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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園4年生編
185/222

61



 次の日朝早くから皇宮に向かうと、皆慌ただしく動き回っていた。



「新聞社から取材の依頼が殺到してます!!」

「おーい誰か、荷運び手伝ってー!!」

「ちょっと、発注数これでいいの!?」

「近隣諸国から使者が来てます!!」



「わー…早く行こうか」


「は、はい」


 わたし、ペレちゃん、ジェイルでやって来た。ロッティはお父様の代わりに家の仕事をしている。バティストも暫く忙しいと連絡が来て…バジルが家令代理として家を守っている。グラスもフェイテも一緒だから大丈夫!




 お父様を訪ねると、執務室に全員通され会議の内容を教えてもらった。



「そう…ですか…」


 ペレちゃんは家族の仮処遇を聞いて…顔を曇らせた。…どんなにクズでも…心は痛むよね。

 それにやはり犠牲者も出てしまった。城で王女含め4名、街で9名…怪我人は82名。……わたし達は、この出来事を忘れてはいけない。そして一刻も早く、救援活動に合流しよう。



「では私は、第三皇子殿下の秘書としてお仕えすればよろしいのですね?」


「いいのか?」


「勿論でございます、陛下。精一杯皇国に尽くします。まず何から…」


 ペレちゃんの言葉を遮り、ノック音が響く。誰かと思えばルシアン?中に入ってもらう。


「お疲れ様、シャーリィ。昨日は皆突然の事で大変だったぞ」


「いや〜…ごめんね。ところで君、セフテンス辺境伯になるって?」


「ああ!そこで…」


 ルシアンはソファーに座り、ペレちゃんに目を向けた。彼女は背筋を伸ばし、ルシアンに挨拶をする。そして詳しい仕事の話をしようとしたら…


「本当にいいのか?其方が望むのならば、もうセフテンスに囚われなくてもいいんだ。叔父上も後見人になってくれると言うし…」


「いいえ、どうか私に仕事をください!」


「……うん、分かった。

 早速今から一緒に現地に行ってもらうが…其方には領民を励まして欲しい。それとセフテンスについて、色々教えてもらいたい」


 それだけ…?とペレちゃんは目を丸くしている。その隙に話し合いを続けた。


 小難しい話は大人に任せる。わたしは政務とかは苦手なので、現地で行動しよう。陛下やお父様はもちろん、三兄弟も忙しそうにしている。

 ルキウス様は不正を働いた者達を徹底的に炙り出し、ルクトル様は諸外国や国内へ説明する手筈を整えている。ルシアンはセフテンスへ向かい、現地の指揮を執るとか。


「ルキウス兄上が言っていたのだが。ペトロニーユ嬢が信頼している者が、不正の証拠を集めていたらしい。関わった人間の一覧もあるらしいから、用意してもらっているところだ」


 ほう。城で働いていた者は今、大臣からメイドまで皇宮にいるらしい。もちろん監視付き。そこへセフテンスの外務大臣…えーと、コステルさんっつったっけ。彼が膨大な資料を持って来てくれた。

 彼の身の潔白は証明済みらしいので、頼らせてもらおうっと。ペレちゃんも彼の顔を見た途端、ホッとした表情になっていた。


 ヘルクリス運送(何してんだ一体)のお陰で、物事がスムーズに進むらしい。彼には最高級ワインが振る舞われる事だろう。



「この度は…ペトロニーユ殿下を保護していただきありがとうございます。感謝の念に堪えません…。私の心身共に、皇国へと捧げます、どうか存分にお使いくださいませ」



 彼は資料を置き、その場に跪いた。ルシアンと陛下が視線で合図し、立ち上がるよう告げる。



「イザーク・コステル。其方のこれまでの働きに感謝する。これまで国が保っていたのは、其方らの行いあってのもの。どうかこれからも、私の側で力を発揮して欲しい。

 私ルシアン・グランツは学園を卒業後、セフテンス辺境伯となる。慣れないだろうが…ペトロニーユ嬢にも秘書として手伝ってもらうつもりだ」


「は…!ありがたきお言葉…誠心誠意お仕え致します!」


 よし!話も纏まったところで…真っ黒な人間リストに目を通す。…やっぱり上層部か、メイドや料理人なんかは殆どシロだ。こっちは任せてわたし達は出発するか。



 どんな状況でも変わらない。適材適所…わたしはわたしに出来る事を頑張る!





 ※※※





 ヘルクリスのお陰ですぐに到着!明るい所で見ると…街ぐっちゃぐちゃ!!申し訳なさが倍増した。まず住人が集まる避難所に向かう。そこには…



「「う……!」」


「………………」


 そこにいる人々は…皆痩せ細り、ボロボロな服を着て虚な目をしている。膝を抱えて座っていたり、その場に横になっていたり。

 ペレちゃんに「国民は木の根を齧って生き延びているんです…」と言われていて、覚悟はしていたが。ここまでとは…途端に、セフテンス王への怒りが湧いてきた…!!



 ……ふう、だめだめ、深呼吸。首都だけでなく、他の地域だって似たようなものだろう。急がないと!

 今ルクトル様が皇国の貴族に色々寄付とか募ってるから、服や日用品はすぐ集まるだろう。食料も…お腹に優しいものから配らなきゃ!



「……あぁ…王女様…!」

「王女様…?」

「王女様!我々はこれから、どうなるのですか…?」


 彼らはペレちゃんを確認すると、立ち上がり集まってきた。


「皆さん、落ち着いてください。騎士様から説明があったと思いますが…我が国は今後、グランツ皇国に吸収される事となりました。

 不安はあるでしょうが、安心してください!今も救援活動は続いています。徐々にですが…食べる物や暴力に怯えなくていい毎日が来ます!どうか…皇国を信じてついて来てください」



 彼女の言葉に、どよめきが広がる。それは決して否定的なものではなく、助かるという安堵によるものだ。

 だが、その中に混じって…こっちを睨み付けている人達もいる。彼らはこの中では異質な程に肥えており…一目で富裕層だと分かる。国の恩恵を受けていた者…か。

 彼らまで裁いていてはキリがない。ただし今後は今までのような贅沢も出来ないだろうから、それだけで充分罰になるかもね。



 さて。ルシアンが皆の前に立ち、声を張り上げた。セフテンスはグランツ語が母国語だから助かるわ。



「私はグランツ皇国第三皇子、ルシアンだ。今後この土地を任される事となった。これまで其方らを苦しめてきた王族は皆、然るべき裁きを下す事を約束する。そしてこれからは、私が皆を守ると誓う。

 ペトロニーユ嬢も今後、この地に留まってくれる事となった。これまで大変だったろうが…堪えてくれて…ありがとう」


 その言葉に避難所は静まり返った。彼を信用していいのか、計りかねているのだろう。それでもルシアンは行動しなくては何も変わらない、と動き始めた。



「魔術師による怪我人の治療は終わっているか?赤子や妊婦、老人のように手助けが必要な人物は不自由にしていないか?

 他の地域でも飢餓は起こっているだろう、どれ程人材を派遣した?」


 避難所を担当していた騎士や文官に確認し、ペレちゃんと一緒に領民に声を掛けて回った。わたしも…と言いたいところだが、ここは任せて外に行こう!



「た…助けて!食料はこんなものじゃ足りないわ、暖かい家も!子供達だって可哀想よ、早くなんとかして!」


 出て行こうと背中を向けたら、女性の悲痛な叫びが聞こえた。彼女は子供を腕に抱えながら、ルシアンに縋っている。

 ルシアンはあくまでも冷静に、優しく声を掛ける。


「当然だ、誰も見捨てる気はない」


「だったら早く!!」


「善処はする。だが…誰かを特別待遇は出来ない。危い状態の者から優先的に救護する、食事はゆっくり摂りなさい。急に多く食べてしまっては吐くだけだ」


 女性は今すぐ自分達を助けろ!と言っている。気持ちは分かるが…こればかりは、どうしようも…。それでもルシアンは、声を荒げる事なく真摯に対応する。



「酷な事を言うかもしれないが…直談判されようと、優先はしない。

 皆が皆、其方のように声を上げる事が出来る訳じゃないんだ。助けて欲しいと言えずにいる者も多くいる。

 それは何かを恐れていたり、元気が無かったり、最初から諦めていたり。理由は様々だが…声なき叫びは確かに存在する。

 そういった者達を見落とす事のないよう、時間を掛けて全てに目を通したい。すまないが…今は耐えて欲しい。

 ああ、もちろん怪我人や病人がいたら声を上げて欲しい。もしくは気付いた誰かでもいい、手遅れにはしたくないんだ」


「………………」


 女性はその言葉に項垂れて…ルシアンから手を離して下がった。ルシアン…君はいつの間にか、立派な皇子様になっていたんだな…。

 


「ペトロニーユ嬢。聞きたい事があるんだが…どうした?」


「……あっ!い、いえ…なんでもありません。聞きたい事とは?」


 ペレちゃんは目に涙を浮かべて、ルシアンを見つめていた。うん、大丈夫。ルシアンは遊ぶ気満々と聞いていたが、絶対に弱者を見捨てないからね!

 







「おーい、シャーリィ!」


 わたしは今度こそ外に出た。ここはドワーフ職人大活躍かな!?家屋の復興を頑張るぞ!と考えていたら、エリゼが声を掛けてきた。


「君も来てたんだ!」


「朝一でな。家のほうは人間の手でなんとかするらしいから、橋を見てくれないか?」


「橋を?」


 セフテンスの大小の島、東西を繋ぐ2本の大橋?

 どうやらかなり老朽化が進んでいるようで、そこを直さないと安心して東島に行けないらしい。

 船では遅すぎるし、小舟ばかりで役に立たんと。


 確認すると…こりゃ酷い!専門的な知識は無いが…錆やヒビだらけじゃん!よく落ちなかったな…。



 ふむ…全長15kmてとこかな?ドワーフ職人にお願いすると、彼らは等間隔に並ぶ。そして斧を振り上げ、カン!カン!と魔力を流す。光が収まれば…はい完璧!!

 お陰で安全に移動出来るようになったと超感謝された。てか…皆もドワーフと契約すれば?



「……そう簡単じゃないんだ、オレもすでに何度も失敗している。

 召喚は火水風地木、光、闇、無の順で難しいんだ。お祖父様は召喚に成功していたが…これ以上は無理だ」


 そうなんだ…もう1つの橋はテランス様が直したと。大きな橋だったから、ドワーフ職人は魔力切れ寸前だ!暫く影の中で休んでね…と。

 わたしも他の皆の力を借りつつ走り回る。ひー…やる事が…多い!!


 ドワーフの魔力が回復したら家屋を建て、他の地域のボロ家も直す。

 ルキウス様、パスカル、ジスランも手伝いに来てくれて、年末とかそんなモン関係なしにわたし達は復旧作業に明け暮れるのであった。





 ※※※





 そして、年明け。わたしは今仮宿を抜け出し海を見ている。初日の出を拝むのだ!!



「シャーリィ、寒くないか?」


「ありがとう、パスカル」


 セフテンスは南国だが、冬だってそれなりに寒い。パスカルが後ろからくっ付いているから温かいけど。


 他愛の無い話をしながら日の出を待つ。すると徐々に明るくなり…水平線の向こうから、太陽が顔を出す。

 海に反射してキラキラと輝いている。ああ…なんだか無性に、泣きたくなるなあ…我慢だ。




 …1日も早く、セフテンスが復興しますように。そう願いながら手を合わせた。




「でも…綺麗な砂浜だよね。いやゴミが溢れてるけど、綺麗にしたら観光地にもってこいだと思わない?」


「そうだな。国内外から人が集まるだろう」


 白い砂浜、エメラルドグリーンの海!勿体無いなあ、観光ホテルとか建てればいいのに。その辺ルシアンに相談してみようっと。

 それより今日は州侯会議だったっけ。東西南北の地域を守る新しい州侯の顔合わせ、わたしも参加するのだ。




 数時間後、全員揃い会議スタート。ふむ…南州侯はまだ若い男性、20代前半か。東北は40代程で、西は30代の女性だ。彼らは皆、バティストが様々な情報を元に選び抜いた人材らしい。



「全員集まってくれて感謝する。現在の状況を順に説明してくれ」


 ルキウス様が見守る中、ルシアンが主体になって進む。ふむ…大分復旧しているので、今後は根本的な解決策が必要になる。


「シャルティエラ公女から意見もあったが、この土地は観光地として収入を見込めると思う。

 建築家や職人を呼び、観光宿を建てる予定だ。今までもあったようだが、全然認知されていないのだ…。何か意見があったら遠慮なく頼む、特に領民の今後の生活について」


 という言葉を皮切りに意見が飛び交う。生活基盤の問題もあるし、簡単に終わらない。



「はい」


「南州侯、なんだ?」


「まずは人々が安心して暮らせる場所を提供するのが先決では?」


「当然だ。その為宿や観光業に関してはルクトル兄上に一任しているし、建築関連は暫く本国に頼る。でも領民の家も大分マシになってきたし、そろそろ屋敷も建てないとな…。

 それと領民も段々と健康を取り戻してきた。もう少し休んだら、仕事を割り振ろうと思う。農作業、畜産、漁業…その他生活に必要な仕事は山積みだ」

 

「左様ですか…かしこまりました」


 一応納得したようで、彼は引き下がった。しかし南州侯…民を思いやる気持ちとカリスマはある、とバティストが言っていた。それだけでは無さそうだけど。

 他の州侯は皆ルシアンに好意的だけど、彼だけなんか違う。ルシアンを見るその目は「お前を認めた訳ではない」と言っているようだ…。



 4時間に渡る会議もそろそろ終了だ。


「最後に…其方らについて。現在は東西南北の州侯という立場にいるが、これからは皇国に則り男爵位を授ける。

 東部のファビウス家。西部のオトニエル家。南部のグラニエ家。北部のワロキエ家。旧首都は私、辺境伯直轄地とする。

 其方らには当主として、相応しい振る舞いを所望する。何か質問のある者はいるか?」



 その問いには誰も手を挙げず、解散になる。男爵達がいなくなったところで、ルシアンがふいー…と大きく息を吐いた。



「すごいねルシアン、格好良かったよ!為政者って感じ、堂々としてたし!」


「はは…ありがとう。父上やルキウス兄上を手本にしてみたんだが…」


「充分合格点だ。…成長したな、ルシアン」


 ルキウス様は、穏やかに微笑みながらルシアンの頭を撫でる。ルシアンもまあ、嬉しそうに笑っちゃって。



 さて、ほのぼのタイムは終了!さっき言ってたけど、辺境伯の屋敷を王城跡地に建設せねば。今わたし達、簡易家で寝泊まりしてるからね〜。

 ルシアンは目を輝かせながらわたしに一枚の紙を見せる。


「これ!こんな感じの城を建てたいんだ、ドワーフ職人に頼めるか!?」


 雑誌の切り抜き?どれ…おお!おとぎ話に出てきそうな古城じゃん!いいね、素敵!


「わ…可愛い…」


「だろう、良いだろう!?」


「は、はい」


 わたしとペレちゃんに肯定してもらって、にっこにこのルシアン。さっきまでの威厳は何処へやら?


「ふむ…外観はコレを参考にして、建築士に設計図を書いてもらおう。そんで瓦礫だけで材料は充分でしょう!

 あ、わたしの部屋もヨロシク。海が見える部屋を希望する!」


「任せろ2人部屋を用意する」


 いやん。これで屋敷問題も解決かな?

 で…わたしはずっと気になっていた事をバティストに訊ねる。



「ねー…南部のグラニエ男爵。彼、本当に信用出来るの…?」


「うーん…やっぱ気になりますか。あの態度じゃねえ…。

 なんせ彼、反乱軍を纏め上げてクーデター起こそうとしていた張本人ですし」


「ぅおいいいいいぃぃっ!!?」


 いいの、そんな人!?いや愛国心が強いって事なんだろうけど!!クーデター未遂に終わったけど!!!



「はい…一度は説得しましたけど。まだ諦めてはいなさそうでしたから…いずれ反旗を翻したでしょう」


「…彼はルシアンを認めてなさそうだったよ?それにリーダーっぽい人がいたら…ルシアンに従わない人も出て来ちゃわない?」


「私もそう思って、南州侯も別の人にするべきだと進言したんですけどねえ。ルシアン殿下がね…」


「構わん。…皇子とはいえ、いきなり現れた若造を認められない気持ちもあるだろう」


 わたし達の心配などどこ吹く風、ルシアンはそう言い放つ。やたら自信満々だな?

 気にはなるが、彼がそう言う以上何か考えがあるんだろう。わたしは追及する事はしなかった。





 そんな風に、色んな人の助けがあって作業は進む。

 お城もテランス様のドワーフ職人と協力し、14人がかりで完成!!他にも頑張った精霊達には高級な酒が振る舞われた。合戦になったがな…。


 そうそう、建築前に気付いたんだけど…王城に地下室があったんだ。そこにはまあ金銀財宝がザックザク、海賊が喜ぶぜ。

 資金ゲット!とルシアンも喜んでいた。これで領民に還元出来るもんね。


 新しいお城に、領民も興味津々だった。なので家具を運び込んだりする前に、皆さんをご招待した。特に子供達はきゃっきゃとはしゃいでいたぞ。



 最初はルシアンを余所者扱いしていた領民も、段々と打ち解けてきたみたい。隣にペレちゃんがいるのも大きいだろう。

 少しずつ体制も整ってきたし…完全ではないけど大丈夫。そしてルシアンが卒業するまでは、ルキウス様が統治する事となった。

 使用人も厳選して揃ったし、ベネディクト卿を団長に騎士団も設立した!今後は彼らが治安を守ってくれるさ。



 ちなみにわたしが空を飛んでいたら…「精霊姫だ!」「なんと神々しい…!」と、領民が膝を突いてしまった。

 しまった、炎の翼が目立つんだった…!あの夜のせいで、わたしの噂も広まってたか!!


 そして感謝された。この国を壊してくれてありがとう…と。新しい家のほうが、よほど住みやすいって。なんとも複雑な心境だが…わたしは曖昧に笑って逃げた…。


 感謝なんてされたくない。貴方達が礼を言うのはルシアンとペレちゃんにして。わたしとロッティは…ただの破壊者だもの。だから…やめて。

 





 忙しい日々は過ぎ、1ヶ月の冬期休暇もじきに終了する。



「あああーーーっ!!課題全然やってない!!?」



 という事に、始業式の前日気付いた!!!今からじゃ徹夜でやっても間に合わん!!と嘆いていたら…ロッティが部屋に来た。


「それだけど。私もずっと執務で忙しかったし、今回の関係者は免除にしてもらえたわ」


「そうなの!?よかったぁ…」


 ほっと胸を撫で下ろす。ルシアン、エリゼ、パスカル、ジスラン、バジルなんかも対象らしい。


「それより、お姉様に関する問い合わせが殺到したのよ?女性って本当ですか!?って」


「あー…忘れてた」


 うへえ…今年のお正月は忙しかったとはいえ、一切貴族の付き合いが無かった訳じゃない。全部ロッティとバジルにお任せしちゃったけど…やっぱわたしに対する話もあったか。



「明日からの学園、大丈夫かなあ…」


「大丈夫よ、皆好意的だったし!制服も似合ってるわ」


「そう?ありがとう!」



 おやすみの挨拶をして、不安と期待を抱きつつ布団に入る。明日はお父様も一緒に学園行ってくれるけど…忙しいだろうなあ。

 わたしの性別もだけど、セフテンスの話も聞きたがるだろうなあ………



 そんな事を考えていたら…いつの間にか、眠っているのであった…





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