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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園1年生編
21/222

18

注:教会周辺の簡単な挿絵あり


「こちらの資料によると、ラサーニュ領に今まで孤児院及びそれに準ずる施設は無かったとされている。

 孤児達は一体どうしていたんだ?」


「それが…路上生活をしておりましたの。

 お兄様が先日発見され、保護に至りました」


「なんだと…?何故伯爵は今まで一切の対策もしていないのだ」


「それは私達にも分かりませんわ。父は私はおろか、次期当主であるお兄様にも運営に関する資料は見せてくださらないそうなので」


「はい。各世帯の構成や職業、収入などの資料に目を通した事はありますが、伯爵…父はそれ以上は僕にも見せようとしませんでした。

 ただ妹付きの執事であるバジルの言葉によると、先代伯爵が当時の孤児院を封鎖したとの事です」




 馬車に乗る前のムードは霧散し、現在真面目なお話の真っ最中でございます。まあロッティが僕の膝の上に横向きに座ってるのがなんともシュールだけど。

 もしかして殿下、移動中この話をしたくて僕を同席させたかったのかな?変態皇子とか思ってごめんよ。


 基本的に皇太子殿下とロッティが話し合い、僕が口を挟む感じだ。

 今度は第二皇子殿下も発言を始めた。



「君達は、現当主は無関係だと思いますか?」


「いいえ。父が知らないはずがありませんから。その上で放っておいたか、町長あたりが父に徹底的に隠していたという事になります」


「何故そんな事を…今回のように補助金の申請をすればいいものを」


「そうですね、殿下。ここ数年の資料を確認致しましたが、ラサーニュ領の運営はギリギリのようです。

 すぐに許可も下りたでしょうに…」


 それは、ランドール先輩が今広げている資料が不正に書かれた物だからです。多分だけど。


 それを知っている僕達だが、今は何も言えない。ごめんなさい、いつか必ず報いは受けます。





 真面目な会話は、馬車が止まった事により終了。ここからは歩きだ。僕らだけでなく殿下達の護衛も4人いるから…大所帯になっちゃったなあ。



「あの…すみません、殿下。少々お願いがあるのですが…」


「?なんだ、言ってみろ」


 

 なんというか…殿下って、初対面の時と印象違うなあ。あの時はプレッシャー凄かったし、怖い人だと思ってたけど。

 今は眉間の皺は相変わらずだけど、少しだけ親しみやすい気がする。単に僕が慣れただけかな?



「えっと、護衛の方達なのですが…子供達は今まで辛い生活を送っていたので、特に大人の男性を警戒してしまいます。

 皆様屈強な方ばかりなので…子供達が怯えてしまうと思うんです。なので護衛騎士さん達は、教会から少し離れて待機していただけないでしょうか…?」


「それで言ったら一番離れないといけないのは兄上ですねえ…いだっ」


「ルクトル、余計な事を言うな!

 そういう事だ。お前達は離れて待機しろ」


「「「「かしこまりました」」」」



 え、あっさりかしこまっちゃうの?もっと「我らは護衛としてお側を離れる訳にはまいりません」とか言われちゃうかと。



「…とか思ってるのか?」

 

「ランドール先輩…読心術ですか?」


「お前の顔が分かりやすいんだ」



 さいですか。ランドール先輩曰く、皇太子殿下は一般の騎士並みにはお強いので相手が子供なら大丈夫、とのこと。



 なら安心だね。僕達は馬車を降り、これから狭い路地を進みます…ん?





「レナート様のお言葉、感服いたしました!大変苦労なさっていたのですね…」


「いやいや、バジル君こそ。それに君の着眼点には恐れ入る、よかったら今度ゆっくり語りたいのだが」


「ありがとうございます、是非勉強させてください!」



 …………グストフ様、名前レナートっていうんだ。

 なんか予想通り、バジルとグストフ様が仲良くなってた。馬車で2人になっちゃったけど、盛り上がっているようで何より。

 僕だけでなく、ロッティや殿下達も微笑ましそうに見ている。ただしグストフ様の苦労の原因は、貴方達のような気がしてならないのだが?



「まあいいか…では僕が先導します。入り組んでいますので、逸れないようお気をつけください」






 僕、ロッティ、皇太子殿下、第二皇子殿下、ランドール先輩、グストフ様、バジル、護衛×4人の順で歩きだす。

 サクサクと半分ほど歩いた所で、第二皇子殿下が声をかけてきた。



「ちょっと、ラサーニュ君?これ本当に進んでますよね?何故目印もなく進めるのですか!?」


「え?目印ありますよ?ほら、ちょうどあそこにも」



 僕が指差す先…道が分かれている箇所には、必ず目印として壁の少し高い所に十字架が描かれている。

 いつもあれを頼りにしてるし、バジルだって子供達だってそう言ってた。エリゼもだけど、なんであんな分かりやすい目印を見ないの?



「………ありませんよ?十字架なんて」


「…え?え?これですよ、ほら!」



 嘘でしょ?僕は道にある廃材によじ登り、壁の十字架を指した。ほるあぁ!!こんな!わっかりやすい赤い十字架が!!!なんなら指でカメラのポーズで囲んだ。



「……誰か、見える者は?」



 皇太子殿下の言葉に、手を挙げたのはバジルだけ…なんで!?


「ってロッティも!?」


「そ、そうよお兄様。私いつもお兄様かバジルの後ろについて行くだけだったもの。

 2人共道を覚えていて凄いなあ…って思ってたのよ?だって私、何故かどうしてもここの道を覚えられないもの」


 …まさか、これラナの言っていた結界?

 でも悪意ある者を遠ざけるって…ロッティにそんなもの無いよ。殿下達にも。少ししか話してないけど、面白…真面目な人達だって分かる。

 


「バジルは見えるよね、いつから?」


「いつからと申されましても…最初から、でしょうか。

 僕が町を彷徨っていた時、なんとなくこの十字架が目に付いて…自然と辿っていたのです」


「僕は最初バジルに連れて行ってもらってたから、帰りに気付いたんだよね…」



 それが助けを求める子供を招くってこと?もしかして…僕は誰かに助けを求めていたの…?


 うーん、困った。もしこの目印が無いと辿り着けないっていうんじゃ、職員を雇うのも厳しいかな…。



「…その話題は後にして、先に進むぞ」


「はい…」


 皇太子殿下の言葉に、再び歩き出す。するとバジルが「あっ」と呟いた。



「どうしたんだ、バジル君?」


「レナート様…いえ…大した事ではありませんので!」


「何か気付いたのなら発言してくれて構わない」


 殿下にそう言われちゃ黙ってられないよね。バジルは「本当に些細な事ですが」と前置きしてからこう言った。




「十字架の…あの色、坊ちゃんの髪の色と同じだなあ…と思いまして…。

 それに、夜には光っているので迷わず進めるのです」



「……え。あ、確かに…」



 言われてみれば。あの十字架は緋色だったな…それに昨日夜明け前に歩いた時、確かに光ってたわ…。


「気付かなかった…」


「いえ、僕も今気付いたので…」


 2人して呆然とするしかない。狐に化かされた気分?


 だが今は考えてもしょうがない。切り替えて先に進もう。







 そうして教会に着いた。子供達には言ってあるけど…どこかな?中にいるとは思うけど。

 あ、前髪上げとかなきゃ。僕の顔を見た殿下達は、ロッティと見比べて「ラサーニュ嬢、分身したか?」などと言っている(ランドールの言)。

 子供達が警戒しないよう顔を出しているんです!と言うと「何故普段は隠しているんですか?」と聞かれた。…ノーコメントで。



 殿下達はこの広い空間を見て、「ほう」とか言っている。さて、しっかりプレゼンしなきゃ!



「まず、あちらが以前孤児院として使用されていた教会です。

 浮浪児達が住み着いておりましたが、当初は廃墟のようでした。割れたガラスが散乱していたり天井が落ちてきそうだったりと危険だったので、精霊の力を借りて修繕しました」


 僕の言葉に、精霊達がゆっくりと姿を現す。

 そして横一列に並び、ふんすと胸を張っている。あら可愛い。



「その精霊達が…?」


 ランドール先輩が興味津々で尋ねてきた。ではご紹介致しましょう!


「はい!僕と契約してくれた精霊達です!まずドワーフの「お兄様!後にしましょう!」あ、そう?」


 そうだね、急いでるんだったね!



「こほん…失礼しました。

 ご覧の通り広い土地ですが教会と井戸以外何も無く、あの辺りに小さい畑を作ろうと思っています」


 僕が指差したのは、教会の南側の土地。井戸も近く水やりもしやすそう。


「それと井戸の近くに洗濯場。あの辺りには遊具を…っと、それより中をご案内しますね」




 まず子供達に会ってもらわないと!

 教会の扉を開けて招き入れると、4人は感嘆の声を漏らした。だよね、広いし素敵なステンドグラスだよね!

 朝日を浴びるともっと凄いぞ!とアピールしたら、皇太子殿下が「今度ここに泊まるわ」発言をなさった。口は災いの元ってこういう事だね!

 まあすぐ忘れるでしょう。それより…おっ、いたいた!



「「………」」



 礼拝堂の奥の廊下に続く扉をちょいと開けて、こっちを覗いていたのはセージと…坊主頭のちびっ子セルバだ。

 こっそり僕に手招きしてるので、殿下達が礼拝堂を見学している隙に近付く。

 するとセージが僕の腕を引き、ヒソヒソと話し出した。



「なあなあセレスタンサマ。あれ誰?今日国のお偉いさんが来るから、顔を出せって言ってたけど…。

 4人共若そうだぞ。本当に偉いのか?金出してくれるのか?1人顔怖いんだけど?」


「顔は怖いし若いけどお偉いさんだよ。

 案内は僕がするけど、一度全員の顔も見せて欲しいの。だから皆集めておいてくれる?」


「……あいつら、本当に大丈夫か?俺達、ここから追い出されないか…?」



 ああ…そういう事か。きっと彼らの目には、礼拝堂を楽しそうに見物する殿下達が略奪者のように見えるんだろうな。こいつぁ高く売れそうだぜぐへへへへ、と。

 だからセルバも震えているのか。もしもここを追い出されたら…彼らは…。


 セージの頭を撫でて、セルバを抱き締める。大丈夫、あの人達は大丈夫。

 もしもそうなったら…僕が追い出してあげるよ!!



「…俺よりチビのくせに…。

 わかった、全員連れて来るから待ってろ」


 ふふん、ニヤニヤしちゃって。セージはセルバの手を引き廊下の向こうに歩いて行った。

 去り際に小声でありがとう、と聞こえたので、うん。とだけ返事をしておく。

 殿下達に今子供達が来ますと告げ、それまではまた見学しててもらおう。



 数分後、全員廊下に揃った。ちょっと待っててね。

 こっちも全員、礼拝堂の壇上に集めた。




「殿下、お待たせ致しました。子供達に会っていただきたいのですが…1つ。よろしいですか?」


「言ってみろ」


「ありがとうございます。子供達には、来客は国の偉い人、としか伝えていません。

 皇族の方だと分かると萎縮してしまうと思うので、恐れながら今この場だけで結構です。ただの…1人の男性として振る舞っていただけないでしょうか?」



 僕の発言は今この時だけとはいえ、身分を捨てろと言っているようなものだ。叱責を受けてもおかしくはないし、ロッティ達もハラハラしながらこっちを見ている。


 それでも、今は子供達の不安を和らげる事が最優先だ!



「それでは名前で呼べ」


「…はい?」


 ドキドキしながら殿下の言葉を待っていたら…そんなあっさり?


「呼んでみろ」


「えと…ルキウス様…」


 呼んでみたら、むふーと満足気に僕の頭を撫でた。

 そしてロッティとバジルにも名前で呼べ!と言い、バジルは畏れ多くて無理です!!と半泣きで抵抗している。まあ、そうだよね。

 でも今だけだ!と押し切られていた。殿下、意外と…子供好き?


 殿下に撫でられた頭に自分の手を当て、手えおっきかったなー…と思い出していたら、また誰かの手が乗せられた。



「では僕の事も、名前で呼んでくださいね」


「は、はい。ルクトル様」


 すると彼も満足そうに、パァーっと笑った。




 なんなん?この人達??初対面のあの無表情なんだったの??能面と般若に囲まれて怯えていた僕とエリゼはなんだったの???

 こっちが素なのか、作ってるのか??全く分からん。



 まあなんにせよ、今の気さくな感じなら大丈夫だろう。僕は扉に近付き、皆入っておいでと言ったのだが…。




「……………」


「……………」


「………皆、挨拶」


「…………………むり…」



 出て来れたのは、4兄妹とちびっ子5人の9人だけ。そして全員僕の後ろに隠れた。残りは開かれた扉の向こうから顔だけ覗かせている。

 とはいえ身長140センチほどの僕である、隠れられる訳がない。精々ちびっ子2人までが限界だ。



「……随分と、痩せているな…」


 殿下…ルキウス様の発言に、僕にしがみついているミントがビクッとした。他の子も同様だ、今大分声抑えてたけど…?

 なんとかセージは僕の横に立っているけど、震えてるし僕の手ぎゅっと掴んで離さないし、限界か…。



「すみません、ルキウス様…やっぱりこれ以上無理です…」


「…そのようだな。早く休ませてあげなさい」


「はい、ありがとうございます。皆、行こう」


 そう言ったら、全員一目散に扉の向こうに消えた。セージはまだ手を繋いでいるので、彼に子供達を大部屋に集めておくように言った。

 今皆の寝室にしている部屋だ。そこには近付かないようにするから、安心していいと伝えて欲しいのだ。

 彼は了承し、ダッシュで去って行った。ふう…くるりと振り向く。



「やはり怖いみたいで…どうでしたか?」


「今ので十分だ。明らかに栄養状態が悪すぎるし、人に慣れていない。よほど酷い扱いを受けていたのだろうが…ルクトル!」


「はい」


「今すぐ栄養価の高い物を買って来い。騎士も2人連れて荷物持ちにさせろ。

 それとリオ。目印が見えるというお前が案内役を頼む」


「は、はい!!」


「ランドール、視察は私1人で十分だ。お前も同行し、子供達の服と靴を買ってくるように」


「はい!」


 テキパキと指示をするルキウス様。ちょ、お金は!?


「国が出すに決まっているだろう。これ以上見るまでもなくあの子供達には支援が必要だ。

 なんだあの身体は?骨と皮しか無いではないか。全く伯爵は…!!

 金額等細かいことは後だが、何が足りないのか知っておきたい。案内を頼む」




 …彼の発言に…僕は思わず泣きそうになってしまった。

 ルキウス様の頼もしい姿を見て、自分と比較して落ち込んでしまったり。この人が皇帝になってくれたら国は安泰だ、と安堵したり。子供達が、彼を誤解しているのが悲しかったり。



 でも、僕は泣かないと決めた。今、自分に出来る事をする!


 



 

 その後も僕とロッティでルキウス様を案内し、教会の全てを見てもらった。

 家具は木材があればドワーフが作ってくれると言ったら、その手配までしてくれたのだ。


 ルクトル様達が買ってきてくれた食事は、屋台で売っているように串に刺さっていたりカップに入っていたりする。多分、テーブルが無い事をバジルが伝えて考慮してくれた結果だろう。


 って……そうだ、食堂!!すっかり忘れてた、必要じゃん!!保留にしていた大部屋は食堂にしよう、厨房の近くだし!

 食堂は出来ても椅子とテーブルがまだ無いけどね。ベッドより先に作ってもらうか。


 服と靴はシンプルな物で、飾りや刺繍、染め等無い物だった。うん、これでいい。これは喜んでくれるぞ…!!



「ありがとうございます!!では僕達、早速届けてきます、行こうロッティ、バジル!

 本当にありがとうございますー!」


 殿下達に何度もお礼を言い、礼拝堂や外で待っててもらい、いただいた物を子供達に渡しに行った。皆部屋でまだ震えてるかなーと思っていたが、なんか普通に遊んでたわ。

 昨日僕が持ってきたトランプのようなカードがあって、ルールを教えたら皆ハマっちゃったんだよね。あんなに殿下達に怯えてたのに。



「いや、こっちには来ないと思って安心してたら、部屋から出られなくて暇になるじゃん?

 だからセレスタンさまが来るまで遊ぶかーってなって。ところでなんかいい匂いするぞ」


 パセリが寝っ転がりながら言う。……ここまで元気なら、良いよね…?

 ご飯はすぐには渡さず、まずお話からしましょうか?


 遊ぶ子供、美味しそうな匂いに群がる子供を一度制して、全員座らせた。食べる前に、どうしても言っておかなきゃいけない事がある。




「いい?皆!さっき来たお兄さん達が、皆にご飯を持って来てくれました。それだけでなく洋服も!なんでだと思う?」


「え…ほんと?んっとね……わかんない」


 はいアーティ、素直でよろしい。



「答えは、僕と同じ。君達の姿を見て放っておけないという感情と、上に立つ者の義務としての使命感からです。

 でも…そういったものを無視する大人は沢山いる。分かるでしょ?」


 例えば、伯爵のように。


 今から僕がする話は、小さい子には理解出来ないかもしれない。そんな事いいから早く飯寄越せ!って思うかもしれないけど…どうしても聞いて欲しい。



「君達は被害者で、守られるべき立場にいる。でも…施しを与えられる事が、当たり前だと思わないで欲しいの。

 他人の優しさにつけ込んで、楽をしようと思わないで。警戒する心は大切だけど、歩み寄る心も大事にして。

 僕の個人的な願いだけど、感謝の心を忘れないで欲しい。誰かに何かを貰ったら、「ありがとう」とただ一言でいい、伝えて欲しい。


 本来…無条件で愛してくれて、養ってくれるのは…親だけだ。

 君達にはそれがいない。厳しい事を言うけど、君達は幼いながらにハンデを背負っているんだ。

 だからといって、卑屈にならないで。誰になんと言われようとも、自分自身を否定しないで。


 …誰かの優しさを貰ったら、感謝の気持ちを伝える事。そしていつか君達が大きくなった時。困っている人がいて、自分がなんとか出来る事だったら…助けてあげて。

 

 それが僕のお願い。…えーと、わかってくれた…?」




 うーん。僕って話すの下手だな…子供達ぽかんだよ。

 でもロッティとバジルは僕の言いたい事が分かっているようで、穏やかに微笑んでいる。



 なんだか静まり返っちゃったけど…伝わったのかしら?

 一番に口を開いたのは、アーティだった。



「…………つまり」


「ん?」


「アーティたちにごはんくれたお兄ちゃんに、ありがとうっていってから食べなさい?」


「……うん。でも、出来れば心を込めて…言える?

 ご飯もらって、嬉しい?」


「うん!」


「じゃあ、そう言ってあげて?」



 はあい!と元気よく返事するアーティは、意気揚々と外に出て行った。

 すると他の子供達も、ゆっくりと立ち上がり部屋を出る。僕の横を通る際表情を観察してみたけど…笑顔の子、強張ってる子、仏頂面の子と様々だった。


 多分、納得出来ないけど「他の子がやるから自分も」と思っている子もいるだろう。


 それでもいい。

 いつか自分で、自分の答えを見つけて欲しいから。



 そんな彼らの背中を追って、僕達も歩き出した。





挿絵(By みてみん)




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