命の答え
お嬢様と出会ったのは、浮浪児の皆で根城にしていた教会。
彼女は長い髪で顔を隠していて、男か女かも分からなかった。だが一目で貴人だというのは分かった。おれ達はひっそりと暮らしていたのに…それすらも奪うのか!?と、内心憤った。
だが同時に…おれはこの人を待っていたんだと、心のどこかでそう感じた。
それと隣にいた男、バジル。おれはすぐに分かった、昔ここで一緒に暮らしていた子供だと。
食う物を探して出て行き、それから音沙汰が無かった。そういう奴は沢山いた、皆無事でいて欲しいと願っていたが…バジルは幸運に恵まれたらしい。
以前はおれ達同様痩せ細っていたが、バジルは健康的に育ち見違えるようだった。向こうもおれにすぐ気付き、目を丸くしていた。当時の知り合いは、おれしかいないだろうが。
バジルがお嬢様をここまで連れて来てくれた。そして数年前から路地に食料等を差し入れてくれていたのはあいつだろう、と…その時気付いた。…ありがとう。
翌日。大量のパンを持って、お嬢様はエリゼ様と一緒に来た。どっちもスカート姿だったので、2人共女だと思った…普通そう思うよな?
その日のお嬢様は前髪を上げていて…金色の瞳があらわになっていた。おれは目が離せなかった。彼女らが何か言っていた気がするが…一切耳に入っていなかった。
純粋に、美しいと思った。同時に…彼女をおれのものにしたいとも。それは一目惚れだったのだろうか?そんなに可愛らしい感情では無かったような。
多分、醜い執着。一方的な劣情。相手がまだ12歳という子供であった為、今すぐ手を出そうとまでは考えなかったけど。
次に会った時は男の服を着ていた。やっぱり男なのかな?とがっかりしたが…精霊達とふざけ合っている姿や、ニヤッと笑い「さあ、どっちでしょう?」と言ってみせる表情に…やっぱり女なんだな…と分かった。
おれはこの時、なんとしてもこの子が欲しいと感じた。彼女の全てが欲しい…身も心も、全ておれで満たしたい。
だがおれは平民で、お嬢様は貴族。いっそ攫ってしまおうか。その目におれ以外、何も映さないようにしてしまおうか…。
が。絶対に嫌われると分かっていたので、なんとかその欲を抑えていた。
それから色々あって、おれはパスカル様…パスカルでいいや。奴と知り合った。
これまでお嬢様に好意を抱く奴は沢山いた。バジルだって微妙に怪しかったし、ジスラン様はアウト(今はシャルロットお嬢様が心臓握ってるからセーフ)。ランドール様…はいいとして、エリゼ様も安全そうかな。セージやパセリなんかも憧れているようだったが、お前らは敵じゃねえ。
だがパスカルは違う。すぐに分かった、コイツはおれからお嬢様を奪って行くつもりだと…!!
それでもおれはどうする事も出来なくて。お嬢様はどんどん奴に惹かれていって…。
ラサーニュ伯爵家が潰れ、ラウルスペード公爵家になって。当主は話の分かる旦那様になって、お嬢様は幸せを手に入れた。
そこでバジルに「おれも屋敷で働きたい」と願った。すぐに話は通り、お嬢様付きの侍従となれた…が。
その時にはもう遅くて、お嬢様はパスカルと心を通わせていて。おれには…入る隙も無くて…。
告白してみたけれど、予想通り断られて。彼女もおれを意識してくれてはいるけれど…やっぱりパスカルには敵わない…。
なんとかアタックをしてみても、全部流されたり弾かれたり。そもそも気付かれてなかったり…悲しい。それでも諦めきれず、イチャコラする2人を邪魔しまくってやった。
お嬢様はおれの時間を奪いたくない、君ならもっと素敵な女の子と巡り会えると言ってくれたけど。おれは…お嬢様が好きなんだ。
最初は完全に執着だったけれど。次第に…本当に彼女が愛しくて仕方なくなっていた。
ただ隣にいるだけで、言葉を交わさなくても触れ合わなくても。こんなにも心穏やかになれる…おれの、お嬢様。
悪戯をして旦那様に怒られている姿も。
勉強に詰まり頭を抱えている姿も。
シャルロットお嬢様やルネ様と楽しそうにドレスを選んでいる姿も。
勇ましく剣を振るっている姿も。
風の精霊様に押されて、ベッドから転がり落ちている寝姿も。
鼻歌を歌っている横顔も。
パスカルにだけ見せる…笑顔、も……。
愛しています。貴女を…初めて目が合った時から。ずっと、大好きなんです。例えその目に、おれが映っていなくても…。
「でもやっぱ駄目かなあ!おれ…おれ…ううう…お嬢様ぁ…」
「「「…………」」」
今から3ヶ月くらい前。おれはバジル、フェイテ、テオファと飲んでいた。この日はテオファの誕生日で、ついさっきまでパーティーをしていたんだ。旦那様は使用人の誕生日まで気に掛けてくれて…本当に、伯爵がいなくなってよかった。
タオフィ先生も来ていたが、たまには友達と過ごしなさいと言って帰った。そんで男4人、おれとバジルの部屋で宴会をしていたんだ。
そこでお嬢様への想いをぶち撒ける。誰かに聞いて欲しくて仕方がないんだ…。
「くそう…パスカル様なんて大っ嫌いだ。うぐぅ…」
「闇討ちする?ヒック…僕の師匠直伝暗殺術使う?
あのさ…最近屋敷に出入りしてる食材の業者があ…モニクを口説いてるってロイさんが言うんだよお!
だからね、こう…首をコキっと、ね?しよっかなって…」
「お前本当やめろよ!?ってかバジルの師匠ってマジで誰だよ!!」
バジルは相変わらず、酒が入るとやたら泣く。さめざめと泣きながら物騒な事を呟き、フェイテが突っ込む。酩酊時の記憶が無いのもタチが悪い。
「なんでボクの誕生日なのにグラスの愚痴聞いてんの?」
それはごめん。テオファは初めて酒を飲むようだが…結構強い。顔は赤いが、意識や言動はハッキリしている。そして用意しておいたつまみを1人でほぼ全部食ってる。
おれも酒に呑まれる事は無いが…ややオープンになる自覚はある。だからこそ、親しい奴以外とは絶対に飲まない。そしてフェイテは酔っ払っても自分を崩さない。
「頼むフェイテ先生!お嬢様を振り向かせる方法教えてくれー!!」
「…ボクも!彼氏か彼女欲しいー!!」
「だーーーっ!!!離れんか鬱陶しい!!」
早々に寝たバジルは蹴飛ばし、おれとテオファでフェイテに抱き付いた。こいつは恋愛面において、非常に頼りになる奴だ。噂を聞き付けたラウルスペード騎士団からもよく相談に来る。
「俺をなんだと思ってんだお前ら!
…まずグラス!!シャルティエラお嬢様は諦めろ、これ以外言葉は無い!!!」
「う…ぐぅ…」
「あとテオファ、お前は誰でもいいって考えやめろ!」
「だって〜…そもそも、恋愛ってなんだろう…」
「人生を彩る要素、種を残す為の本能!その他好きに解釈しろ。つかこの場で哲学的な話はやめい」
最初はおれのお嬢様への熱い想いを聞いてもらうつもりだったのに、段々と脱線していったぞ。
「この中で誰が一番に結婚するかなあ?あ、バジルは抜いて」
「「う〜ん…」」
テオファの何気ない発言に考える。正直おれは…お嬢様以外の相手は考えられん。生涯独身かもなあ。フェイテは早そう。
「おれとテオファで最下位争いだろ」
「ぐ…まあボクも、自分の結婚とか考えられないしぃ。フェイテは?」
「んー…いつか結婚してえな。俺シャルティエラお嬢様にくっ付いて首都に行くつもりだから、そっちで婚活するかも」
「「そうなの!?」」
驚いた。フェイテとネイは、お嬢様が結婚したらそっちに行くらしい。旦那様も了承済みだと。
おれは…この時はまだ、記憶も取り戻していなかったから。箏に帰るなんて選択肢、存在しなかった。
だが…お嬢様について行く、というのも躊躇っていた。
おれは「好きな人が幸せならそれでいい」なんて殊勝な考えは出来ない。パスカルに敵わなくても…今だからぶっちゃけると。
いつか奴を闇討ちして、悲しみに暮れる未亡人のお嬢様を手に入れようかな…とか計画していた。お嬢様の側にはいたいけど、それはパスカルを認めたからじゃない。
単に…隙を作って奪おうと思っているだけ。誰に幻滅されようと、おれはこういう男なんだよ。それでも、光の精霊様と契約している奴に…そんな手は通じないだろうな。
だからお嬢様の側にいたいけどいたくない。恋心を捨てないと、一緒にはいられないんだ…いつか必ず、お嬢様を傷付けてしまう。
「……ま、グラスが何考えてんのか知らねえけど。ジャンさんみたいに独身ってのもアリじゃねえ?あの人も訳ありっぽいけど…」
「あー。ジャンさんってミステリアスだよなあ」
3人で頷き合う。そのうち話題は屋敷の人達の恋愛事情に。既婚者は除く。
旦那様は再婚しなさそうだな、とかデニス卿が一番わかんねえ、とか。
「ジェルマン卿もさー、彼女欲しいって言ってたよね」
「だな。あの人格好いいし背も高いし、強いし優しいし…なんでモテないんだろ?」
おれとテオファはそんな話をする。いつだったか…影が薄すぎて女性に存在を認識されないと聞いた事がある。
確かに今でも…意識していないと、目の前に立っていても気付かない時あるわ。
「ん?でも、ジェルマン卿に好意持ってる女性いるじゃん」
「「うそお!!?」」
フェイテが酒を注ぎながら爆弾を落とした。誰々いつの間に!?と2人で詰め寄った。
「近えよ!ったく…!お前ら見てて分かんないの?さり気なくジェルマン卿の隣に立ったり、シャルティエラお嬢様への用件をわざわざあの人介してたりするし」
言われてみても…全然浮かばない。誰だよ!?と聞いても、フェイテは教えようとしねえし!!
そこへバジルがむくっと起きて…
「ん〜…?ああ、あの人だろ〜…ほら…こ…」
「「こ!?」」
「…ぐう」
おおおおい!!!中途半端に情報寄越して寝るな!!
結局誰かも分からずお開きに。最終的に酔い潰れたテオファを抱えて、フェイテが部屋を出ようとした時…おれにこう言った。
「……本当にお前が何考えてんのか分かんねえけど。お前、自分で思ってるより悪い奴じゃねーよ。
パスカル様の事が嫌いでも、本気で始末しようとかお嬢様を奪おうとか出来ねえよ。
そりゃお嬢様の側にいんのは辛いだろうよ。でもそれって、誰でもそうだから。深く深く愛する人が、自分以外の誰かの側にいる…それを耐えられる奴は一部だよ。
だから…どうしてもあの方を諦められなければ距離を置け。こういうのはな、時間が解決してくれっから」
「…………そうかい」
全部分かってんじゃねえか…。2人を見送った後、バジルをベッドに放り投げておれも横になった。片付けは、明日でいっか。
お嬢様…セレスタン。
おれは貴女を愛しています。その気持ちは…パスカルにも決して負けません。だから…だから…
そして、おれが記憶を取り戻した次の日。夜、屋敷中が寝静まった頃。おれはお嬢様の部屋を訪ねた。
途中見回りのシグニとすれ違う。彼(?)は立ち止まり、おれを見上げ…
「ぎぃ…ぎ…」
それだけ鳴いてまた歩き出す。なんとなくだが…何故かおれの頭に【後悔しない道を行け】と浮かんだ…。
彼女が眠っているのは分かっているので、ノックもせずに扉を開ける。ベッドに近付くと…風の精霊様がおれを一瞥した。地の精霊様も、他のちびっ子達も。
彼女はすやすやと眠っている。ヨミさんの姿は見えない。
ベッドに腰掛け、愛しい人の頬に手を添えて…その唇に、自分のを重ねた。自分でも、最低な行いをしている自覚はある。
だが…どうして精霊達はおれを止めない。どうして…?
「……止めないんですか…」
「…それ以上の行為をするなら止める。が…」
「ぼくもヘルクリスも戸惑ってるんだよ」
風の精霊様が言葉を切ったと思ったら、暗闇からヨミさんの声が響く。戸惑う、とは?
「……クロノスの話を聞いてから。君がシャーリィの隣にいるのが、とても自然な事に思えてね」
彼らが何を言っているのか、おれにはさっぱりわからない。でも…
いつの間にかおれは、涙を流していた。
もう一度、お嬢様にキスをする。
「さようなら、おれのお嬢様」
この日おれは…箏に帰ろうがこの国に残ろうが。お嬢様と決別する事を決めた。
※※※※※
そして今。ついさっきまでずっと悩んでいた。
でもここで、答えを出そう。その前に…おれはお嬢様と少那を背中に隠した。
「箏の…王太子殿下?お亡くなりになったと聞いておりますが?」
「残念ながら生きている。おれの墓を暴けばすぐ分かる、中には朽ちた人型が入っているだろうよ。
まあ…おれが王子だと証明する方法は無いが。その時はその時で」
「いいや、兄上だよ!貴方は…私達の命兄上!」
おっと。少那が…後ろからぎゅっと抱き締めてきた。更に後ろから、咫岐も…。
クソ女共を押し退けて木華と薪名が…正面からおれに抱き付いてきた。…温かい…ああ、涙が出そうだ。
「兄上…貴方は、命兄上ですか?もう…失ってしまったかと…」
「木華…お前らも皆、信じてくれるのか?おれを…兄だと認めてくれるのか?」
木華と薪名の背中にそっと腕を回す。お嬢様は少し離れて…穏やかに微笑んでいる。
「私達が貴方を見間違う筈がございません」
「そうですよ…あの日私達が、どれだけ絶望した事か。もう二度と会えないと…思っていたのに。生きていてくださって…本当によかった…」
咫岐…薪名。国民が誰一人信じてくれなくても、この4人がいてくれるなら。それでいい。
もう一度クソ女に目を向ける。
「繰り返すが。貴様はグランツ皇国と箏国を冒涜した。それはこの場の全員が証人だ、正式にセフテンスへ抗議する。
今すぐ皇宮を、この国を去れ。」
「そんな事を仰らないで?公式的に死んでいる以上国には帰れないのでしょう、是非私と一緒に…きゃあああっ!」
「「「わああっ!?」」」
女が最後まで言い切る前に…突風が吹き、4人を皇宮の外まで放り出してしまった?
「セレス。お前の許可さえ降りるならば、あやつらを肉片に変えてみせるが…?」
どうやら風の精霊様の仕業らしい。というか…精霊達が怒っている…!!
「死ね、死ね、死ね…!」
「トッピーストーップ!!それはマジで死ぬ、追い出すだけにして!!!」
特に地の精霊様がヤバい。追い掛けてみれば地面を盛り上げて奴らを生き埋めにしようとしている…!お嬢様のお陰で命拾いしたな、ふん。
精霊様は渋々了承し…土を操って奴らを塀の向こうに運んだ。気合を入れたであろう下品なドレスも頭も顔も、哀れ泥まみれ。いい気味。
「ちょっと!!!今日は私の為の晩餐会でしょう、主役をこのように扱っていいと思っているの!?」
「残念。今日は凪兄上を歓迎する晩餐会だ。貴様はただのついでだ」
正確には、どちらも重要なのだろうけど。
「今を以て其処にいるのはただの罪人だ。決して中に入れるな」
「「「はっ!!!」」」
ルシアン様の言葉に全員頷いた。よしよし、それでいい。奴らは騒いでいるが無視無視。そのうち静かになったぞ。
邪魔者も消えて、おれは今度こそお嬢様に向き直る。だが…騒ぎを聞き付けて皇帝陛下や旦那様、ルキウス殿下やルクトル殿下等勢揃いしてしまった。
「少那、ごめん。ちょっと陛下達への説明を任す。おれは…大事な用があってな」
「……このまま、どこかに行っちゃわない?」
「ああ、どこにも行かない。後で会おうな」
頭を撫でてやれば、少那は嬉しそうに笑った。ルシアン様にもお願いして…おれはお嬢様の手を取って歩き出す。
ジェルマン卿も気を使ってかフェイテに言われてか、追って来ない。どこか…人気のない場所に…。
彼女の手を引き、庭を歩く。お嬢様は何も言わずついて来てくれる。そして…広場の片隅に落ち着いた。
おれ達は向かい合って立つ。そっと彼女の眼鏡を外し…暫く見つめ合う。
お待たせしました、お嬢様。今こそおれの答えを聞いてください。
「シャルティエラ様。おれは…国に帰ります。大切な家族…少那達と言葉を交わして。やっぱりおれは、あの子達の兄なんだと思えたから。
おれ達を救ってくれて、慈しんでくれて…ありがとうございました」
「…うん。君がそう決めたのなら、きっとそれが正解なんでしょう」
「はい…おれは春、少那と一緒に帰ります。それまでの間だけ、変わらず貴女に仕えさせてください。
そしてお別れの後、次に会うのは…貴女への恋心を完全に消し去ってからです」
「うん…うん。いつか…友人として再会しよう…命」
「はい、お嬢様」
お嬢様は微笑み…涙を流してくれた。おれに愛を教えてくれて…別れを惜しんでくれて。ありがとうございました、お嬢様。
「どうかパスカルと幸せになってください。もしもあの男に不服があれば、すぐにお呼びください。おれは世界の果てにいようとも飛んで来て、奴の首を刎ねますから」
「(パスカルに容赦無くなってる…)う、うん。そうはならないと思うけど…元気でね」
「はい。…最後に、いいですか?」
「?」
おれが両手を広げれば…お嬢様は少し逡巡した後、飛び込んできてくれた。
最後の、思い出に。貴女の温もりを、この身に刻みたい…おれはお嬢様を抱く腕に力を入れた。彼女も、力いっぱい抱いてくれた。
あの日のキスも、いつか懺悔します。
おれは貴女を…愛していました。
数分間そのままでいた。だが…お嬢様がもう駄目と言うので、名残惜しいが身体を離す。
この眼鏡は貰っておこう。そう言えば、もっと高いのをあげるのにと笑ってくれた。いいや、コレがいいんだ。
「それにしてもなんだか騒がしいね」
「そうですね。いい加減に戻ります…か…」
先程から喧騒が大きくなってきている。というか…なんか…近付いて来ている?あれ?あれ…
「…命。なんか、見覚えの無い人が…こっちに向かって来ていない?」
「はい…あれ、は…凪兄上!?」
「うえええっ!!?」
十数年振りだが間違いない…兄上だ!!もう着いたのか!?あと数時間はあったんじゃないのか!?
「いや晩餐会は数時間後でも、到着時間は違うでしょ!?」
「そういやそうですね!?どどどどうしよう…!!」
弟達は受け入れてくれたが…兄上は分からない。おれのような弟を名乗る不審人物、王として認められるはずが無い。というおれの不安をよそに、どんどん兄上は近付いて来る。
怖い…けど。お嬢様が手を握ってくれているから…勇気が湧いてくる!
…………………???あれ、なんか…おぉ?兄上は…ついに眼前に立った。おれ達は…呆然と見上げる。兄上…?
「……君が、命を名乗る青年か?」
「あ、はい」
「そうか…」
兄上と思しき男性は…目に涙を浮かべる。
「大きく…なったな」
「「………デケエエえええっっっ!!!?」」
溢れる感情を抑えられず、お嬢様と一緒に絶叫してしまった。
大きくなったな…はこっちのセリフだっ!!!?兄上…凪兄上が!!!
ちょっと見ない間に…筋肉逞しい2m越えのバケモンに成長してやがるああぁぁーーーっ!!!?
グラスとセレスタンのお話を読みたい方は『皇国の精霊姫』をどうぞ(宣伝)。
ただしそっちは現在、グラスは一瞬しか出ていません。




