに沢山…」


「…貰ってちょうだいな。気にしないで、私が好きでやってる事なんだから。

 それに…急にデートする時、可愛い服が無いと大変よ?」


 先生はウインクしながらそう言った。デートって…相手が、いないもん。


「じゃあその時は、また私とデートしましょ?」


 先生…。しかもこの服、コート、ブーツ…僕が「いいなあ」って思ってたやつ…見てたの?

 先生が持っている手鏡も、宝石箱も。リボンも…全部僕が手に取って、棚に戻したやつ。


「ふふ、後ろからバッチリ見てたわ!名残惜しそうに棚に戻したのを厳選したんだけど…喜んでもらえたかしら?」


「うん…うん!!」


 うん、すっごく嬉しい…!思わず先生に抱き着いて…泣いた。

 ありがとう、本当に…。しかも先生は、この荷物は全部預かっていてくれるって。必要な時に渡すからって…。


「そうだ、今度私の部屋に遊びに来る?メイクも教えたいし、恋愛小説貸すわよ?男装ヒロインものとかあるわよ」


 それはまあ、うん。

 でも、本当にいいの?どうしてこんなに良くしてくれるの?



「貴女は今までずっと苦労してきたんだもの。このくらい、ご褒美には少なすぎるくらいだわ。

 まあ教師としては出過ぎた真似だけど…貴女の笑顔を見たいと思っちゃったんだもの、仕方ないでしょ?

 今日は私の話も聞いてもらったし…それに、その…いずれ、姉妹になるかも、しれないし…?

 いやでも買収しようとしている訳じゃないからね?そこは勘違いしないでね?」


「ん…?僕と先生が、姉妹?んんん…?」


 なんで?僕は先生の家の養女にでもなるのかしら?それとも先生が僕の家に?

 そうでもなければ、結婚して義姉妹になるくらいしか。でもうち、男兄弟いないし。先生の弟さんと、僕かロッティが結婚するのかしら?弟さんいるの?


「いいえ…私は弟と妹が1人ずつ、どっちも既婚者よ…」


 なら…ん?そういや僕には血の繋がりは無いが、(ソウル)で固く結ばれた兄様がいるな。


 


 ま、さ、か。




「まさか先生に言い寄ってる5年生って…ラディ兄様!!?」


「言わないでー!!!!」


「きゃーーーーー!!!!」



 ウッソーーー!!やるじゃん兄様、ひゃー!!!いやん、僕頑張って架け橋にならないと!?


「じゃあ姉様だね!!?んー…ルゥ姉様!!」


「いいわねそれ…」


「でっしょー!?」


「でも気が早い!!!」


 早いってことは、いずれそう呼んでいいのね!?

 いかん、こうしちゃおれん!!僕は荷物を丁寧に分けて、纏めて。遠慮なく先生に預かってもらう。

 今着ていた服も綺麗に畳み、制服に着替えてカツラもカラコンもメイクも取って…いつもの僕に戻った!



「先生、鍵閉めますから早く出て!!」


「どうしたのよ急に…」


 いやあ?ちょっと…用を思い出しまして。

 あ…でもアポ無し訪問は駄目か。よし、ルシアンを頼ろう!!



『ルシアンへ

 今何してる?僕ちょっとラディ兄様に会いに皇宮に行きたいんだけど…行ってもいい?

 セレスタンより』


 という手紙を送る。するとすぐに返事が…『いいぞ。今ちょうど外にいるから帰りに学園に迎えに行く』と。よっしゃ!!!



「一応確認するけど…貴女は、ナハト君の事好きじゃないの?」


「兄様にそういった感情は一切ありませんのでご心配なく!!」


「そう…?」



 僕の答えに先生は、頬をうっすら染めながら安心したように微笑んだ。

 これは…以前ルネちゃんが言っていた、恋する乙女の仕草!?確かにこりゃ可愛いわ…きゅんきゅんしちゃうわ。





 先生と別れ、僕は迎えを待つ。するとすぐに来た。

 あれ、エリゼもいる?そっか、2人で街行ってたのか。彼らは揃って髪を茶色にしてるから、一瞬馬車間違えたかと思ったぞ。

 そいやと乗り込み、しゅっぱーつ!



「ごめんねルシアン、急に」


「いや…構わないが…」



 …?何故か2人共、僕と目を合わそうとしない。

 今日どこ行ってたの?と聞いても…「買い物」としか答えてくれない。なんなの…。


「でもどうして髪染めてるの?」


「お忍びだからな。ほら、服も庶民っぽいのにしてみたんだ」


 おお、確かに。シンプルな服だが生地と仕立ては最高級。いいとこの坊ちゃんくらいの変装だな。次は僕も、髪染めようかな?






 ※※※





 

 当然ながら兄様はお仕事中だった。

 なのでルシアンの部屋で待とうとしたら…



「おおい!!」


「げえ!?」


 廊下の向こーうから大きな声を轟かせるのは…エリゼのお祖父様、テランス様だ。

 エリゼは彼が苦手なのだろうか、ルシアンの後ろにさり気なく移動した。



「殿下、御前を失礼!!我が孫が何かご迷惑をお掛けしてはおりませんかね!?」


「いいや、彼には色々助けられているよ」


「なんと有り難きお言葉!!

 エリゼ!!勉強をサボってはいまいな!?」


「ちゃんとやってますって!」


 おお…エリゼが皇族と最上級精霊以外に敬語使ってんの初めて見た。

 テランス様はエリゼの返答に満足したのか、次は僕に視線を向けた。何かご用で?



「おお、セレスタン君!今時間はあるかな?」


「はい、5時まででしたら」


 この人は大声がデフォルトなのだろうか。目の前でバリトンボイスの大声量は勘弁してくれ。いい声なのに耳が痛い…。



「ならば少し付き合ってはもらえんかな!!?」


「あ、はい」


 またヨミについて聞きたい事でもあんのかな…。

 そう思い了承する。すると…急激に視線が高くなった。



「うわわ!?」


「ははは、セレスタン君は軽いなあ!!エリゼの半分位しか無いのでは!?」


 それは流石にない。

 なんとまあ、僕はテランス様の逞しい腕に抱かれてしまった。すごい安定感…って、2人はどうするの?


「ふむ…私は部屋に戻ろう。其方はどうする?」


「殿下にお付き合いします!」


 逃げた。ぴゅーっと逃げた。

 そして僕はそのまま…魔術師棟に連れて行かれるのであった。







 皇宮から少し東の建物、ここが魔術師の総本山か。外観は普通の塔だな…。

 抱えられたまま中に入る。もっとおどろおどろしいのを想像していたが、普通に受付っぽいのもある…誰も座ってないが。


 ロビーのような場所には、数人が談笑していた。だがテランス様の姿を見た途端、立ち上がり敬礼する。

 そして僕の事を見て…なんか、目輝かせていらっしゃる?


 そして奥のほうから…誰かが走ってくる。眼鏡を掛けた、30代くらいの男性だ。



「総団長!どこ行ってらしたんですか?ってその子は…」


「おお!!客人だ。皇宮に来ていると聞いてな、足を運んでもらった!!

 セレスタン君、昨日も見たと思うが、こいつは儂の副官だ!!」


「ちゃんと紹介してくださいよ…。

 では改めて、魔術師団総副団長のロック・ブランと申します。どうかお見知り置きを、精霊姫殿」


「上から失礼します。セレスタン・ラサーニュです。よろしくお願いします、ブラン様。

 ………ん?精霊、姫…?」


「あ」



 あ?どゆこと???

 僕はじーっとブラン様を見る。ご説明願おうか?

 彼は暫く目を泳がせていたが…観念したのか、教えてくれた。



「その…魔術師と騎士の間で…君は「精霊姫」と呼ばれているのだよ…。

 ちなみにマクロン君は「精霊王」だ。尊敬の念を込めてそう呼ばせていただいているよ!」


「なんっでですか!!?いや百歩譲ってこっ恥ずかしい異名は容認しますが、なんで姫なんですか僕!?」


「ばっはははは!!!仕方あるまい、昨日の可憐なセレスタン君と凛々しいパスカル君の姿を見てな、そう広まってしまったのだ!!」



 ううう〜…!!!じゃあ今日すれ違った騎士様達は皆、心の中で「あ、精霊姫だ」「あれが?」とか考えてたんか!?

 ……もう、いいや…勝手に言わしとこう…。



「と言っても、皇族の方々の前で王とか姫とか…不敬ではありませんか?」


「大丈夫、名付け親は陛下だから!」


 さいですか。ブラン様、イイ顔でサムズアップやめてくれませんかね。

 僕はだらんと脱力したまま、奥の部屋に運ばれて行った…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ