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アルティメットスゴロク・ザ・ファイナルワーク

シャルティエラ18歳 ランドール22歳



 俺には前世の記憶というものがある。日本という国で、科学技術が発展した世界。そこで暮らす俺は優也という名の男だったらしい。



 それらを思い出した日の夜、夢を見た。


「……よう、ランドール」


「お前は…優也か」


「そーだよ。いやあ、まさかオレみたいな平々凡々な男が、お前みたいな銀髪イケメンに生まれ変わるとは」


 俺と、もう1人…黒髪黒目で気怠げな顔をした男が。年は15くらいか?


「まあいいや」


「いいのか…」


「どーでもいーよ、オレとあんたは別人なんだから。姉ちゃんとシャルティエラさんの事は任せたぞ」


 優也が手を伸ばし俺の額に触れると…彼の記憶が流れて来るのが分かる。特に多いのが優花さんと小雪さん、家族について………変な記憶もあるな…。



 優也のおやつを奪う優花さん。

 幼稚園でいじめっ子をボコる優花さん。

 遊園地でお化け屋敷にビビる優也を引き摺る優花さん。

 縁日で泣き喚く優花さん。

 修学旅行で行った縁結び神社で『ゆやたんとユッキーをラブラブにしてけれえ!!』と叫ぶ小雪さん。


 しかしどれも…優花さんの元気そうな姿は幼い頃のものだけ。



「……他にも色々…優花さんは…シャーリィよりも気が強そうだな…」


「そうだよ。病弱じゃなかったら多分、オレ泣かされっぱなしだったろうな。……そんな未来は、無かったけども」


 優也は悲しげに笑った。暫く雑談をしていたが…ふいに意識が遠のいてきた。


「ん?もう起きる時間か。じゃあな、ランドール。もう会う事も無えだろうけど…元気でな」


「ああ、優也。お前は俺の中でゆっくり寝てろよ」




 最後に彼はにっこりと笑った。夢はそこで終わり。

 目を覚ますと…俺の愛する人、クレールさんが顔を覗き込んでいた。朝のキスをすると、やや照れながら彼女は訊ねてきた。


「おはようランディ君。なんか魘されてたけど…?『やめろぉ…俺の、グミ…』とか色々…どんな夢見てたのよ?」


「おはよう、クレールさん。頼むから忘れて…」


 クレールさんは首を傾げるが、とても説明出来るものではない。幸いにもそれ以上追及される事は無かった。


 昨日はシャーリィの結婚式だった。そこで優也の姉、優花さん。彼女が俺の妹、シャルティエラだと判明した。だが…それがどうしたという話だ。

 優花さんの幸せな姿を見届けたいという優也の願いは叶った。後はパスカルに任せて、俺も自分の人生を歩んで行こう…





「ファイナルすごろくゲーム大会、大・開・催!!」


「「イエエエーーーイ!!!」」


 いえーい。なんだこれ?

 エリゼがノリノリで双六の開催を宣言して、ルシアン殿下とシャーリィがハイテンションで続く。

 いつもこの子達は友人同士で双六を楽しんでいたはずだが、今回は俺達先輩組も呼ばれた。

 ちなみに前回没収したやつはちゃんと返したとも。その前に…散々ルキウス達と遊ばせてもらったけど。大体全員死亡エンドだった…ひどい。



 少那殿下達もまだグランツに滞在していたので強制参加決定。場所はラウルスペード本邸…なんだこれ?

 聞けば新作双六は人数が多いほうが楽しいという事で呼ばれたらしい。全く…仕方ない、付き合ってやるか。


「ねえ兄様」


 ん?こっそり袖を引かれ耳を貸せと言われた。何々…?


「兄様にはつまんないかもよ?でもまあ…見守ってね!」


 ?????

 シャーリィが参加者全員にブレスレットを配った。言われるがままに装着、これは…?


「時代はVRだよ兄様!」


 VR…バーチャルリアリティ、仮想現実。え、ゴーグルは?ま、まさか…!!



「それでは精神世界にご案内しま〜す!!!」



 ブレスレットが輝き、シャーリィの弾んだ声が聞こえるが…俺は意識が遠のき…。あぁ、夢から覚める感覚に似てる…ぅ………





「よし、全員寝たな!何度も実験を重ねたからな、安全性は申し分ないはずだ」


「これでルキウス様とか目覚めなかったら、わたし達重罪人だもんねえ」


「では私達も…と」


「部屋の警護は精霊もいるし。バジルはこっち、フェイテ、テオファ、モニクは寝てる皆をよろしく!」


「「「ふふふふ…!!」」」


「「「「(何やってんだろうこの人達…)」」」」





 ううう…やっと覚醒してきたが、周囲が暗くて何も分からん。手を握る感覚…ある。頬をつねってみる、痛い。歩く事も出来る…随分リアルだな。……あれ、なんか靴がさっきまでと違うような…?


「いてっ」


「あ、すまん。今の声…ハーヴェイ卿?」


「ん?ナハト?うわっ全然見えねー!」


 適当に歩いていたらハーヴェイ卿にぶつかった。皆同じ精神世界にいる訳か。互いの姿も、自分の手すらも見えん状況だがな。あ、やめて変なとこ触んないで。


 その時、空間全体に声が届く。



【ようこそ皆さん、ゲームの世界へ!私はゲームマスターのエリクです】


【エレナです】


【エリゼです】


【【【3人揃ってトリプルEです】】】


 ユニット組んだの?つか1人本名じゃないか。まったく…またおふざけか。俺は肩の力を抜いて苦笑した。


【あ、待ってバジル入れ忘れた】


【いえ結構です】


【では其方は…エリヤだ。ゴニョゴニョ…もう1回いくぞ!

 ゲームマスターのエリクです】


【エレナです】


【エリゼです】


【エリヤです…】


【【【【4人揃ってEカルテットです】】】】


【…わたしもエリナにすべきじゃない?】


 茶番はいいから進めて。

 結局エリナでやり直したけど…次は俺も入れてもらおう。エリスとか…そしてEレンジャーを名乗ろう。



【えー。本日のゲームですが。ちょっと皆さんには殺し合いをしてもらいます】


「「「えええーーーっ!!?」」」


 バト◯ワかよ!!?シャーリィ…GM(ゲームマスター)エリナの発言に絶叫が響いた。


【適当言うなっ!【あいてっ】全く…!】


 ふむ。GMエリゼが説明を始める。


【まああながち間違ってもいないな。

 実は皆の中に、殺人鬼が2人潜んでいる!全員脳内に役割が浮かんでいるはずだ、それを他人に知られてはいけないぞ】


 ああ、うん。さっきから…『モブ』って浮かんでるんだ。更に殺人鬼…?おい、まさか。


【まず…ゲームの舞台と自分の姿を確認しろ!!】



 う…!!GMエリゼの合図と共に周囲が明るくなる。

 舞台は古い洋館…俺達はホールに集められている。外は雷雨が…雰囲気あるな。

 姿…なんじゃこりゃあっ!!?

 俺の服が…フリフリのメイドさんに!!!隣にいたハーヴェイ卿が爆笑している…ってお前なんてピク◯ンじゃねえか、この全身赤タイツ!!


 チクショウ…!GMの説明は続く。



【えーと、今回の双六は…ぶっちゃけ人狼ゲームのパクリだよ。ルールうろ覚えだから簡略化してアレンジしたけど】


 やっぱりか!つまり俺は村人だな!?人狼、殺人鬼は誰が………



「不思議な格好ですね、兄上」


「そうだな」ギャギャギャギャ


 いる。ホッケーマスクをして作業着でチェーンソーを携えたルキウスが!!!

 違うんだシャーリィ、ジェ◯ソンは一度もチェーンソーを使ってはいないんだ…!


「殺人鬼って誰なんでしょう…」


「恐ろしいことだ…」バルルルッ


 全員気付けソイツだ!!!更に…



「どうして風船を持っていらっしゃるの?」


「……さぁ…?」


 風船を持ったピエロがいる…。今の声、あの髪型…ペトロニーユ嬢…!

 間違いない、あの2人だ。ミスリードかと思ったが、始まる前のシャーリィの発言からして確定だろう。ネタを理解出来る人間がいるなんて予想外だったろうし。

 じゃあとりあえず、俺は生き残る事を考えよう。ゲームを壊さず…見守ろう。



【役割は殺人鬼・狂信者・占い師・騎士・モブだよ。殺人鬼は2人、モブは複数いるの。

 では、簡単なルールはこちら!】


 む、空中に文字が浮かんだ。



*殺人鬼達は話し合い1日に1人誰かを襲う。他の者は誰が殺人鬼か特定して屋敷から追放する。

*狂信者は殺人鬼サイド、殺人鬼とは互いの役割を認識出来る。

*騎士は毎日1人だけ選んで守る事が出来る。

*モブは意見を出し合い、誰が殺人鬼か推理し投票によって追放する。

*占い師は1日に1回誰が殺人鬼なのか占える。殺人鬼かそうでないか、しか分からない。

*殺人鬼を全員追放したらゲームクリア。殺人鬼サイドとその他が同数になったらゲームオーバー。



【ここで例え話をしよう。オレが殺人鬼、エリヤが狂信者、エリクが騎士、エリナがモブ、シグニが占い師。

 オレはまずエリナを襲おうとした「させねえぞゴラァッ!?」例えだ黙ってろアホ!!

 …しかし偶然エリクが守っていた為失敗、犠牲者無し】


【次の日殺人鬼は私を襲った。だが騎士である私は抵抗可能、生き残る。

 殺人鬼は私とエリナ、2連続で失敗した。どちらかが騎士なのか…もしくは騎士はシグニで、連続で当てられたのか】


【なので殺人鬼は、シグニを殺人鬼に仕立て上げようとしてくるかもね。

 エリゼは自分は占い師だと宣言!しかし本物のシグニも名乗りを上げる。さて、モブサイドはどっちが本物か分からない!】


【吾輩は本物だと証明する手立てを持たぬ。ひとまず怪しいエリゼを占うと殺人鬼だと出た。

 同時にエリゼは吾輩が殺人鬼だと言う…真実を語っているのがどちらか、モブサイドは見極めねばならぬ】


【もう…ここでシグニを信じて、エリゼ様を追放すればモブサイドの勝利。まあ僕とエリゼ様はシグニに投票します。

 エリゼ様を信じてシグニを追放したら、モブサイドは残り2人。殺人鬼サイドと同数になりこちらの勝利となります】



 ふむ…俺もやった事ないけど、これならなんとか。

 いや待って?途中で入った渋い声の吾輩誰!?


「質問!投票で同数になった場合の対処は?」


【いい質問だねロッティ!そこは皆に任せるんだけど、選択肢は3つ。

 1つ。同票の人達だけに絞り再投票。

 2つ。同票の人全員追放も可。

 3つ。誰も追放しないで見送り。

 どちらにせよ、よーく話し合ってね!】



 うーん…俺心理戦苦手なんだけどなあ。ここで他のメンツの衣装を見てみよう。


 少那殿下と木華殿下は…マ◯オとル◯ージ。トレードマークの帽子にはSとKの字が。

 薪名さんはセーラー服、ジェルマン卿が学ラン。どちらも成人済み…うん、ね。


「なんで俺女装なの!?」


 パスカルはナース服、目が腐る…だが女装仲間がいてちょっと安心。ん、何処からかシャーリィの興奮する声が聞こえて来る、ような?

 シャルロットは男物の袴姿…扇子…棋士…騎士!?

 ルネ嬢は黒いドレスにとんがり帽子、手には箒。完全に魔女…まさか狂信者?いや占い師…?

 で、ハーヴェイ卿が赤ピク◯ン、タオフィ君が青ピクミ◯。引っこ抜かれてしまえ。

 ジスランはシスター。女装がもう1人いたわ。

 ルクトルは野球のユニフォーム。咫岐は料理人。飛白卿はパイロット…段々と適当になってない?



【それでは…ゲームスタートだ!!我々は必要があれば声を出すが、基本皆で進めて欲しい!】


 GMエリクの宣言に、皆顔色を変えた。始まったか…。

 ふう…初日はどうするか。俺は目立たぬよう、しかし発言しないと怪しまれる。


 ……ん?待てよ。殺人鬼をルキウスという前提で考えて。

 奴はゲームであっても女性を襲いはしないだろう。ペトロニーユ嬢は控えめだから、ルキウスの発言力が強いと思われる。

 もちろん偏っては怪しまれるから、いずれは襲うだろうけど…最初はナイだろう。

 で、可愛い弟のルクトルも、年下であるジスランとパスカルも外す。


 つまり。奴が「こいつなら殺してもいいや」と考える人物はハーヴェイ卿、ジェルマン卿、飛白卿、タオフィ君と…幼馴染で友人の…



 O・RE・DA☆



 高確率で俺じゃねーか!!!どうする…!?



「それでは…初日の投票はどうする?」


 仕切り始めた!!そうだよな、一応皇太子だもんな…!くそ、どう立ち回るべきだ!

 こうして俺だけ全てを知ってしまっているゲームがスタートしたのである…。



 もうコレすごろくじゃねえなあ。



シャルティエラは優花とセレスタンが完全に融合している。あえて比率で言えば優花6セレスタン4。

優花100%だったら、初日に伯爵を殴り飛ばしている。


ランドールは優也の記憶を持っているだけで100%ランドール。

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