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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園1年生編
48/222

ルシアンの成長2

パスカルの暴走をお楽しみください。



 〜遡ること数分前〜



「遅くなってしまったな、子供達は楽しんでいる頃だろうか」


「仕方ありませんよ、兄上。今からでも混ぜてもらいましょう」


「そう…ですね。ブラジリエはその剣、セレスにあげるんだろう?」


「あそこまで欲しがられたらな…。というか、ナハトはセレスと親しかったんだな」


「ふっ、まあな」


 皇宮内の廊下を歩く年長組の4人。彼らは大会の後、それぞれ忙しくしていた。

 各々用事を済ませた後、時間を合わせて年少組のパーティーに合流する予定だったのだ。



「それにしても、ブラジリエ。お前はもちろん、弟も素晴らしい腕前だったな」


「お褒めに預かり光栄です、皇太子殿下。

 弟につきましては…身内の欲目と存じてはおりますが、本当に優秀な子です。

 私が1年生の時、あそこまで強くありませんでした。この私を追い抜くのも時間の問題でしょう。

 そしてそんなジスランに迫ったセレスタンも…本当に、将来が楽しみです」


「ああ、私もそう思う」



 長い廊下を歩きながら、話題に上がるのはやはり大会の様子。


 そんな彼らは知らない。今ジスランは酔い潰れ、セレスタンは妖怪半裸男に絡みつかれていることを…。





「僕はラサーニュ君がちょっと心配だったんですが…不要でしたね、むしろ失礼な考えでした」


「俺もそう思います。あんな細腕で小柄なものだから…ゲルシェ先生も、いつでも動けるように構えていましたし」


「そうだな。ブラジリエ、ラサーニュの強さの秘訣はなんだか分かるか?」



 ルクトルは女の子であるセレスタンが男に混じって剣を振るうことを危惧していたが、それは要らぬ心配だったと安堵している。

 むしろ…皇国初の、女性騎士団長となるのではないか?と期待していたりする。

 彼女の先祖にあたるセレスティアも女傑として名を馳せていたが…当時は女性の立場が殊更低く、いくら実力があろうと長が付く役職には就けなかったのだ。

 現在も女性騎士の数は少ない、セレスタンが先駆けとなってくれれば…と思っているのだ。


 ランドールは今、ジェルマンの手前ルキウス達を敬っている。そしてセレスタンが褒められたことを、本人以上に喜んでいた。


 

 ルキウスにセレスタンについて尋ねられたジェルマンは、重い刀をなんとか持ちながら答えた。



「そうですね…まず…練習量。

 彼は才能があるかと問われれば、剣に関しては凡人だと言わざるを得ません。ですがそれを補って有り余る努力の結晶です。


 そして、基本に忠実です。

 彼は初めて剣を振るうようになってから…素振りを欠かしたことが無いと聞いております。

 もちろん怪我や病気の時は除きますが。基本を疎かにする者は、応用などとても出来ませんから。

 彼は身体に「こういう時はこうする」というものを叩き込んであるのでしょう。なので自然と身体が動いているように見えた印象ですね。

 彼の強みはあの速さと正確さです。そして一々脳からの命令を待つことなく、反射的に身体を動かすことにより、更に速さに磨きがかかっています。


 あと、自分のスタイルを完璧に把握していますね。

 さっきナハトが言ったように、彼の最大の弱みはあの細身から来る非力さです。

 ですのでパワーを捨て、手数で勝負することにより…正反対のスタイルであるジスランに食らいついていました。

 逆に無駄に筋肉が付いたらスピードが落ちる可能性もありますし、彼は今のままでいいと思います。

 

 他にも色々ありますが…代表的なのはこの3点と言えるでしょう」



「ふむ…」


「だろう?セレスはすごいだろう!」


「なんでランドールが得意げなんですか…」



 ルキウス達はジェルマンの解説に舌を巻き、セレスタンの強さを改めて実感していた。



「まあ正直、なんであの子がこの剣を欲しがるか分かりませんけどね」


 それには全員同意した。

 彼らは全員この刀を、「世界一持つのが似合っている」とか適当な理由を付けて持ち主に相応しいことにして、セレスタンにあげる気満々だった。






「………ん?何事だ」


「…あっ、皇太子殿下!」


「そのままで良い。何かあったのか?」



 彼らが年少組が集まっているであろう談話室の前にやって来ると…メイド2人と騎士が2人、扉の前でうろうろしていたのだった。

 明らかに様子がおかしいので、礼をやめさせ尋ねる。



「その…先程から部屋の中より…悲鳴や笑い声や色々聞こえて参りまして…」


「???中に入ればよいではないか」


「畏れながら、第三皇子殿下より…「呼ぶまで入ってはならない」と命を受けてございます」



 4人は顔を見合わせた。一体中で何が…?


 確かに皇子に命じられれば、彼らは聞くしかない。ここはルシアンより立場が上なルキウスとルクトルが動くしかなかった。



「ふむ…私達が様子を見よう。お前達は少し下がりなさい」


 彼がノックをして「ルシアン、いるか?」と声を掛けるも、中からは…ルシアンの絶叫と、エリゼの笑い声が聞こえるばかり。

(※ちょうどパスカルがセレスタンにキスしまくっている辺り)

 

 仕方ないので少し待ってからルキウスは扉に手を掛け、ゆっくりと開けた。


 そこには……。





「「「「…………………」」」」






「あははー、2人とも、なっかよしい」


「良くないっ!!いいから其方は逃ーげーろー!」


「にげ…?よっこいしょ…あう、たてないー」


「大丈夫か?セレスタン!くそう、離せ殿下!!」


「離してたまるかあ…!」





 ルキウス達の目の前には…床に転がるジスランとバジル。


 ソファーの上で寝息を立てるシャルロットとルネ。


 椅子に座り口元を押さえる青い顔のエリゼ。

 

 そして…パンツ一丁で暴れるパスカルと、それを取り押さえるルシアン。そんな2人を笑いながら眺めているセレスタンという…混沌を極めた現場であった。






 暫く呆然と眺めていたが…我に返ったルキウスが声を掛けた。

 それに反応したのは、今この場で一番まともそうなルシアンだった。




「兄上……あっ!!」



「うきゃあーーー」



 だがルシアンがルキウス達の登場に気を取られた隙に…パスカルが拘束を抜け出し、磁石のようにセレスタンに抱き着いてしまった。




「なっななな何をしてるんですかマクロン君!!!」


「こら、離れろ!!」


「嫌ですー!!!」



 セレスタンが女の子だと知るルクトルと、彼女を弟として可愛がっているランドールは焦った。

 なにせパンツ一丁の男が、可憐な少年(少女)にセクハラしているもんだから…色んな意味で焦った。

 だが続くパスカルの言葉に…全員固まってしまう。




「俺は…セレスタンが好きなんだ!!!

 愛しい相手に触れたい、誰にも渡したくないと思って何が悪い!!!?」




「………んえ、パスカル…?」





 ※





 今…なんて言った?

 私の腕から逃れたマクロンは、セレスを抱えて…「好きだ!!!」と断言しなかったか…?


 もしや、彼はセレスが女性だと知っているのか…?



「ルシアン…彼も秘密を知っているのですか?」


「兄上…いえ、私はそうは聞いていませんが…」


 ルクトル兄上に耳打ちされるが、私にも分からない。

 なので私は、今にも天に召されそうなエリゼに問い掛けた。


「おいエリゼ、マクロンはセレスを女性だと思っているのか…!?」


「うぶ…あー、いや…多分、男だと思ってる上で好きなんだろ…。

 最近怪しいとは思ってたが…明らかにアイツ、セレスに甘い顔してるし。

 アイツの恋愛対象が男なのか、セレスだけ特別なのか…そりゃ本人に聞いてみ…う!!」


 そこまで言って、エリゼは廊下に飛び出した。恐らくトイレに向かったんだろう…。

 私とルクトル兄上は顔を見合わせた。そして…。




「んー?パスカル、ぼくこと好きなの?」


「ああ、好きだ…大好きだ…!!」



 未だ酩酊状態のセレスと、彼女を膝の上に乗せて抱き締めるマクロンが…!またキスしそうな勢いだ、ひとまず離さないと!!


「こらマクロン!!かの…彼が好きならば、順序を踏め!!」


「順序……?このままベッドか!?」


「このむっつりがっっっ!!!」


 彼の頭をべしーん!!と叩いた。いい音…じゃなくて!!


 

「兄上!!詳しくは後で説明しますが、今の彼らは酔っ払っています!!

 責任は全て私にありますが、今は手を貸してくださいいい!!!」


「…わかった。ブラジリエ、床の2人を頼む。それとさっき飛び出したラブレーを見てきてくれ。

 ランドール、女性騎士を2人呼んできてくれ。ソファーの2人を運んでもらう。

 それとその2人は…お前達に任せて平気か?」


「「「「はい!」」」」


 兄上はテキパキと指示をして、侍従に客間を7室準備させ部屋を出て行った。

 恐らく父上への報告と、それぞれの家へ連絡するのだろう。うう、私のせいで余計な仕事を増やしてしまった…!!


 いや、反省は後だ!まずこのパンツ野郎をどうにかしなくては!!




「んん…!」


「「こらーーー!!!」」


 マクロンがセレスの首筋にキスしてる!!私がマクロンを、ルクトル兄上がセレスを引っ張るが全然離れん!!!


「マクロン!!!セレスは…男だぞ!お前は男が好きだったのか!?」


「違うわ!!俺は、セレスが好きなんだ!!」


 埒が明かん、なんなんだ一体!?


「ルシアン、落ち着きましょう」


 兄上…。私達は一度彼らから距離を取る。無理をすると、開き直ったマクロンがセレスを脱がせそうな勢いだ…!

 しかしこの状況、どうすれば…!






「………今のお話、本気かしら…?」



「……あ。ラサーニュ嬢、起きてたのか…?」


 彼女の顔は、怒りとも悲しみとも違う…静かに燃えている…。

 そしてソファーから降り、ふらつきながらセレスの肩に触れて引っ張った。

 マクロンも酔いながらも女性には強く反抗出来ないようで、あっさりセレスを離した。今だ!!!


「ぶっ!!?」


 まず、マクロンに服を着せる!!下は…布巻いとこう!!



「ねえパスカル様…お兄様を好いているとは、どういうことかしら?」


「………そのままの通りだ。俺は…」


「お兄様が男性だと承知の上よね?それによる反発、障害…全て理解した上での発言よね…?」


 おお…私達が口を挟む余地がない。

 暫くラサーニュ嬢とマクロンは、床に座り込みながらも睨み合いを続けた。


 そこに…エリゼを連れてブラジリエ(兄)が戻り。

 女性騎士を呼びに行ったナハトが戻り。

 報告を終えたであろうルキウス兄上も戻って来た。

 

 マクロンも落ち着いたようなので、早く全員休ませて…

 

 

「……俺は!!!初めて会った時から…ずっとセレスタンが好きだった!!!」



 !!?なんだいきなり…!



「おぐぇっ!」


「あ、すまんジスラン」


 突然大声を出したマクロンに驚いたのか…ブラジリエ(兄)が持ち上げようとした弟を落とした。

 そして慌てて扉を閉める。外にいる騎士やメイドに聞かせないよう配慮したのだろう。




「幼い頃は、彼を女の子だと思って恋に落ちたさ!!

 成長して再会し、男だと知ってもその感情は消えず…ずっと燻り続けた。

 

 そして今の俺は!セレスタンが男だろうと女だろうと関係無い、今の彼を愛している!!

 彼の笑顔を守りたいし、これ以上涙を見たくない!!

 彼さえ望んでくれれば…!俺は、生涯共に歩みたいと思っている!!!

 その為の障害など、全て乗り越え排除してみせるさ!!!」



「………へえ…?」



 ……………!!!!な、なんという熱烈な告白か…。こんな大勢いる前で…!

 全員唖然としている、そしてラサーニュ嬢以外誰も口を挟めない…。



「お兄様が望むなら、ねえ…?

 ではお兄様が貴方を拒絶したら…潔く諦めるのかしら…?」


「……!!」


 どう答えるつもりだ、マクロン…?誤魔化しは今の彼女には逆効果だぞ、本音で答えないと…!

 彼は手を握り締め、ラサーニュ嬢の目を真っ直ぐ見た。



「…もちろんだ。俺の幸せは、セレスタンが幸せになること。彼が俺以外の誰かを選ぶなら…全力で祝福する。

 だが、それでも…拒絶されても…。

 彼が…誰か、本気で愛する人と出会うまでは…俺は、諦められない…!!」



 

「……………そう」




 場を静寂が支配する。扉をノックする音が聞こえるが…ルキウス兄上がストップを掛ける。今の空気に口を出せる強者はいな




「えへへ〜ほんと?照れるう」




 いた。

 気が抜ける声を出し…へにゃっと笑うのはラサーニュ嬢に寄りかかっているセレスだ。




「うーん、パスカルう…まだそんな初恋なんてひきずってたのね〜…」


「……そうだ、そうだよセレスタン。初めて会った6歳のあの日から…君は俺の…」


「うう〜ん…なんかねえ、パスカルって思ってたのと違うね!」



「「………へ?」」



 マクロンとラサーニュ嬢がハモった。セレスは一体、何を…?



「ぼく、パスカルって腹黒だと思ってたの!」


 …なんで?私含め、その場の全員が彼女の突拍子もない発言に戸惑う。


「パスカルってさ〜…一人称が私で、敬語キャラが似合うと思わない?

 そんでちょっと辛口でー、好きな人に対してだけ甘々でえ、ほら、こんな眼鏡かけて」


 セレスが自分の眼鏡を、マクロンに掛けた。彼は無抵抗でされるがままだ。


「こう…眼鏡クイってしてえ…『ふっ、私を誰だとお思いですか?』『貴方方と一緒にしていただきたくありませんね』とか言っちゃうの、似合うと思わな〜い?」




 …………想像してみた。



 

「…………んぶふっうぅ…!!!」


 …いかん、ツボ…!!

 しかも私だけでない、兄上達4人も笑いを堪えている…!!


「ふあははははは!!!確かに、ばはははっ!!」


 エリゼは遠慮なく笑い飛ばしている。また吐くんじゃないぞ。



「……なあセレスタン…君は、どう思う?

 俺は男だから…君の隣には、立てないか…?」



 っと、笑っている場合じゃない。パスカルは今にも泣きそうな顔で、セレスに問い掛ける。セレス…なんて返事する気だ…?





「………ねえパスカル。もしも…


 もしも僕が地獄に堕ちるとしたら…君は、どうする?

 一緒に堕ちてくれるのかな?」





 …なんで、そんな事…?

 セレスは穏やかに微笑みながら、そう言い放った…。

 




「…そうだな…。もちろん、最善手は引っ張り上げること。

 でも、それが不可能なら…


 君と一緒なら、地獄の道行も悪くない。


 そうだ、堕ちた先を住み良い場所に造り変えるのも良いかもしれないな」



「……ありがと…」



 セレスは小さく返事して、マクロンにぎゅっと抱き着いた。

 それが、告白の返事にも思えた…だが。


「僕ね…最近失恋したばっかだから…すぐには、考えられないの…」


「ああ、それでいい。いつか…俺のことを見て欲しい」


「うん…ね、パスカル」


「ん?」


「僕…君が食事してる姿とか…品のある仕草が好き。

 こうやって僕を抱き締めてくれる大きな手も、僕の部屋を訪ねる度にお菓子を持って来てくれる気遣いも。

 このサラサラの青い髪も、目元も……」


「…セレス、タン…」



 彼女はそれだけ言うと…眠ってしまった。今のって…?

 



「そう…それがお兄様の答えなのね」


「…シャルロット嬢、俺は…」


「ロッティよ。今後そう呼びなさい、パスカル」



 ラサーニュ嬢は、マクロンの腕の中で眠るセレスに優しい目を向けて…ゆっくりと立ち上がった。

 


「私も貴方と同じよ。お兄様の幸せが私の幸せ。

 そのお兄様が望む相手なら…女性だろうと男性だろうと、ゴリラだろうと私は祝福するわ」



 私は今、生まれて初めて自分を褒めたいと思った。というか、吹き出さなかった私を誰か褒めて欲しい。なんでここでゴリラ!!?



「今後私は、貴方の邪魔はしないけど協力もしません。

 精々頑張って、お兄様を振り向かせてみせることね」


「ああ…感謝する、ロッティ」



 そのままラサーニュ嬢は…ルネの隣に座り、眠った。




「……全員運ぼう」




 ルキウス兄上の言葉に、皆動き出した。





 ※※※





 その後私は、こってり絞られた。

 兄に、父に、姉に。

 

 

「あれを飲むなと言っただろうが!!」


「酒だと言ってくれれば良かったじゃないですかあ!!」


「言ったところで、信じないか承知の上で飲もうとするだろうが!!」

 

 たし、かに。我ながら、兄上の言う通りだと思う…。


 結果的に7人を巻き込み、沢山の人に迷惑をかけた…。

 私がお説教から解放されたのは、深夜になってからのこと。自業自得だよな…。




「………ん?」



 部屋に戻る廊下の途中…窓の外に目を向けると。池の近く、石の上に誰か座っている?

 気になったので近付いてみたら…あ。



「マクロン…」


「…?で、殿下!?」



 後ろ姿からしてもの凄い沈んでるなと思ったら…この様子じゃ、酩酊時の記憶があるみたいだな…。



「その、すまなかった…。私のせいだ、明日皆には正式に謝罪するから…」


 そのまま立ち去る訳にもいかず…少し距離を取って私も座った。


「…本当ですよ…!あんな、勢いで言うつもりじゃなかったのに…」


「…しかも、人前で、な…」


 マクロンは更に落ち込んだ。…ごめん。

 彼はまだ酔っているのか、ぐちぐち文句を言い始めた。



「そもそもあんたは!最近マシになったと思ったのに…後先考えずに他人を巻き込んで!!

 皇族の自覚云々以前の問題ですよ、分かってるんですか!?」


「うん…反論できん…。


 …しつこいようだが、本当にセレスが好きなんだな?」


「……はい。この気持ちは変わりません」


「そっか、うん…わかった」


「殿下…?」


 今ここで彼に真実を告げることは容易いが…それは、絶対に駄目だよな。



「今日の詫びという訳でもないが…私は、今後お前の恋を全力で応援しよう」


「………なんか、余計拗れそうな気がしますが…」


「はは…」



 その後も少し会話をして、私達は部屋に戻った。





 そして今日。

 ダイニングにはすでに、兄上達4人が揃っていた。挨拶をしたが…どうやらもう、怒ってはいないらしい…ほっ。



「ジスランもな〜…諦めなければ…いや、無駄なことか」


 ブラジリエ(兄)が何かブツブツ言っているが聞き取れない。

 ナハトがセレスの前にマクロンを座らせたいと言うので…私は1つ席を空けて座った。



 次にダイニングに現れたのは、マクロンだった。



「………おは、よ、う、ござい、ます………」


 もの凄く、気まずそうだ……。扉から半分だけ体を覗かせ、中々入って来ない。



「あの……………昨日のアレは……忘れて、ください………」


 そして蚊の鳴くような声で言った。それに対する返答は。



「……すまないが、私は出来ない約束はしない…」

 

「ぜ、絶対に誰にも言いませんから!」


「なんでもいいが、セレスを泣かせることだけは許さんぞ!!」


「……頑張れよ!!」


 どうやら誰も、忘れる気は無いらしい。


 そのままマクロンはとぼとぼ歩き、私の隣に座らせた。




「……セレスが忘れてるといいな?」


「…………」



 げしっ、げし!

 

 マクロンは無言で突っ伏しながら、私の椅子を蹴っ飛ばす。

 この男、私に遠慮しなくなったな…。セレスやエリゼとも違うこの関係性、悪くない。



 その後ルネが現れリオが来て、セレスが起きて来た。





 そうして私達は……2人を見守ることにしたのだった。





副題ルシアンなのに、全部パスカルが持ってった。


セレスタン・ジスラン・バジルは記憶が残らないタイプ。

ルネは寝る前までは覚えてる。

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