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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園1年生編
2/222

01



 …という前世を思い出したのが、今から3日前のこと。齋藤優花(わたし)は死んだ後、別の身体で目を覚ました。


 直後は奇跡的に回復したのかと喜んだが…瞬間脳内に浮かび上がる、ラサーニュ伯爵家に生を受け跡継ぎとして厳しく育てられてきた記憶。現在の、12歳に至るまでのわたし。



 わたしの住まうここはグランツ皇国、まあ異世界だ。人々の憧れ、剣と魔法の世界。だがわたしは、手放しでは喜べなかった。


 何故ならこの国や家、自分の名前…そして今鏡に映る容姿…

 赤いショートボブの髪は外にはね、前髪だけ異様に長い。少し手でかきあげれば、金の瞳が姿を現す。手足は細いがそれなりに鍛えており、健康的な日焼けから貧弱という印象は受けない。


 セレスタン・ラサーニュ。今世のわたしの名。

 前世のわたしが読んだ漫画に登場するヒロインである、シャルロット・ラサーニュの双子の兄だ。

 同じ病室の女の子に貸してもらって読んだもので、タイトルは忘れてしまった。恋愛ファンタジー漫画であり、シャルロットはヒロインよろしく可愛らしくて良い子である。

 っと、今はそれは置いといて。セレスタンとシャルロットは仲の良い兄妹だったのだが…15歳を境に険悪になる。理由は漫画には描かれて無かったと思う…うろ覚えだけど。なぜか急に、兄セレスタンが変わってしまった。それまでは優しいお兄ちゃんだったと描写されているのに。

 でもわたしがそのセレスタンに…?いや、偶然の一致だろう。

 

 と、まあ…最初はまさかまさかんなベタな!と躍起になってこの国について調べまくった。ただし知れば知るほど…この世界があの漫画の舞台であると裏付ける証拠しか出てこなかった…。

 漫画で読んだままの天使な可愛い妹に、セレスタンに厳しくシャルロットに激甘な父。病弱な母。モブである使用人達、ヒロインに密かに恋心を抱く少年執事。

 屋敷も街の風景も、かつて読んだことのある景色そのままだった…。この漫画は内容はそこそこだったが、絵がとても綺麗だった印象が強い。キャラクターも背景も描き込まれていて、むしろそこだけで支えていたんじゃないかとすら思えるほどに…ストーリーは薄かった。


 なにせヒロインである妹は、神に愛されたが如き完璧超人であった。容姿端麗、頭脳明晰、刺繍、ダンス、乗馬、楽器、詩、マナー、社交…淑女に必須な項目は100点満点。それでいて性格も素晴らしく、誰にでも平等に優しく接し、負の感情など1ミリたりとも持っていないかのような聖女。

 何をやらせても上手くこなす、教わったことは即座に理解し覚える。セレスタンが寝る間を惜しんで勉強してもテストは精々80点、シャルロットは授業を聞くだけで100点を取る。

 癖のある登場人物達も、彼女と接するうちに何がどうしてかメロメロになる。老若男女関係なく、特に大きなイベントもなく、だ。


 それだけ完璧だとさあ…感情移入できないんだよね。むしろ読者からは嫌われていたんじゃないかと思う。

 彼女は完璧が故…「持っていない」人間の悩みを理解できないんだ。そこが唯一の欠点とも言える。

「お兄様、ここはこうすればいいのよ」「え?私はただこの楽譜通りに弾いただけよ」的な。その言葉の端々に…「なんでこんなことも出来ないの?」と隠されている気がする。賢い彼女は言葉にはしないけど。



 っと、それよりわたしのことだ。セレスタンはこの漫画における悪役だ。最終的には家族にも見放され、家を勘当されるはず。一体何をやらかしたんだ…?うろ覚えの知識をなんとかかき集めた。


 まず第一に、妹に辛く当たる。すると妹溺愛パパからは嫌われる。辛く当たる理由は、さっきも語ったが不明だ。

 今の私は、優花とセレスタンが混じってしまっている。セレスタンの記憶は全てあるので、ここでの生活に困ることは無いな。その記憶によると…


 わたしことセレスタン・ラサーニュは。男として育てられた女である。




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