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勘当されたい悪役は自由に生きる  作者: 雨野
学園4年生編
174/222

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「ねーねーテオファ、ドレス着な〜い?」


「着ます!!」


「「イエイ!」」


 

 お父様から本邸でパーティー開催の許可を貰った時、ドレスを仕立てたらどうだ?と言われ…セクシーなドレスでお願いします!!と言ったら怒られた。


 いや別に…ちょいっと谷間を強調するくらいよかろう!?それで脚も出したいので、フィッシュテール?とかいうタイプにする。……脱がせにかかってきそうな奴がいるな。



 そして開催時期だが、皆の予定を考えるとすぐは無理。それで…実はあと1ヶ月もすればわたしとロッティの誕生日!

 なので、今年は誕生パーティーに皆をご招待するのだ。使用人も騎士も一緒に馬鹿騒ぎをするアレさ。

 今年はオシャレにダンスパーティー。そんで華が足りないので、テオファに女装を勧める。


 彼もねえ…初めて会った時より背も伸びて、段々可愛げがなくなってきた。いや悪い意味ではなく。男の子っぽく、男性になってきたのさ。もう美少女!とは言えぬ。



 彼のドレスも仕立てるけど…アイシャ、モニク、ネイもお父様からドレスのプレゼントさ。当然男性陣も礼服をね!「ボーナスだ」って言って、仕立て屋を呼んで皆採寸した。


 はあ〜楽しみぃ…!





 ※※※





「…………………」


「ねえパスカル様。もうすぐお別れでしょう?その前に…一度我が家に遊びにいらして?」


「遠慮致します」


「もう、つれないのね」


「…………………」




 秋も深まり、冬の足音が近付いて参りました。ご飯も美味しい時期でして、わたくし食べ過ぎてちょっと体重が気になるお年頃です。

 しかしアカデミーの学食はどれも一流シェフの作品。もりもり食べても仕方ないと思いませぬか皆様?



 まあ、何が言いたいかというと……



「パスカル様の好きな食べ物は何かしら?私はね、甘いパンケーキが好きなの」


「俺はセレスタンの手料理が好きです」


「ふふ、妬けちゃうわ。私も今度、頑張って料理してみるわね」


「そうですか」




「…………………」ゴリ…ガリ…ギリリ…ゴキンッ


「……セレスタン君?いくらご飯が美味しくても…フォークはやめておこうね?」


「鉄分摂ってんスよ……」


「斬新な方法だな…」



 ああホント…フォークうめえわ…ぺっ。


 会長と副会長が未確認生物を見る目をこっちに向けている。だって…ねえ?

 彼氏が他の女とイチャついてて…冷静でいられるかってンだよ。たとえ一方的なものでもな…。ビビ様は堂々とパスカルに「あーん」をしようとしたり、人目を憚らず猛アタックしてやがる。


 しかも彼女は制服を改造していて…本来膝丈スカートなのにミニ丈でおパンツを見せようとしてくるし、胸の谷間すらもチラつかせている。

 注意しても聞かない。「私の魅力を一番引き出せるのはこの姿なの」ですってよ。まあパスカルには効いていないが…な!



 もう彼女の留学期間も1ヶ月を切った。その所為かパスカルをオトす事に必死だ。自分の顔と身体を使って迫る…!

 パスカルだって相手が王女なので強く拒否出来ない。くそう…負けん!!






 その日の生徒会、会議中。



「……えーと…数多くの女生徒から、ヴィルヘルミーナ王女殿下に関するクレームが来ています。

 それらは全て、婚約者及び恋人が彼女に首っ丈で…酷い場合は婚約破棄も起きているとか…」


「「「…………………」」」



 生徒会メンバーは意気消沈。いや……それ、わたしらに言われても……。

 どうやらビビ様はパスカル以外にも保険をかけているらしい。わたし達の友人も被害に遭って……いないんだなコレが。


 エリゼは上手く躱しているし、ジスランは(ロッティが)きっぱり断っている。

 わたしも断れって?言ってるよ!!でもわたしもターゲットの1人だから「セレス様、ヤキモチ妬かないで?ちゃんと貴方も愛してあげるわ」って返されて終わりなんだよう!!

 ルシアンは彼女に話しかけられたら…「それより私の話を聞いてくれ!この遺跡はなんちゃらで遥か何千年前にこれこれこーして…」「あ、もういいです」って上手く嫌われてるんだよ!!

 少那は初めの頃「ひいいいいいああ!!!」と逃げ回って…プライドの高いビビ様は、彼に関しては手を引いたようだ。

 だがこの2人は王族・皇族なので…虎視眈々と狙ってはいる。


 ちなみに少那はその後、わたしに泣きついて来た。



「セレスー!やっぱあの子怖い…!」


「おーおー、こっちおいで」


「うん!」


 完全に子供扱いです。なんせ頭を撫でてあげると超笑顔になるから…ついね。ただルシアンと木華は、その様子を哀しい目で見ていたなあ…。




 で、ビビ様だけど。会長も「どうしろってんだ…」と頭を抱えている。とにかく今は、破局寸前カップルの間に入って仲を取り持つくらいしか出来ないのよ…。

 問題の男子生徒リストに目を通し、ため息をつく。お前ら…パスカルのように!一筋でいなさいよ…。


 会議終了後、仕事をしながらビビ様の頭が痛くなる数々の行動を思い返していたら…無意識にパスカルに話し掛けていた。



「ねーパスカル」


「んー?」


「わたしがビビ様みたいな露出したらさー」


「…………ん?」


「どういう反応する?」


「…………………(どうして……俺本人に聞く…?ま、まさか!!!)」





 〜パスカルの妄想〜



『パスカル…ビビ様ばっかり見てちゃイヤだよう…』

『何を言っているんだい、マイスイートハニー。俺は君しか見えていないよ』

『でも…言葉だけじゃ不安なの。だから…』はらり

『!!な、なんて扇情的な格好を…!』

『お願い…わたし…キミが欲しいの』

『ああ…さあ、こっちにおいで…大丈夫、全部俺に任せて…』

『あ……』



 〜現実〜



「パスカルウゥーーー!!?何、急にどうしたの!?」


「大丈夫…俺に全部任せて…」


「ぎいやああああーーーっっっ!!?」



 彼は急に手を止めたと思ったらわたしの顔を凝視して…頬を染めて脱がせにかかってきた!!あ、駄目だっての!あ"ああーーーっ!!!ベルト取るな!!!



「あのさ…そういうの部屋でやってくれる?見ろよ、2年生なんて顔真っ赤にして…」


「ジェフ先輩この変態止めてください!!!」

 

 好きでやってんじゃねーわ!!




 ※※※




「お仕事は終わりかしら?」


「ビビ…様…。はい、終了致しました」


「じゃあ、今日は何をして過ごす?」


「「…………………」」



 帰ろうとしたら…ビビ様が草む、じゃなくて廊下の角から飛び出してきた。どうして…一緒に過ごす前提なの…?


 もう帰るんです、と言えばついて来ようとする…勘弁して…。するとパスカルがわたしの肩を抱き、


「申し訳ございませんが、俺達は2人きりで過ごしたいんです。貴女を慕う者達は沢山いるようですし…どうか彼らとお過ごしください」


 そう宣言した…!さりげなく今日の取り巻きを確認すると…うん、婚約者持ちはいないな。じゃあ好きにしてくれたまえ。

 わたしは玄関先でジェイルと合流して、パスカルと3人で街に繰り出す。だが彼女は諦めず…勝手について来る…。



 目的地のカフェに着くと…当然入ってきた。嫌な予感しかしないので、ジェイルにも同席するようお願いする。

 4人席でわたしとパスカルが並んで座ると…向かい、ジェイルの隣にちゃっかり座りおった。



「えーと…騎士様?お会いするのは初めてかしら?」


「(何度も会ってんだけど…今日初めて認識されたのか…)はい。セレスタン様の護衛騎士を務めております」


「あら…とっても背が高くいらっしゃるし、逞しいお方ね。お名前は?」


「…ジェルマン・ブラジリエと申します」


「まあ、もしかしてジスラン様のお兄様?」


「はい」



 おっ。彼女の興味がジェイルに向かった!彼は色々質問攻めにされており、わたしに視線で助けを求める。

 でもごめん、少しだけ相手してて!こっちは忙しいので。




「シャーリィ、食べさせてくれないのか?」


「ええ…恥ずかしいよう」


「じゃあ遠慮なく」


「あー、それわたしの!んもう!」


「うん、美味い。ほらシャーリィ、口を開けて。…口移しのほうがいいかな?」


「もう、馬鹿っ!あーん♡」



「(こんの…バカップルがああーーー!!)」



 おっとそろそろジェイルも限界だ。いい加減助けてやるか…と考えた瞬間。




「「「きゃああああーーーっ!!!」」」



 !!!?外から悲鳴が…!!わたしとジェイル、パスカルは一瞬で切り替えて飛び出した。

 カフェの外、少し離れた先に…魔物!!?本当に街中に出るなんて…!!


「ジェイル!!」


「はいっ!!」


 通報用の照明弾を魔術で打ち上げる。これですぐに応援が来るし、ここは大通りなので騎士も常駐している。

 対するのは…ウサギの魔物、アルミラージ!!牛ほどもある大きい体に、鋭利な角が特徴だ。しかも3体!?


 まずいな…トッピーやヘルクリスは、こんな狭い所じゃ力を発揮出来ない。それ以前に彼らには、わたしの命の危機以外手出し無用と言ってある。セレネもね。

 最上級精霊の力に頼りきりでは、人間はすぐに堕落してしまうもの。だが今は被害を出さない事が先決!!



「ヨミ、1体任せていい!?」


「もちろん」


 魔物戦では他の精霊を出したくない。応援が来るまで、持ち堪える!!

 パスカルは帯剣していないので、わたしの影から取り出して投げ渡す。わたしも刀を構えて、ジェイルと共に1体引き受ける。



「ジェイル、引き付けて!!」


「了解!!」


 ウサギだけあって奴らの跳躍は厄介だ。精霊たちには人々の避難誘導と守護を任せた。

 早く倒して、パスカル達の援護をしないと…!いくぞミカさん!!!


 アルミラージがこちらに狙いを定めて…突撃して来た!!わたしはそれを躱し、ジェイルは正面から受け止める。そこへ…!


「はあっ!!!」


 ガギンッ!と角を落とす事に成功!コレは素材になるのでちゃっかり回収して…ここからが本番だ!

 角を失ったアルミラージは激昂し、わたしに向かって鋭い蹴りを繰り出す。うおっとお!なんとか避けたけど、すごい衝撃波…眼鏡吹っ飛ぶし建物壊れた!!



「ドワーフ職人出動!メイ、護衛してあげて!!」


「はい」


 今度はわたしが引き付ける番か!ただしやられっぱなしではいられない、今度はアルミラージの脚を斬り落とす!!

 


「ギシャアアアアーーーッッッ!!!」


「「………っ!!」」



 うお、耳が…!やばい、何も聞こえない!鼓膜やられた!?

 敵の断末魔の所為で、耳が使い物にならなくなってしまった。ついでに目眩も…だが…あと少し!!

 ジェイルが滑り込み顎を下から突き刺し、口を完全に塞ぐ。そこへわたしが…!!



「は…ああああぁぁっ!!!」



 ザシュッ!と…首を落とす。絶命したアルミラージは…次第に塵になって消えた。その場に残されたのは角と、魔石のみ…ってまだ気は抜けない!!

 ヨミを確認すれば丁度終わったところのようだ。真体の彼が鎌で敵を刻み、魔石を回収している。次、パスカル…!!



 急いで向かうと交戦中。パスカルと常駐の騎士は息を合わせられず苦戦しているようだ。


「聞こえないから返事いらない!わたし達に合わせて!」


 彼らは何か言っているが一方的に指示する。ジェイルも加わり、4人で囲むが…耳が、痛くて…ちょっと吐きそう…!

 ジェイルも同じく苦しそう。手早く倒して治療しなきゃ!!


 追い込むと敵は分が悪いと判断したのか、高く跳んで逃走を図った。だがヘルクリスが上空で待機していて…



「空は私の領域だ。残念だったな」


「ギアアアア!!?」



 アルミラージを斬り刻み…アッサリと勝利。うわ…やっぱ最上級半端ねえ……って。


「「「「わーーーっ!!!」」」」


「あ、しまった」



 き、刻んだ魔物の肉片が…ボトボトとわたし達に降ってくるー!!ひぎゃあああ、グロい!!!早く消えてー!!

 ぎゃーぎゃー逃げ回っていたら…




「……あ?」



 少し離れた所に…ビビ様、が…?



 なんで?皆避難させて…少なくとも半径50mはわたし達しかいないはずなのに…?

 彼女は降ってくる肉片に怯え、その場に頭を抱えて座り込んでいる。というか、彼女の真上。アルミラージの頭部が。


 鋭い角を下に向けて…あのままではビビ様に一直線に…突き、刺さ



「逃げろおーーーっ!!!」



 咄嗟に叫ぶも間に合わない!!ジェイル達も気付き走り出すが、わたしが一番近いし速い!!


 無我夢中に走り、彼女の身体を抱き締め少し右に倒れ込む。受け身を取る余裕もなく思いっきり肩をぶつけてしまい、呻き声が漏れるが…その直後。

 わたし達の真横に…頭部が突き刺さった。石畳の道路に、深々と…。


 もしもアレが、ビビ様に刺さっていたら…と考え、背筋が凍る。

 それと同時に…腹の底から怒りが湧いてきた。



「この…!何をしているっ!!!どうして避難しなかった!?死にたいのかっ!!!」


「………!!」


 ビビ様を起こして両肩を掴み、わたしは感情のままに怒鳴っていた。

 彼女は目をまん丸にして、何か言っている。どうせ自己弁護の言葉でしょう、聞こえなくてよかったわ!



 丁度応援の騎士や魔術師がやって来たので…説明等はこの地区の騎士とジェイルに任せよう…。

 何かしゃべりながらわたしに伸ばされるビビ様の手を振り払い、パスカルに助けられながら立ち上がる。彼女はそのまま騎士に保護された。人騒がせな…!!



「ふう…あ、あー…よしっ」


 わたしの耳は一時的な聴覚障害だったようで、数分で音が戻ってきた。それと肩の打撲と足を捻ってた…戦闘中より戦闘後のほうが大怪我だよ!!とっとと治す。

 パスカルはずっと心配そうにわたしから離れない。どこか痛い所はないか?と全身ペタペタ触るし。あの、胸を集中的に触ってませんかね?



 パスカルに抱っこされたまま帰宅。ロッティ達に先程の出来事を話すと、すっごい心配された…大丈夫だってば!!





 ※※※





「話、お祖父様から聞いたぞ。大変だったんだな」


「ああ…戦闘後がね…」



 そんで次の日、教室の後ろのほうでエリゼ、ルシアン、パスカルと立ち話。

 ルシアンが騎士から聞いたという話では…ビビ様は避難誘導を完全無視。「パスカル様の戦っている姿を見たいわ!」とか吐かして、あの場所でずっと見ていたらしい。


 わたしは深くため息をついた。ああ…アホらし。もうあの人と仲良くしたいとか、遠慮する気は完全に失せた。



 それよりも。民を避難させてアルミラージを討伐した事で、わたしとパスカルに陛下が褒美くれるって!やったね、どうしよっかな〜。

 近いうちに皇宮に呼ばれるだろうな。何着ていこうかな〜とか考えていたら…ビビ様、いやヴィルヘルミーナ殿下が登校してきた。


 はあ…気分が一気に悪くなる。もうわたし、本当に愛想が尽きた。一応礼儀として挨拶だけしとくか…「おはようございます」と低い声で言った。すると…



「おはようございます♡セレス様♡♡♡」


「………へ?」


 

 殿下は…パスカルとルシアンを突き飛ばし(エリゼは逃げた)、わたしの腕を取った。そして猫撫で声で、蕩ける表情でわたしを見つめ…え?




 ……??????




パスカルの妄想では、セレスはバニー衣装です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ビビ様…ニヤニヤが止まりません!(^w^) パスカルが何とかしてくれる、のかな? 彼が活躍してセレスを守りきってほしいです笑
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